1
始まりは終わりを、終わりは始まりをもたらす。
太陽が空を赤く喰らい尽くして地に沈み、月が闇を率いて星々を支配するように。
天が憎しみを孕み、命に仇なす恨みを地に産み落とすように。
運命とは、終わりなき廻る輪なのだと、誰かが言っていた。
◆◆◆◆
ぽこり、と口から零れる吐息を見つめる。
それは複雑に形を変えながら、ゆらゆらと光が揺らぐ水面に消えていった。
気が付けば森の中、なんてことは物語としてはよくあるけれど。
――海の中、なんてことは聞いたことがないなあ。
浅すぎず、深すぎず。
そんな絶妙な深さの中を漂いながら、わたしはのほほんとそんなことを考えた。
森じゃなくて海とは珍しい。なかなか趣向を凝らしているではありませんか、神様。
こぽこぽと肺の中から空気が失われていき、ついに海水を飲みこんだけれど。
――あれ? 息が出来る。
わたしはぱちりと目を瞬いた。
まるで地上にいるかのように、苦しくない。確かに海水を飲み込んでいるはずなのに。
まあいいや。とにかく浮上しなければ。
疑問は横に置いて、ひとまず泳ぐことにする。けれど身体を動かそうとした同時に、わたしは『何か』に体を水面へと運ばれた。
え、え、え。なんですか、一体何事ですか。
思わず『何か』に手をつく。
つるりとしてながら、ざらりとして、ごつごつともしている……なんだろう、これ。
そのまま水面に押し出されて、わたしはぷはっと息をした。肺いっぱいに新鮮な空気を取り込み、からりと晴れた空に「やあ、こんにちは!」と心の中で挨拶をする。生きて日の目を拝めてとても幸せです。
そして上半身を起こし、わたしを運んだものを見つめた。
光の反射によって、白にも水色にも変化する不思議な銀の鱗。大蛇のようにも見えるそれを、人は龍と呼ぶ。
「…………りゅう?」
うわあ、大きいなあ。龍とか初めて見たよ。
優雅に海面上を泳ぐ龍は、どこかへ向かっているらしい。島も船も見えぬ大海を悠々と泳いでいる。海の中で溺れている人の子を、哀れと思って助けてくれたのだろうか。
しばらく龍を見つめたあと、わたしは龍の背に再び仰向けになり、空を眺めることにした。いやだって何もすることがないものですから。
どこかの誰かに言い訳しつつ、海をかき分ける音に耳を澄ましたり、空を舞う鳥を数えたりしながら時を過ごしたのだった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。