代表の中村です。
今日は、トレタの「予約事故ゼロ」に向けての取り組みをご紹介したいと思います。
飲食店向けの予約台帳サービスではトレタ以外にもいくつかサービスがありますが、それら他社サービスと比較したときのトレタの最大の特徴の一つが「予約事故ゼロを達成するための執念」にあると思っています。
■予約事故という恐怖体験
僕は過去、経営していたお店で自ら現場に立ち、予約業務を担当していたことがあります。100 坪130席の「豚組しゃぶ庵」という六本木にあるお店で、2年くらいは現場に張り付いていたでしょうか。
客単価は、カジュアルなメインダイニング利用では4,000円くらいから、個室利用では10,000円近くになることもある店舗ですので、豚肉業態としてはかなり高級な部類に入ると思います。
来店されるお客さまも完全な「目的来店」で、来店されるお客さまの予約比率は90%以上。予約無しで来店されるお客さまはごくわずかしかいない、完全な「予約業態」でした。
おかげさまでそれなりの繁盛店でしたので日によっては2回転以上することもあり、それら全ての予約を電話で受けているわけですから、とにかく電話は鳴りっぱなしです。その電話を全て一人で受けて、紙の予約台帳に記入し、配席を調整して、当日の来店リストを作成してお客さまをお席にアテンドするまでがお仕事です。
実際この仕事を日々やっていて感じた最大のストレスは、「予約事故」が起こりやすいことでした。予約事故とは、典型的なところではオーバーブッキングやダブルブッキングから、要望と違う席になっているとか、お願いしたコースがきちんと伝わっていないとか、単純なミスではお名前の聞き間違えなど、多岐にわたります。
そしてその中でも特に怖いのがオーバーブッキング。特にこれが金曜日などの繁忙期に当たると大変なことになります。接待で予約していたはずなのに、お店に行ったら予約がない。なんとか緊急で席を用意しようにも、すでに満席で一つも空きがない。そんなことが起きたらお客さまの接待は台無しで「大切な取引を失う」というご迷惑をおかけするかもしれませんし、お店側の信用だって失墜して大切なお客さまを失うことにもなります。
特に僕がお店に立っていたときは「ツイッター予約」が盛り上がっていたときですから、予約の現場は「混乱」を通り越して「混沌」といった方がよい状況でした。
というのは、電話のみだったらお店にいるときだけ対応すればよいのでどうにかなっていたのですが、ツイッターだと24時間365日いつでも予約が飛び込んできます。仕事が終わって帰宅したところにツイッターで「予約をお願いします!」と言われても、家には予約台帳がありませんので、翌朝お店に行って確認した上での返信となります。が、この作業を翌日忘れたりするんですよね。
で、これが事故になる。
実際、僕も何度もそういう経験をしました。(そのときにご迷惑をおかけしたお客様、本当にすみませんでした)
予約事故は、現場の人間からしたら「恐怖体験」以外の何物でもありません。
予約事故を何度か経験すると、お休みの日も気持ちが落ち着かなくなります。頭のどこかに「予約対応の抜け漏れがあるんじゃないか」という心配が居座るようになるからです。
そういう事故を何度も繰り返して、そして最後に僕がたどり着いたのは「紙と人力管理じゃ無理」という当たり前の結論。でも、それを解決してくれるようなツールを探してネットや知り合いのツテを当たったりしたけれど、結局僕らの求めるニーズに応えてくれるサービスは一つも見つかりませんでした。
それでやむなく自分たちで作ったのがトレタというわけです。
だから、トレタの思想の根本には「予約事故を絶対に防ぐ」という強い意思があります。
■予約事故を防ぐために
予約事故を防ぐためには、やらなければならないことはたくさんあります。いきなり全てを解決することはできませんから、一つ一つ丹念に事故になりそうな要素を潰していく作業が必要です。
トレタがサービスインしてからの今日までの1年は、まさにそんな地道な改善作業の繰り返しでした。
まず、人間は必ずミスをするので、その前提で仕組みを作らなければなりません。そこでやらなければいけないのは二つ。ミスを減らすことと、万が一のミスを早期に発見できる仕組み作りです。
フェールセーフとしては、一般的に多重にミスをチェックする仕組みが作られますが、ミスが起きるときは得てしてその数段階のチェックを全てすり抜けてしまう事象が起きるものです。
なので、ユーザーがどれだけ多重チェックで「OK」していても、それでもユーザーさんを信じないような機能=ユーザーさんから「うるさい」と言われるような仕組みが必要になることもあります。
具体的に、トレタが行っている「予約事故ゼロ」のための取り組みには下記のようなものがあります。
- 予約事故になりそうな操作は何かを分析し、把握する
- 事故に繋がりかねない操作は、敢えて冗長にして使いづらくする
- 操作体系には一貫性を持たせ、UIを磨くことで「絶対に間違えない」操作環境を実現する
- 事故に繋がりかねない操作にはきちんと警告を出すだけでなく、その警告ができるだけ理解しやすいように、文言を注意深く練る
- システムが「予約事故になりそうな予約」を常に監視して、警告を出す
- 仮に警告に対して「問題なし」と応えても、それも勘違いしている可能性があるので、敢えて警告は消さない
- 予約の「一次情報」(お客さまとの電話での会話記録など)をできる限り残すようにして、いつでもオリジナルのソースに当たれるようにする
- 全ての予約履歴(新規受付だけでなく、予約の変更やキャンセルなど)を保存して、いつでも遡って確認できるようにする。システムには「削除」という機能そのものを持たせない
- 最新の予約の動きを一目で閲覧できるようなビューを用意して、管理者の予約確認の抜け漏れをなくす
- どれほど店舗様から要望が強くても、予約事故に繋がりかねない機能や外部連携は搭載しない
■勇気を持って予約事故削減に取り組む
しかし、こういう取り組みは実に地味です。プレスリリースを出したって誰も取り上げてはくれませんし、話題にもなりません。
セールストークを考えたって、やはり派手な新機能の方がお客様に刺さるに決まっています。
お客様から「こういう機能があったら便利なので是非搭載して欲しい。搭載してくれたらトレタと契約する」と言われれば、どうしてもやりたくなってしまうものです。
目先を追えば、もっとわかりやすくてキャッチーなこともたくさんやりたいわけです。
でも、そういう誘惑とはきちんと戦っていかないと、事故ゼロの取り組みは前に進みません。
勇気を持って不便にする。勇気を持って機能を実装しない。「この機能がうるさい」と言われても、勇気を持ってそれには対応しない(もちろん丁寧に説明して理解は求めますが)。勇気を持って大きな機能追加を先送りにして、お客様には伝わらないような細かい改善を丁寧に積み重ねる。
そうやって、地道にコツコツと予約事故を減らす取り組みを続けていくことが、トレタへの信頼に繋がると思いますし、最終的には店舗の皆さんの価値にも繋がるのだと思っています。
■まずは予約事故ゼロを実現しよう。話はそれからだ
トレタを売っていると、時には他社サービスと競合することもあります。他社さんのセールストークを見ると、先進性や業界初などのうたい文句が踊っていたりするわけですが、でも実際にそのサービスに触ってみると、想像以上にミスを誘発しやすい仕様になっていて驚くことが少なくありません。
ミスを誘うUI、ミスを見逃してしまうUI、ミスを発見できないUIなど、これではむしろ紙よりもミスが増えてしまうのではないか?と人ごとながら心配になるほどです。
確かに、クラウドやスマートデバイスを使えば、紙ではできなかった先進的な予約管理ができるようになるのは事実です。
しかし、それを実現する前に、台帳としてやらなければならないことはたくさんあると思いますし、その筆頭が「予約事故ゼロの実現」なのだと思うのです。
人はミスをするものです。しかし、機械の力でそのミスを減らすことは可能です。ミスの種類によっては、ミスを完全にゼロにすることだって可能です。
そして、ミスが出ない環境をしっかり作って、ユーザーさんが安心してツールを使えるようになることこそが、「高度な予約管理」への最大の近道なのだと思うのですね。
でなければ、どんなに先進的な機能を用意しても全て画餅にしかなりません。
トレタは、これからも地道に「予約事故ゼロ」を追求していきたいと思っています。