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【正論】
日本は本当に「格差社会」なのか 社会学者、関西大学東京センター長・竹内洋
ピケティの『21世紀の資本』が話題になり、格差問題が再燃している。資本主義そのものに格差を低減するメカニズムはなく、放置すれば、格差社会が進行するだけだ、とする。
格差が是正されたのは、第一次大戦と第二次大戦の戦争によるものである。富裕層の資産が破壊されたことや戦後の高度成長によって中・下位層の所得や資産が増大したからである。しかし、これを例外の時期とし、再び経済格差が拡大している。資産と所得の累進課税の強化が講じられなければ、21世紀は19世紀の格差社会に匹敵するか、それ以上の大格差社会になる。このように言う。
《文化や社会で伸び縮みする》
格差は人々のやる気を喚起させ、経済成長にもつながるが、他方では危険な火種ともなる。平等を理念としている現代社会では格差をめぐる理不尽さの閾値(いきち)が下がるからである。多くの人々が所属する社会を理不尽な大格差社会と認知するようになれば、同胞感情をもてなくなる。社会につながれていないと思うことで規範意識が低下する。凶悪犯罪が多発する危険社会になりかねない。