2015年2月7日,8日の2日間にわたり日本科学未来館で開催された,FITC Tokyo 2015をレポートします。
FITCとはFuture, Innovation, Technology, Creativityを指し,トロント発のアートとテクノロジーのカンファレンスです。世界22都市で開催されており,東京では今年で6回目の開催となりました。
本レポートでは,2日間のイベントの全セッションについて触れていきます(作品のメイキングムービーも載せています。アートはプロセス自体も楽しいものなので,是非あわせてご覧ください)。
最先端クリエイティブワークフロー
Tsuyoshi Nakao(仲尾毅)
初日トップは,Adobe Creative Cloudエバンジェリストの仲尾毅氏が登壇。モバイルを活用したクリエイティブワークフローについて紹介しました。
モバイルを活用したクリエイティブワークフローは,Adobeが近年最も投資している分野だそうです。Adobe Creative Cloudは,クリエイティブプロファイルという形で,個人に紐付いたデータをシームレスにデスクトップとモバイル間のアプリとで連携できるため,モバイルをクリエイティブワークフローに活用できると,仲尾氏は勧めます。
今回はキャプチャーシリーズである3つのモバイルアプリと,ドロー系のアプリを使って,デスクトップアプリであるIllustrator等と連携するデモを披露しました。
Adobe Color CC
Adobe Color CCは,iPhoneのカメラに映るものから色を抽出してカラーテーマを作成できます。パレットはCreative Cloudへ保存されるため,Illustratorのライブラリパネルへすぐに反映されます。デモでは会場内を映し,色をキャプチャして,Illustratorにパレットが反映されていました。
Adobe Shape CC
Adobe Shape CCは,iPhoneのカメラから取り込んだ画像をトレースし,パスをつくることができるアプリです。自動でトレースされたもののうち,不要な部分は指でなぞって簡単に取り除くことができます。デモでは,手元にあったFITCのロゴを取り込みました。次の写真において,パス化されているのが黄色い部分で,不要なものを指でなぞってパス化しないように指定したのが白い部分です。
Adobe Brush CC
Adobe Brush CCは,iPhoneのカメラを使って,身の回りにあるものからブラシを作成できます。Bitmap系のドローイングツールであるAdobe Photoshop Sketchで,そのブラシを使うことができます。デモでは舞台のフローリングから木目調のブラシを作成し,強弱の調整までをiPhoneで行いました。次の写真は,枝豆から作ったブラシだそうです。
Adobe Photoshop Sketch,デスクトップアプリとの連携
取り込んだブラシを使ってAdobe Photoshop Sketchで作成されたスケッチ画は,Creative Cloudを介しPhotoshopへ送信できます。Illustratorへ取り込んで,「オブジェクト」→「Sketch and Line Art」→「パスまで変換」を選ぶと,パスとして編集を足していくことができます。
このようなモバイルとデスクトップアプリの連携は,カフェや電車内など外出先で,インスピレーションを得たタイミングでいつでも気軽に作業し,事務所に戻って本格的な制作に取り掛かることを簡単にします。
これらはAdobe IDがあれば,無料で利用できるとのことでした。またAdobe Creative Cloudのライブラリは,共有することで複数人でのコラボレーションも可能にします。
未来のクリエイティブ環境
最後に,仲尾氏が注目してほしいと紹介したムービーは,AdobeとMicrosoft Surfaceが共に目指す近い未来のワークフローを描いたものでした。
そこには,指先で絵のタッチを調整したり,手のジェスチャーでオブジェクトを回転させたりと,人の直感的な動きで作品を思い描いたとおりに編集していく未来がありました。ソフトウェア側が人の直感に近寄ることで,ツールを使いこなせることのウェイトは軽くなり,クリエイティビティそのものが作品の質に直結していく印象を受けました。