騎馬戦訴訟:後遺症の男性に2億円 県に賠償命令 福岡
毎日新聞 2015年03月03日 10時42分(最終更新 03月03日 12時49分)
福岡県立高校時代に体育祭の騎馬戦で落下して首を骨折し、重度の後遺障害を負った福岡市の男性(29)と両親が、学校が安全配慮義務を怠り事故が起きたとして、県に計2億9000万円の損害賠償を求めた訴訟で、福岡地裁(永井裕之裁判長)は3日、安全配慮義務違反を認め、県に約2億円の支払いを命じた。
永井裁判長は、騎馬が崩れたり、騎手の頭が騎馬の腰より下がった時点で負けとするルールについて「落馬が当然に予想された」と認定。「学校側は事前にルールや危険性を説明したものの、実戦形式の練習はしなかった。騎手が転落の危険を認識し、対処能力を身につけるのに十分でない」と指摘した。
また、組み合う騎馬1組に対し安全確保をする教諭の審判員1人が配置されていたが、「もみ合う中で落下方向が急に変化する可能性があり、1組に複数の審判員を配置する義務に違反した」と述べた。
判決によると、男性は県立筑前高校(福岡市西区)の3年生だった2003年9月、体育祭の騎馬戦に騎手として参加。相手と組み合い騎馬から落ちて病院へ搬送され、首の骨折と診断された。
首から下にまひが残り、04年7月に身体障害者手帳(1級)の交付を受けた。リハビリを続け腕や指を多少動かせるようになったものの、両親の介護を受け車椅子生活を送っており、判決は約9800万円の逸失利益の他、約8600万円の介護費などを認定した。
県は「必要な措置をとっており、安全配慮義務違反にあたらない」と反論していた。原告側代理人弁護士は「おおむね主張が認められ、評価できる判決」と話した。
県教委は「判決内容を慎重に検討し、今後の対応を考えたい」としている。【山本太一】