ロンドン=渡辺志帆
2015年3月3日10時18分
「日の名残(なご)り」や「わたしを離さないで」などの小説で知られる日本生まれの英国人作家カズオ・イシグロ氏(60)の約10年ぶりとなる長編「The Buried Giant」が2日夕、ロンドン市内の書店で先行発売された。店の前にはサインを求めるファン約100人が並んだ。
3日に正式発売された同作は長編としては2005年の「わたしを離さないで」に続く7作目。中世のイングランドを舞台に、息子を探す旅に出るブリトン人の老夫婦らを通じて失われた記憶や愛、復讐(ふくしゅう)、戦争を描く。日本語訳は4月下旬に「忘れられた巨人」のタイトルで早川書房から刊行される予定だ。
2日のサイン会に1時間前から並んだというアイルランド出身の会社員マイケル・ローラーさん(25)は「世間から疎外された人物が描かれることが多いが、不思議と自分とつながりを感じるイシグロ作品が大好きです」と話した。
長崎市に生まれ、5歳で家族と英国に移り住んだイシグロ氏は、83年に英国籍を取得。89年に第3作「日の名残り」で英国最高の文学賞であるブッカー賞を受賞し、95年に大英帝国勲章を受けた。(ロンドン=渡辺志帆)
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