原子力規制委員会が先週末、東京電力の広瀬直己社長に反省を求めた。

 福島第一原発で、大雨のたびに放射性物質で高濃度に汚染された水が港湾外の海に流れ出ていた事実を一般に公表してこなかったことがわかり、漁業関係者らが強く憤っているからだ。

 海の汚染の非公表は、漁業者らの切実な思いに背を向けたと受け止められて当然だ。適切な情報を適切なタイミングで出さなければ、漁業者に限らず、不信は募るばかりだ。

 宮沢経産相が対応のまずさを認めたが、「汚染水対策の前面に出る」政府も責任は免れない。地元に設けた「廃炉・汚染水対策現地事務所」を通じ、福島第一原発の現状を一般の人々に速やかに分かりやすく伝える仕組みを整えてはどうか。

 汚染水が出た排水路は原子炉建屋の横を通る。昨年8月にはベータ線を出す放射性物質の濃度が1リットルあたり約1500ベクレルと通常の10倍以上を記録した。

 東電は13年秋以降、規制委や経産省などとの会議で雨水の問題に触れてはきた。

 だが、これほどの高濃度流出が雨のたびに繰り返されていることは、原子炉建屋とつながる大物搬入口の屋上で高濃度に汚れた雨水が原因とわかるまで、明らかにしてこなかった。

 東電は「情報の出し方が技術的観点だった」「優先順位を低く捉えていた」と釈明する。

 除染が進んだとはいえ、原発敷地内にはまだ高い汚染が残り、雨が降れば、流出する。高濃度といっても、溶けた核燃料に触れた高リスクの汚染水に比べたら、ずっと低い濃度であることも事実である。

 だが、そのことと、公表するしないは別の問題である。

 汚染水タンクの増加を抑えるため、国と東電は建屋周りの井戸からくみ上げた水を浄化し港湾内に流す「サブドレン計画」について漁業者の理解を求めてきた。放出時の全ベータ線運用目標は1リットルあたり3ベクレル未満だ。

 最高でその500倍もの濃度の汚染水が、しかも外洋に直接流れ出ていた状況を公表しないのは、理屈が通らない。

 事故からまもなく4年。現場では連日、約7千人の作業員が働いている。それは放射線との闘いでもある。未曽有の事故である福島第一原発の処理は、これも未曽有の難事業である。汚染水対策を含め、想定通りに運ぶようなものではない。しかも地元の理解抜きには進まない。

 そんな難題続きであることを丁寧に説明する。それが信頼をつなぐ唯一の道である。