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恋もセックスも、数式ひとつで解き明かす 世界一セクシーな数学のハナシ

恋もセックスも、数式ひとつで解き明かす 世界一セクシーな数学のハナシ
数学が理系のオタクな人々のものだけという考え方はもう古い。、セックスに最高のチョコレートまでも数式で表すことが出来るとか。読めばもう一度数学をやりたくなる、シドニー大学クレオ・クレスウェル数学教授のスピーチです。(TEDxSydney 2014より)

【スピーカー】シドニー大学 クリオ・クレスウェル(Clio Cresswell)数学教授

【動画もぜひご覧ください】
Mathematics and sex | Clio Cresswell | TEDxSydney

結婚生活が上手く行くか、数式を使って予測

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クリオ・クレスウェル氏:こんにちは。私は皆さんにセクシーなことを教える数学者です。

(会場笑)

初めにこの等式をご覧ください。今日初めてのオーガズムを感じるでしょう?

(会場笑)

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この等式は実は成功する結婚を表す画期的な等式なのです。ロマンスの分野に初めて数学が介入したのがこの等式です。この式によって95%の確率で、新婚カップルの6年後の離婚率を予測することが可能です。

Wがワイフ、Hがハズバンドを示します。二人の間で頻繁に口論の元となる問題、例えば親戚づきあいやお金の問題に対し、お互いがどのように反応するか、どのようなボディランゲージを取るかを式にしたものです。そしてその結果、お互いに対して感情的に対抗しようとしない、お互いのやることなすことにいちいち反応しないカップルが、長く続く結婚生活を送るということがわかりました。

(会場笑)

皆さんの中には、「そんなことわかってるよ」と思っている方もいらっしゃるでしょう。

(会場笑)

つまり、お互いのことばかり考えない二人が結婚生活を上手く行かせるということです。この結果が面白いのは、セラピー等ではよく共感することが大切だと言われますよね。皆さん笑っていらっしゃるということは、パートナーが帰宅しても「おかえり! 足のマッサージしてあげようか? マティーニつくってあげる」というようなことは言わないのでしょうね(笑)。

数学的研究の結果、そのように相手のことばかり考えるのは結婚生活においてベストではなく、高い基準を持つことが成功する結婚生活の鍵であるという結果が出ました。

数学はパターンの学問です。記号はすべてパターン化できます。

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幅広いジャンルで応用される数学

数学は物理やエンジニアリングの世界でよく見られます。数学がそのようなものだけに対して使われると考えるのは古いです。数学の世界は変わり続けています。80年代以降、数学は株式市場分析やリスク分析にも応用されてきました。90年代、そして2000年代になると数学は「ソフトサイエンス」の世界にも参入しています。これは例えば、心理学、社会学、人類学に、生物学等です。

最新の研究をお見せしましょう。抗生物質の使用と結核性に対するその効用をみたものです。

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こちらは世間でどのように意見が広まるか、どのように意見が分かれるか、またどのように世間の大半が同じ意見を持つかを研究したものです。

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これは少し古いですが、私の大好きな数式で、口の中でとろけながらも、手の上ではとけない「完璧なチョコレートをつくる法則」です。

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これらはとてもセクシーな数式だと思います。皆さんもきっとそう思っていることでしょう。このように、数学は様々な分野で応用されていますので、恋愛を数学で解明することが出来てもなんの不思議もありません。

皆さんも良くご存知の通り、愛はやっかいなものです。

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恋の始まりはわくわくするものですが、同時に考えすぎて怖くなり、食事がのどを通らなくなる。携帯電話を見つめて、「電話よ、かかってこい!」と祈り続ける。相手からたった一行のメールでも来れば、「イエーイ! フー!」と両手を上げて、奇声を発し、ドンキーコングのようなありさまになります。

(会場笑)

この数式は、どんな性格同士が長期的に真剣にお付き合いする安定した関係としてマッチするかを表します。常に愛し合ったり喧嘩したりしているカップルがいますよね。ちょっと制御不能な関係です。愛において気を付けなければならないのは、相手のことを過信しすぎることです。

パートナーに対しては子を愛し誇りに思う過保護な親のように、彼を疑うことなく「彼って本当に賢くてセクシーだわ」とあなたが言う側で、周囲の人は「……(そうかな)」と思っているはずですよ。

(会場笑)

数学が証明! 「女性より男性のほうがセックス経験人数が多い」はウソ

ここでまた数字の話です。

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男性は平均して女性の2倍から4倍の人数とセックスをしたことがあるというアンケート結果が出ています。これはおかしいですね。

(会場笑)

「売春婦はどうなるんだ?」「僕の元カノは? 彼女は誰とでも寝ていたぞ」と考えている人もいるでしょう。大きなサンプル数がある場合、男性と女性のセックス経験人数はだいたい同じ位になるはずなのです。

例えば、この男性はこの全ての女性と寝たことがあります。

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そして残りの男性は全てこの中の女性ひとりとしか経験がないとする。

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すると女性の経験人数はどうなりますか?

最初の彼女は一人。そして他の4人の女性はそれぞれ男性2人と経験があることになります。

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つまり結果は、一人の男性が女性とセックスをする時、女性グループの経験人数も上がっていくはずなのです。

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それではなぜアンケートでは男性のほうが女性よりも経験人数が多いという結果が出たのでしょうか? アンケートは無記名でよいものですよね。ひとつひとつを羅列していくプロセスでは、人は少なめに数える傾向があります。逆に推測する場合、多めに数える傾向があります。

つまり、女性はきっと「ジャスティンとブラッドとあのセクシーな男と。それだけね」としている時に、男性はきっと「この5年間は1年に20人くらいだったから……」と、こんな感じで寝た女性の数を数えるのでしょう。

(会場笑)

私が一番おもしろいと思ったのは、80%の男性が寝た女性の数として申告した数字が5の倍数だったことです。

(会場笑)

数学者としては、「あー、この人達嘘をついているわ」と思うわけです。

(会場笑)

脳を数学で解明する

波についてお話をしましょう。女性のホルモンバランスには波があります。この数式は、女性の身体のどんなメカニズムが28日周期を測っているのかを表しています。そしてこれは生まれた時から卵子を持っていることを前提としています。

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そしてこちらが男性のホルモン周期です。

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(会場笑)

これは本物ですよ! 冗談で書いたわけではありません(笑)。これは脳と男性ホルモンがどのように関係しているかを示したものです。例えばテストステロンは朝にピークを迎え、夜になるとそのレベルは低くなります。しかし、2時間から2時間半毎に小さなテストステロンピークが起きる波があります。

女性はわかりますよね。男性にお願いごとがあって話しかけても、彼があまり反応しなかったら少し時間をおいてもう一度試してみましょう。テストステロンレベルが低い時を狙うのです。

数学とセックスの関係について何時間でも話していられますが、私が最も関心を持つのは人間の脳と抽象的思考の持つ力についてです。数学をする前にセックスについて考えたらどうなると思いますか? 数学をやる為にそこまで邪魔になる考えではありませんし、セックスのことを考えた後、ある特定の脳の機能がよりよく働くようになるのです。

脳のプロセスは、大きく分けて二つあります。全体で考えるか一部で考えるか、森か木か、です。人が問題解決をしようとしている時、まずは全体を分析してから、解決する為のステップ、細かい作業に入っていきますよね。これがクリエイティブと分析的思考の違いだという最近の研究があります。そしてこれは簡単に操作できるのです。

例えば人に恋愛について考えてもらい、その後問題解決タスクをしてもらうと全体を見る作業、問題解決をする為に最初に必要なクリエイティブな力がより発揮されます。セックスのことを考えてから作業をすると、問題解決に向けてのプロセスの作業に必要な力がより発揮されます。

数学の魅力

2000年というまだ浅い歴史の中、世界各地で発祥し、多くの人が苦手とする数学というものは一体なんなのでしょうか? 矛盾すると思いませんか? 歴史が短い数学に対して、ある一部の人が数学脳を持つように進化したなんてことはありえません。数学に長ける為にはある特定のトリガーが必要なだけです。

これは私の子供の頃の成績表です。フランス語で書かれています。私の両親はワイルドで常に楽しいことを求めて世界各地を動き回っていました。

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私の当時の算数の成績は20段階中2です。私が最も得意としたのは15を取った木工図工のクラスです。

(会場笑)

18歳の時にオーストラリアに来て数学と出会った私は、初めて何か純粋で素晴らしいものを見つけた気がしました。パターン認識は動物界に欠かせません。爬虫類ですら対象物が食物か戦うべき相手なのか、セックスする相手なのかを認識します。クラゲですらどちらが水面でどちらが海底かを知っています。

そして数字もまた動物界に欠かせません。動物たちは、他の種の動物が自分たちの種よりも強いか弱いか知っています。そしてネズミにだいたい何回レバーを押せば食べ物が出てくるという仕組みを教えることも可能です。

「だいたい」という言葉を使いました。これはネズミが自己を認識する言語を操る種の動物ではないからです。3回レバーを押せば食べ物が出てくるという仕組みであれば、ネズミもそれをなんとなく理解するでしょう。しかしそれが16回だとかになると、ネズミはいつ食べ物が出てくるかもうわからず諦めてしまいます。

人間も同じです。数字で測ることが出来ない実験をすると、ネズミとまったく同じように諦めてしまいます。「2+5」は「5+2」と全く同じことであり「a+b」「b+a」、これもaとbにどんな数字を入れても意味は全く同じです。

言語とは名前を与える以上の意味を持つものです。そして原因と結果、そして時間推論がありますが、このような統語論的理解をする為に最も適しているのが数学です。数学とは一歩ずつパターンを発見していく、そこに曖昧さは全くない、究極の正確さをもつものなのです。

これが数学がとてもパワフルである理由であり、様々な分野に応用されている理由でもあります。そして数学が難しいのは、私達の限られた脳を限界まで持っていき、極限まで正確さを求めようとするからです。

数学が素晴らしく魅力的で不思議なのは、世界各地で独立した数学が生まれ、発展したことです。平和であろうが戦時中であろうが、宗教や文化や言語の違いで摩擦が起きますが、数学という名のパターン分析の間に摩擦が起きることは絶対にあり得ません。

数学とは人類の起源です。セックスのように、人間の文化を継承していくものなのです。聞いてくれた皆さん、これであなたも街で最もセクシーな人物ですよ! ありがとうございました。

※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。

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