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凧みたい?なら「揚げる」べし!
「ツバクロエイ」というエイがいる。エイと言えばスペードに近い菱形の薄い魚体が特徴だが、このエイはちょっと個性的。胸鰭が大きくせり出しているために体がやたらと横に広く、「ゲイラカイト」などの凧にそっくりなシルエットをしているのだ。
この度、このエイを捕まえることに成功したので、揚げてみることにした。調理的な意味合いで。 > 個人サイト いきものいきもの エイリアンのつかまえかた 凧を追いかけ早半年僕はこれまでツバクロエイを写真かダイバーが撮影した動画でしか見たことがなかった。そして、見るたびに「これ凧だよなあ…。」と思っていた。一度生で見てみたいと思った。
一口に凧と言っても色々あるが、ツバクロエイは特にこの手の製品に似ている。シルエットが。
沿岸性の魚で生息域も割と広いのだが、数はさほど多くないため、狙いすまして観察、捕獲をしようとすると意外と難儀する魚なのだ。
ツバクロエイは暖かい時季によく現れると聞く。厚着が必要な季節に突入してからはもう遭遇をほぼ諦めていた。
それでも、挑戦してなければわからない。目撃例の多い地域を調べ、昨年の夏から何度か釣り竿を担いで通ってはみた。
結果は半年かけて全敗。アカエイやナルトビエイなど、他のエイの顔は何度か拝めたのだが…。 想定外の場面で遭遇季節は既に冬。釣り人や漁師さんに話を聞くと、ツバクロエイは水温の下がる冬季よりも春〜秋の暖かい時季に多く見られると言う。
うわー、敗けた。シーズン中に釣ることができなかった。それどころか姿も見ていない。まあ、相手は野生動物なんだから仕方がない。一旦諦めて、また暖かくなるまで待とう。 …そう思っていた。 姿が見えた瞬間、心臓が一瞬変なリズムを刻んだ。
そう思って身を引いたつもりだった。しかしある休日、まったく違う魚を狙って釣りをしていると、なぜか思いがけずツバクロエイが釣れてしまった。極寒の二月。しかも特に冷え込む午前二時の出来事である。
おお、良いエイ。
やはり凧っぽいなんか納得できない部分もあるが、とりあえず嬉しい。ものすごく嬉しい。なめまわすように見て、触って、嗅いで、撮る。
見るほどにみょうちくりんな魚だが、そこがかわいい、かっこいい。そしてやっぱり凧に似ている。 似てない?
凧はより上手く風に乗れるよう、先人たちが試行錯誤した末にあの形状に辿りついたのだろう(もちろん、全然エイっぽくない凧もたくさんあるけれど)。
もしかすると、ツバクロエイのあの体型も泳ぐ際に水を掴みやすくとか、水流を受けて労せず移動できるように、などといった凧の進歩と似たような方向性への進化がもたらしたものなのかもしれない。他人の空似にそういった必然性があれば面白い。 …ひょっとして、凧の設計士がエイ類のプロポーションを何かしらの理由で参考にした、ということもあったりして。 一見すると眼のように思える頭部のくぼみは噴水孔という器官。ここから水を取り込んで鰓へ通し、呼吸する。
本物の眼は噴水孔の前方に鎮座。意外とつぶらでかわいい。
体はエイの中でもかなり薄い部類だろう。
面積が大きいせいでものすごい大物に見えるが、実際は薄いので軽々持ち上がる。
ツバクロエイで凧揚げ!ずっとこれをやりたかった!
くどいようだけど、似てるよね?
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