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常磐道が全通 浪江−富岡間、福島復興の力に 

常磐自動車道の浪江−常磐富岡IC間で通り初めをする車列。道路近くには除染廃棄物置き場(右)が広がる=1日、福島県大熊町で

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 東日本大震災や東京電力福島第一原発事故の影響で建設が遅れていた福島県内の常磐自動車道浪江インターチェンジ(IC、浪江町)−常磐富岡IC(富岡町)間が1日午後、開通し、埼玉県と宮城県を結ぶ全長約300キロの常磐道は全線がつながった。

 被災地の物流活性化や観光客の増加が見込まれ、「復興の後押しとなる」と地元からは期待の声が上がっている。

 開通は当初、今年のゴールデンウイーク前としていたが、安倍晋三首相が昨年十二月、三月一日に前倒しする方針を表明していた。

 東日本高速道路によると、今回開通した区間は一四・三キロで、大半が放射線量の高い「帰還困難区域」を通る。道路脇やインターチェンジには放射線量を示す電光掲示板を設置した。

 この日の午前、常磐富岡IC付近で開かれた式典で、安倍首相は「開通が福島のさらなる復興の起爆剤になると確信している」と述べ、内堀雅雄福島県知事、沿線自治体の首長らとともにテープカット。関係者を乗せた車が浪江ICまでの「通り初め」した。

 開通時刻の午後三時前には浪江ICで、南相馬市原町区に住むパート従業員三島弘光さん(70)に「開通第1号車」を示す証明書や花束が贈られた。震災前は、二カ月に一回程度、いわき方面へのドライブを楽しんでいた三島さん。足が遠のいていたが「またいわきへドライブに行きたくなった」と笑顔を見せた。

 常磐富岡ICでは、宮城県富谷町の無職庄子光幸さん(77)が一番乗りした。

◆高線量地域に懸念も

 常磐自動車道の全線開通に伴い、沿線自治体では、企業誘致につながるとの期待感が広がっている。移動時間の短縮によって物流環境が改善するためで、政府も「復興の起爆剤」(安倍晋三首相)と位置付ける。しかし、放射線による健康不安や風評は払拭(ふっしょく)されておらず、観光業などの回復にはなお厳しさが漂う。

 「首都圏にも近くなり、物流面が良くなる」。福島県新地町の企業誘致担当者は、手放しで喜ぶ。福島と首都圏の所要時間は約四時間から約三時間に短縮される。

 ただ、開通した浪江−常磐富岡IC間の計一四・三キロのうち八・八キロは放射線量が高く、原則立ち入り禁止の帰還困難区域だ。

 計測によると、除染前の車外の空間線量は最大毎時三五・九マイクロシーベルトだったが、一日は同五・四マイクロシーベルトまで下がった。時速七十キロで一回走行した場合の被ばく線量は〇・二マイクロシーベルトで、胸部エックス線検査一回分の約三百分の一に当たるという。

 汚染水漏えいなどトラブルも続出しており、観光業などの回復は遅れそうだ。震災前は潮干狩りや海水浴などで年間約百万人が訪れたという相馬市の担当者は「常磐道が開通しても観光客回復の先行きが見えない」と話している。

 

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