僕は高校を卒業しある専門学校に入学しました。しかし三日とたたないうちに僕はその専門学校が嫌になって辞めてしまいました。その専門学校は僕が行こうと決めたところではありません、親が決めました。思えば僕は小さい頃から親に決められる人生でした。ただぼんやりと生きてきました。専門学校をやめた時に気づいたのです。だからこれからは自分自身の意思にしたがって生きようと決めました。これからしたいことはあるにはあるのですが、たくさんありしかもそれを本当にしたいのかどうかも正直わかりません。僕の友人には小さい頃から絵が好きで高校の時に必死に勉強して美大にはいった人がいて、そいつのことがとても羨ましいです。僕は必死になれるものがありません。父は画家を生業にしているのですが、小さいときに絵の先生に弟子入りして勉強をしていたそうです。僕は、今はとりあえず大学に入ろうと勉強をしていますが、なんで勉強してるんだろう?とよく思います。夢がないのに果たして勉強する意味があるだろうかと。
村上さん、どうしたら自分のこれだというものを見つけることができますか? それとも僕が甘えているだけなのでしょうか?
(ケンタツ、男性、19歳、浪人生)
甘えているとは思いませんよ。自分が本当にやりたいことがまだ見つからない――それは普通のことです。19歳でそういうのが見つけられている人の方がむしろ少数派です。これからがんばって見つけてください。ただ、僕は思うんですが、本当にやりたいことというのは、あなたがそれを見つけるよりは、向こうがあなたを見つけることの方が、可能性としては高いのではないかな。僕の場合もそうでした。僕が「小説家になりたい」と思ったのではなく、向こうが「村上くん、小説を書いてみたら」と持ちかけてきたのです。そういうことは多かれ少なかれ、遅かれ早かれ、あなたの身にも起こるかもしれません。それを見逃さないようにすることも大事です。下手をすると見落としてしまうから。いつも目をしっかりと開け、耳を澄ましていること、それが大事です。そうすればそのうちにきっと何かが見つかると思いますよ。
村上春樹拝