「独壇場」「独擅場」?
2003.07.01
「彼の独壇場(独り舞台)だった」などと言う場合の「独壇場(どくだんじょう)」は、「独擅場(どくせんじょう)」という言い方が正しいということを、最近聞きました。ほんとうでしょうか。
そのような場合の読みと表記は、確かに本来は、「独擅場(どくせんじょう)」ですが、「擅<せん>」が「壇<だん>」と誤読されて、「どくだんじょう」という言い方が定着しました。今では表記も「独壇場」が一般化し、放送でも「独壇場(どくだんじょう)」を使っています。
解説
漢字の「擅」の読みは「せん」で、「ほしいままにする。ひとりじめにする。また、ひとりで自由に処理する」(『学研 漢字源』)という意味です。この文字を使った熟語の「独擅」は、「自分ひとりの思いのままに振る舞うこと」、「独擅場」は「その人ひとりだけで、おもいのとおりの振る舞いができるような場面・分野。ひとり舞台」(『大辞林』三省堂)で、もともとの読み方は「どくせん」「どくせんじょう」です。しかし、「擅」と「壇」の文字がよく似ていることから、「どくだんじょう」と誤って読まれるようになり、表記も「独壇場」が一般化しました。誤った読み方と書き方が定着・慣用化した例の一つです。
このような誤用が生まれたのは、字形が似ていることに加えて、「壇」の熟語で場所を表す「演壇」「教壇」「仏壇」「土壇(場)」などという言い方との混同もあるかもしれません。 戦前の『日本語アクセント辭典』(日本放送協會編 昭和18年1月発行)には「ドクセンジョー 獨擅場」と記載されていますが、その後「独壇場(どくだんじょう)」という用語の定着・慣用化が進む中で放送でも今では「独壇場」を使っています。
(『NHK日本語発音アクセント辞典』P629、『新用字用語辞典』P395参照)