『アンダーグラウンド』は中学生に相応しくない?

村上さん、こんばんは! 
私は、中一のときに『アンダーグラウンド』を英語で読み(ハーフなので)、深く感動致しました。昨年の三月に、あることで新聞社のインタビューを受けました。その時、新聞記者の人から、「どんな本が好きか」と尋ねられました。そこで迷わず『アンダーグラウンド』と答え、記者の人からは「渋いね」の一言。後日、記事を読んでみると、『アンダーグラウンド』はカットされ、「村上春樹の小説」としか書いてありませんでした。
『アンダーグラウンド』は中高生には相応しくない本なのでしょうか???
作者の村上さんにお尋ねします! 
(プライムローズ、女性、17歳、学生)

新聞の人って、ときどきそういうことをやります。僕も経験があります。新聞記事にするときになんか「わかりやすい」ようにちょっと変えちゃうんです。新聞社の考える文脈に沿って話を揃えるわけです。きっと中一の女の子が『アンダーグラウンド』を読むのは不自然だ(リアルじゃない)と上の方の人が判断したのでしょう。だから「ちょっと変えちまえ」と。

僕が『アンダーグラウンド』で被害者のみなさんのインタビューをしたときは、書いた原稿を全部読んでもらって、きちんとオーケーをもらって、それから出版しました。本当はみんなそうするべきなんだけど、まあ新聞の人は忙しいから。でも新聞って、なんかちょっと偉そうなところがありますよね。記者一人ひとりはわりにちゃんとした人なんだけど、それが組織になると、ときとして変なことが起きます。そういうのが誤報につながっていくこともあるんじゃないのかな。

村上春樹拝