(2015年3月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ビクトル・ザスラフスキーさんは3月1日、母親と腕を組んでボリショイ・モスクボレツキー橋を渡っていた。重苦しい雰囲気だったが、励みになることが1つあった。
「少なくとも今のところは、仲間がまだたくさんいることが分かった」。ザスラフスキーさんは、この橋で2月27日夜に多数の銃弾を背中に浴びて殺害されたロシアの野党指導者ボリス・ネムツォフ氏を追悼するデモ行進に、数万人の人々とともに参加していたのだ。
「もう政治の問題ではなく、人間の品性の問題」
29歳のザスラフスキーさんは首都モスクワに住む多くの若者たちと同様に、3年前にはウラジーミル・プーチン大統領の統治に抗議するデモに参加したものの、当局の締め付けが厳しくなる中で活動から遠ざかっていた。
当局は数人の活動家を起訴したり、独立系メディアの大多数を排除したりして抗議行動を押さえつけた。ここ1年間は、ウクライナでロシア政府が行っている戦争を勇敢に批判する人々を「裏切り者」と見なしている。
その壁が見えるほどクレムリン(大統領府)に近いこの橋でネムツォフ氏が残忍に殺害されたことにモスクワの住民は非常に強いショックを受け、ロシアでここ数年広がっていた政治への無関心を続けるわけにはいかないと多くの人が感じることとなった。
「ここまで来ると、これはもう政治の問題ではない。人間の品性の問題です」。ザスラフスキーさんの母親はそう語った。
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