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リスクオンでも堅調な金や国債、強まる金融相場色

2015年 03月 2日 20:00 JST
 
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[東京 2日 ロイター] - 世界的な株高基調が継続しているにもかかわらず、金や国債などの「安全資産」が底堅い相場展開をみせている。グローバル経済への不安やギリシャ、ウクライナなどへの警戒感が解けないだけでなく、各国の金融緩和による潤沢なマネーが各市場に流れ込んでいることが背景だ。ただ、緩和頼みの相場だけに、中央銀行の信頼感が損なわれるようなことがあれば、波乱のきっかけになりかねないと警戒されている。

<株高下で切り返す金価格>

金価格が反発している。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月物2GCJ5は、1月後半に付けた1オンス1300ドルから今月24日には一時1200ドルを割り込んだが、大台割れは1日だけ。その後、切り返し、27日の市場では1213ドルと約2週間ぶりの高値まで回復した。

利息が付かない金は、株価が上昇するようなリスクオン場面で、人気が薄れる傾向がある。だが、株高基調の中でも底堅さをみせているのが、最近のマーケットの特徴だ。世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールド・シェアーズ(GLD.P: 株価, 企業情報, レポート)の信託金残高も減少せずに1月初旬を底に増加基調が続いている。

株高の要因とされる材料は、金市場ではまだ買い要因だ。ギリシャ支援策は4カ月延長されただけで根本的な合意はこれから。ウクライナ情勢は停戦合意後も不安定だ。中国の利下げは「景気よりも物価への対応」(SMBC日興証券・投資情報室中国担当の白岩千幸氏)とみられているが、資源国など新興国経済への警戒感は根強い。

楽観ムードに包まれる今の株式市場だが「株価の予想外の上昇で持たざるリスクが出たために買っているだけだ。株価が上がるからというトレンド・フォローの動きにすぎず、もろさもはらむ。手放しでハッピーというわけではない」(外資系投信)との声も漏れてくる。

<緩和マネーが各市場に流入>

各市場で材料の解釈が分かれるのは、情勢判断に決め手がないということもあるが、緩和マネーのなせる業でもある。不安定な世界経済に対応する形で、各国に金融緩和が広がっており、緩和マネーが株高を引き起すと同時に、底堅い「安全資産」の併存を許している。

「株高で変化したポートフォリオのウエート調整のために金を買う動きもあり、金相場を下支えている。緩和マネーが各市場に流れ込んでいる感じだ」とアストマックス投信投資顧問・コモディティ運用部、シニアファンドマネージャーの江守哲氏は話す。

株高が加速する一方で、国債利回りの上昇は止まってしまった。米国の10年債利回りは2%付近でのもみあい相場に転じ、日本の10年債もいったん0.4%半ばまで上昇したが、0.3%台に再び低下している。

「世界経済への不安も株式市場よりは強いとはいえ、日銀が国債を大量購入しているという需給要因が相場を決めてしまう相場に戻ってしまった」(大手証券・債券ディーリング部)という。低金利が株高の一要因ではあるのだが、強烈な金融緩和により、正常な裁定が働きにくくなっているのも確かだ。

日経平均.N225は2日の市場で1万8900円を一時回復し、約15年ぶり高値となっているが、当時(2000年4月24日)の長期金利は1.735%。今回の金融緩和による金利圧迫ぶりが際立っている。

<意識される「中銀リスク」>

金融緩和がベースの金融相場だけに、最大のリスクは、中央銀行の信頼感が損なわれることだ。景気や企業業績が回復し、業績相場に移行するのが理想だが、一部でマイナス金利に突入するほど、過剰な金融緩和が広がっており、その「ギャップ」を埋めるには、相当の時間が必要だ。

JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏は、欧州中央銀行(ECB)量的緩和と日銀の2%物価目標をリスク要因として挙げる。

ECBの量的緩和策(QE)は3月から月間600億ユーロの資産買い入れを始めるが、マイナス金利を設定したままであり、金融機関がどこまで国債などを売ってくれるかわからない。買い入れが600億ユーロに達しない場合、コミットメント(約束)への信頼感が薄れる可能性があるという。

日銀も2%の物価目標の達成時期を延期すれば、市場の信頼感を損なうかもしれないと重見氏は懸念する。「いまの金融相場は中銀への絶対的な信頼を背景に拡大している。言ったことが守れないということが明らかになれば、市場のセンチメントが悪化しかねない」と話す。

スイス国立銀行(中銀)が一転してフランの対ユーロ上限を撤廃した「スイスフランショック」で、中銀は万能ではないということに、市場は気づかされたはずだった。金融緩和に依存した相場が長引けば、「中銀リスク」が発生した場合の相場変動も大きくならざるをえないだろう。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

*本文中の誤字を修正しました

 
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