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知っておきたい、色の話

知っておきたい、色の話

1. 色とは何か? 〜光と色の関係〜

光がない世界に、「色」は存在しません。

光がない暗闇の中では、「色」はもちろんのこと、モノの形を認識することさえできません。

この章では、「色」についての理解を深める第一歩として、「光と色の関係」についてお話します。

1-1. 色の感覚を引き起こす光

電磁波の一種である光は、人間の眼に入り、「色」という感覚を引き起こします。
光自体は「色」ではなく、目が光の強弱と波長の相違を刺激として感じ、脳が働いて、「色」の識別につながるのです。電磁波の中の、人間の目に見える範囲を「可視領域」といいます。
その波長の幅は、360〜400nmから760〜830nmと、極めて狭い範囲です。

人間の目に見える光(可視光)は、「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の虹の7色に分けて表現されます。白色の太陽光をプリズムで分けるとその7色になることから、「太陽光スペクトル」と呼ばれています。

【他生物の可視領域】(コラム)
人間と他の動物では、可視領域が異なります。例えば、トンボの可視領域は、340nm〜620nm。人間よりも紫に寄っており、赤の波長を感じることはできませんが、人間には見えない紫外線を見ることができます。
また、サルやハトの可視領域は、人間に非常に近いことが明らかになっています。
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1-2. 光の種類

光は、「色」を見る上で欠かせない存在ですが、光源が「太陽光」の場合と、「人工光」の場合とでは、「色」の見え方が違います。光源の種類が異なると、同じ物体色でも、眼が感知する刺激が異なるのです。
そこで、国際照明委員会(Commission Internationale de l'Eclairage:CIE)は、色を正確に測定する際の光源として「標準の光」(標準イルミナント)を制定しました。

  • 「標準の光A」は白熱電球で照明する物体色の表示に用います。
  • 「標準の光D65」は太陽光に近い光で、標準的な昼光で照明する物体色の表示に用います。色を見るための基準とされています。
  • 「標準の光C」は太陽光を模したものであり、近年は「補助標準の光C」と呼ばれ、「標準の光D65」に置き換えられる傾向にあります。
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1-3. 色の3原色

さまざまな「色」を作り出す、もとになる「色」が、3原色です。
3原色には、「色光の3原色」と「色材の3原色」の2種類があります。

「色光の3原色」は、赤(R)・緑(G)・青(B)で、光を混ぜれば明るさが増し、RGBの全部の光を混ぜると白色になります。

「色材の色」は、光が物体に当たり、その光の吸収と反射によって生まれます。

  • 赤が吸収され、緑と青の光が反射する物体は、シアン(C)に
  • 緑が吸収され、赤と青の光が反射する物体は、マゼンタ(M)に
  • 青が吸収され、赤と緑の光が反射する物体は、イエロー(Y)に見えます。

「色材の3原色」はCMYで表記され、色を混ぜれば明るさは減り、CMYの全部をまぜると黒色になります。

【3原色発見の歴史】(コラム)
1801年、イギリスの物理学者ヤングが、人間の目には赤(R)・緑(G)・青(B)の刺激に反応する機能があることから3原色説を提示し、「色光の3原色」の存在を証明しました。後に、ドイツの生理学者ヘルムホルツがこの考え方を発展させ、具体的に数値化を示しました。テレビなどの映像再生機で、このRGBの色光がよく使われています。
また、それよりも早い1720年頃、フランスのカラー印刷の発明者ル・ブランが、シアン(C)・マゼンダ(M)・イエロー(Y)の3種の色材の混合によって、他のほとんどの色が再現できることを実証し、「色材の3原色」の存在を証明していました。カラーコピーのトナーなどでよく聞くCMYKは、この3色に黒(K)が加わっています。
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2. 色を認識する仕組み 〜色覚の原理〜

「色」を見るために光があっても、その光を受け入れる「眼の動き」が正常でなければ、
「色」を正しく見ることはできません。

光はどのように受容され、「色」として認識されるのか?

この章では、「眼の構造や働き」、「色を知覚する仕組み」についてお話します。

2-1. 眼の構造と役割

眼は、「入ってきた光を色情報に変換し、その情報を脳へ送る」という、大切な役割りを担っています。眼は、直径約24mmの白い球体で、強膜、脈絡膜、網膜で覆われています。光が対象物から反射して眼に入り、その刺激の情報が脳へ送られて、「色の識別」につながるのです。

眼の構造を理解するには、同じく光に応答するカメラのシステムと比較すると分かりやすいでしょう。カメラのレンズに相当する水晶体と角膜によって焦点距離を調節し、カメラの絞りに相当する虹彩によって、入ってくる光の量を調節します。さらに、写真フィルムに相当する網膜の視細胞によって、光(色)を感じるわけです。

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2-2. 網膜の機能

網膜には、眼に入ってきた光を色情報に変換する役割りがあります。厚さ0.3mmの透明膜で、数種類の細胞からなる複雑な構造をしており、光は表面層を通過して、感光性を持つ視細胞に到達します。表面層は、最奥にある視細胞からの信号を受けて脳に伝達する神経節細胞で覆われています。その他、アマクリン細胞、双極細胞、水平細胞が中層部にあり、視細胞から神経節細胞へ信号を効率よく伝達する大切な役割りを担っています。

感光性をもつ視細胞には、比較的暗い所で明暗だけを知覚する杆状体(かんじょうたい)と、比較的明るい所で赤(R)・緑(G)・青(B)の刺激に反応する錐状体(すいじょうたい)の2種類があります。
網膜は、カメラのフィルムに例えると、高感度の白黒フィルムと中程度のカラーフィルムからできているといえるでしょう。

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2-3. 明るさの感度

視細胞の働きを理解すると、「色」を判別する上で、光量が大きく影響していることがわかります。私たちの生活の中の自然光と人工照明の明るさは、かなりの広範囲となっています。

私たちが感じる広い照度範囲に順応するために、人の眼は、虹彩によって瞳孔の大きさを変え、眼に取り込む光量を調節しています。しかし、瞳孔径の変化だけでは不十分なので、前述のように杆状体と錐状体で役割りを分担し、網膜自体の感度を大幅に変えて「色」を感じているのです。

ごく暗い光で、杆状体のみが働く状態を「暗所視」、薄明るく、杆状体と錐状体の両方が働いている状態を「薄明視」、明るく強い光で、錐状体のみが働く状態を「明所視」といいます。「暗所視」「薄明視」「明所視」と移行するのにともなって、同じ物体でも、「色」の見え方が変わります。昼間は赤や黄を鮮やかに感じ、青や緑は黒ずんで見えます。夕方は逆に、青や緑が鮮やかに見え、赤や黄が暗く見えるようになるのです。

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2-4. 色覚モデル

人間の眼は、どのような仕組みで「色の知覚」を行っているのでしょうか。
これまでに明らかになっているのは、ヤング・ホルムヘルツの「3原色説」と、ヘリングの「反対色説」ですが、今日では、「3原色説」と「反対色説」を複合させた「段階説」が有力になっています。

・3原色説

「網膜には赤(R)・緑(G)・青(B)に応答する3種類のセンサーがあり、その応答量の割合で色を感じ分ける」というのが、「3原色説」の考え方です。
3原色説は赤・緑・青の光の混合で、ほとんどの色が再現される実験に基づいており、理論的に導き出されたものではありませんが、現在のカラーテレビ、写真、印刷などは全て、3原色説に基づいて開発されています。
それらの色再現が十分に満足できるものであることから、極めて現実的で有力な仮説と考えられてきました。

・反対色説

「網膜には、赤−緑、黄−青、白−黒に応答する3種類のセンサーがあり、その応答量の割合で色を感じ分ける」というのが、「反対色説」の考え方です。これは「黄色味の赤色はあるが、緑色味の赤色はなく、緑色と赤色は反対の位置にある反対色である」と考えられる経験的事実に基づいており、「反対色説」では基本的な色として、赤・緑・黄・青の4種類を考えるので、「4色説」とも呼ばれています。

・段階説

「3原色説」と「反対色説」は、それぞれさまざまな色覚現象を矛盾なく説明できるので、どちらが網膜の中で実際に起きている現象であるかは判断できませんでした。
近年の測定技術の進歩によって実際に目で起きていることが実証できるようになり、ある実験では錐状体の3原色応答がはっきりと記録され、「3原色説」こそが、色覚の仕組みの説明に最適であるとされてきました。
しかし、別の実験では、明るさの応答と反対色の応答を示しました。
これらの事実から「錐状体では3色応答が存在し、そこで発生した電気信号が視細胞の中層部にある各種細胞によって、反対色説に従うような信号処理を施されて、脳に伝達される」と、考えられるようになりました。
さらに、暗所視で働く杆状体も一部の機能を担っていることが実証され、結局、「網膜に存在する3種の錐状体と杆状体が、巧みに役割り分担と協働作業を行い、私たちの活動範囲における広い明るさと色の変化に対応して、視覚をコントロールしている」という考え方が、一般的になりました。
現在では、人の眼は最初に3原色応答で色を感じ、それを反対色応答の信号に変換して脳へ伝達する「段階説」が有力とされています。

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3. 色を正しく表す方法 〜色の表記と伝達〜

「色」を表したり、人に伝えたりするとき、言葉だけに頼っていては正確さに欠け、正しく伝わりません。

目に見える「色」は、数値化してデータ表示し、体系的に分類でき、その情報を正しく伝えることができるのです。

この章では、代表的な表色系を取り上げ、「色を正しく表す方法」についてお話します。

3-1. 顕色系の表色「マンセル表色系」

20世紀初頭にアメリカの画家マンセルが提唱した「マンセル表色系」は、色見本を用いる顕色系の代表といえるもので、色の3属性の色相・明度・彩度に基づいて体系化されています。
「色相」とは、赤、緑、青・・・などの色の種類。「明度」とは、色の明暗感覚。「彩度」とは、色の鮮やかさの程度を表します。

「顕色系」は、実際の色見本があるので直感的に理解しやすいのですが、色の説明には精度が低く、 数値計算を使って色を割り出す作業には馴染みにくい表色です。


※その他、色票を用いる顕色系には、オストワルト表色系、DIN表色系、OSA表色系などがあります。

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3-2. 混色系の表色「CIE表色系」

印刷物や物体の色を表すことのできる顕色系体系とは別に、色見本を用いずに、ほとんどの色光は赤・緑・青の混合によりできるという実験事実に基づいた混色系の体系が開発されました。その原理は、実際に観測者が任意の色と赤・緑・青の強度を調節し、混色したものとを見比べながら「色」を等しくしていくやり方で、「色合わせ」、または「等色」といいます。

・RGB表色系

等色するために必要な赤・緑・青の混色の度合いを「三刺激値R,G,B」と呼び、それぞれの波長毎に求めたものを等色関数と呼びます。
下図は、CIEの定めた等色関数を示しています。この等色関数に基づいて色を表す体系を、「CIE表色系」の中で三刺激値R,G,Bを導き出すことから、「RGB表色系」と呼びます。

・XYZ表色系

実は、「RGB表色系」も完全なものではありません。
関数にマイナスの値があることが扱いにくく、光源の輝度を直接表現できないなどの難点があったため、新たに三刺激値をX,Y,Zとした、「XYZ表色系」が導入されました。「XYZ表色系」では、次の図に示す等色関数を用い三刺激値X,Y,Zを求め、Xは赤の成分、Yは明るさ(輝度)を含む緑の成分、Zは青の成分を表します。

xy色度図

CIE表色系において「色」は、3次元の色空間で表示されるのですが、3次元では表示することが難しいため、2次元に投影して表示したものを使用しています。
この投影面を色度図と呼び、XYZ表色系からは「xy 色度図」が得られます。「xy色度図」は、「色」の位置関係を表した「色の地図」ともいえ、色再現の説明にも大変役立ちます。

このグラフにある馬蹄型は、人の目が認識できる全ての「色の範囲」を表しています。

【さまざまな色域基準】(コラム)

RGBで再現される色域には、2つの規格が存在します。ひとつは、国際電気標準会議(IEC)によって規定されたsRGB。もうひとつは、アドビシステムズ社が規定したAdobe RGBです。
sRGBは、Japan Color※注 であるCMYKよりも色再現域の範囲が広いのですが、ブラウン管(CRT)ディスプレイでの色再現を目的としているため、色再現範囲には一定の限度があります。
また、Adobe RGBは、色範囲が広く、高輝度の色再現が可能であることから、PCモニタやデジタルカメラなどで使用されています。

※注 カラー製版印刷のための印刷見本として規定された規格。現在では、印刷データの転送やカラーマネージメントの分野で利用できる色の共通指標のひとつとなっている。米国のSWOP、欧州のEuro Standardなど同種類の標準がある。

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4. 色を作る方法 〜混色技法とカラーマネジメント〜

私たちが生活の中で目にするほとんどの「色」は、色光と色材の3原色によって作り出されます。

この章では、「色再現の原理」を説明し、カラー印刷や写真やテレビなどにおける「カラーマネジメントの重要性」
についてお話します。

4-1. 2つの混色原理

私たちが目にするほとんどの「色」は、色光と色材の3原色によって作り出されています。原色を2色以上混ぜ合わせて別の色を作り出すことを混色といい、混色には、色光の3原色による「加法混色」と、色材の3原色による「減法混色」があります。

・加法混色

「加法混色」による色再現は、下図に示すように赤(R)・緑(G)・青(B)の3原色の光により、「色」を再現する方法です。
プロジェクターやスポットライトを見ても分かるとおり、それぞれの「色」の光の強さを調整し、1箇所に投影することで、さまざまな「色」を作り出します。混色の段階で、色の明るさが足し算的に明るくなるので「加法混色」と呼ばれています。

私たちが見ているテレビやパソコンのディスプレイなどには、「加法混色」の中の「中間混色」と呼ばれる技術が使われています。3原色の光の混色面積や混色時間の比率が人の眼の中で処理され、各色の中間の明るさとなり、混ざったように見えるのです。

・減法混色

「減法混色」とは、カラー印刷やカラー写真のプリントなどのように、色材の3原色であるシアン・マゼンダ・イエローを絵の具で混ぜるように混合する方法です。光を吸収させる(=明るさが減少する)ために、「減法混色」と呼ばれます。

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4-2. カラーマネジメントの世界

私たちの周りには、カラー印刷やカラー写真、パソコンのディスプレイ、テレビなど、さまざまな画像メディアがあります。近年では機種の多様化や進展化が加速し、それぞれの間で「色」の情報を正確に伝達、再現することがますます重要になってきています。
異なる出力、再生機であっても正しい「色」を再現するためには、それぞれのカラーシステムを正確に変換するカラーマネジメントが必要です。
混色系の「CIE表色系」を用いれば画像の情報を相互にやり取りすることができ、出力だけでなく入力系としてデジタルカメラや、カラースキャナなどから読み込んだ「色」のデータも再現できます。どのような色信号、色情報でも「CIE表色系」を介すれば、受け渡しが可能です。「CIE表色系」は、正しい色再現を実現するために必要な、カラーマネジメントの有効な手段であるといえます。

「CIE表色系」で表示できる色空間をハブ空間と呼び、その変換に必要なデータをカラープロファイルといいます。

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5. 色再現技術の未来 〜これからのシャープの取り組み〜

液晶テレビが多くのご家庭に普及した今も、さらなる色再現向上の可能性を求めて、シャープの技術革新は続いています。

最後の章は、コンテンツの締めくくりとして、テレビにおける「色再現技術の未来」を展望します。

5-1. テレビの色再現技術

色再現技術の発展には、めざましいものがあります。白黒テレビが発売されたのが、1953年。そして、1960年にはカラーテレビが発売され、以来、ブラウン管(CRT)と呼ばれる構造でさまざまな色を再現してきました。もちろん、「CIE表色系」の理論に基づく「中間混色」で展開したもので、最近はカラーテレビにもたくさんの方式が出てきました。
ここでは、代表的な液晶カラーテレビの構造を紹介します。

液晶カラーテレビにおける基本的な色再現の要素は、バックライトなどの光源になるべきものと、RGBの3つの光を制御するスリットやシャッターなど、光の遮断機能をもつものがあります。その組み合わせで「中間混色」をどのようにして行うかで、カラーテレビの性能は変わってきます。
また、光の特性である反射や屈折なども大きく影響してくるのです。

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5-2. 色再現技術の広がり

カラーテレビなどで再現できる色再現域は、国際的な基準によるRGBの3原色によって決まります。技術の発達により以前に比べ、かなりの高画質でテレビ放送やソフト鑑賞などを楽しめるようになりましたが、テレビの色再現規格であるNTSC、BT.709は人間が認識できる色を全て含んでいるわけではありません。
下図は、SOCSの物体色分布を示すものです。SOCSとは、カラー画像入力装置を評価または設計するために物体色の分光反射率を体系的に収集、整理して発行されたデータベースです。図を見ても分かるように、現在のテレビで再現できる範囲の外にも、多くのSOCSが存在することがわかります。

シャープは4原色パネルの開発により、3原色パネルよりも広い色域の再現に成功しました(3原色パネルと4原色パネルの色再現範囲)。しかし、さらなる色再現向上の可能性を求めて、新技術の開発はまだまだ続いています。
高画質/高精細による色再現は、映画鑑賞などの目的以外にも、「遠隔医療」「遠隔病理診断」などの医療分野や、電子美術館やデジタルアーカイブなどへの応用に、ますます期待が高まっているのです。

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監修

大田 登 (おおた のぼる)
大田 登 (おおた のぼる)
  • 東京大学理学系大学院修了 (1968年)
  • 工学博士 (1973年)
  • 富士写真フィルム(株)入社 (1968年)
  • カナダ国立研究所留学 (1973年)
  • 千葉大学工学部客員教授 (1996年)
  • ロチェスター工科大学教授 (1998年)

著書

  • 色彩工学 (第2版) / 東京電機大学出版 (2008年)
  • 色再現工学の基礎 / コロナ社 (1997年)
  • カラーイメージング (編集) / 朝倉書店(2004年)
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