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【挿絵で振り返る『アキとカズ』】(48)「脱北者」をひそかに日本へと送り続けた「男たち」の物語

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【挿絵で振り返る『アキとカズ』】
(48)「脱北者」をひそかに日本へと送り続けた「男たち」の物語

「アキとカズ」第271回(挿絵・井田智康)

 実際、スキームができた後でも、職員の1人はNGO関係者に「この問題を真剣に考えているのは(外務省でも)2、3人しかいない」とこぼしたという。

 ただ、2000年代半ばから後半以降、このルートは機能しなくなる。中国側が態度を硬化させ、日本側が保護した脱北者の「出国」をなかなか認めなくなったからだ。このため、3年間も瀋陽の領事館で暮らさざるを得なかった脱北者もいたという。

 その理由についてはいろいろな見方がある。

 あるNGO関係者によれば、「小泉純一郎首相の靖国参拝などに中国が反発したため」。だが、別の関係者の見方は全く違う。日本政府が中国に宥和政策を取ったことで足元を見られ、強気に出たからだ、というのだ。それが「最もひどかったのは民主党政権時代(2009~12年)だった」という声も聞く。

 いずれにせよ、このルートは断たれた。脱北者はさらなる危険を冒して、国境のジャングルを越え、東南アジアなどへ抜けるしか方法はなくなったのである。現在までに、日本へ逃れてきた脱北者の数は約200人。ここ数年は、ほとんど増えていない。

 連載小説『アキとカズ』では、くだんの“サムライのような職員”をモデルにした物語を書いた。もちろん、小説だからすべてが事実というわけではない。話を聞いたNGO関係者の評価も分かれている。

 ただ、彼らやNGOの努力によって、日本へ帰ることができた人たちが間違いなくおり、現在はそれが事実上、ストップしていることだけは事実である。(『アキとカズ』作者、喜多由浩)

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