国民銀行、新韓銀行、ウリィ銀行、ハナ銀行など、韓国の市中銀行7行の住宅ローン残高が、年初からの2カ月間で3兆4481億ウォン(約3740億円)増加した。増加額は前年同期(4230億ウォン=約460億円)の約8倍に達し、1-2月の増加額としては過去最高を記録した。昨年10-12月期に金融機関の個人向け融資が過去最高となる27兆6000億ウォン(約3兆円)の増加となったが、今年に入っても個人負債が爆発的に増え続けているのだ。
個人負債が急増している原因は、主に二つある。一つは政府が景気てこ入れに向け、昨年8月から融資比率(LTV)や返済負担率(DTI)など不動産金融規制を緩和したためだ。このため、個人向け融資の増加額が昨年4-6月期の13兆1000億ウォン(約1兆4000億円)から7-9月期は20兆9000億ウォン(約2兆3000億円)、10-12月期は27兆6000億ウォンと拡大し続けた。もう一つは、伝貰(チョンセ=高額の保証金を預ければ、その運用益で家賃負担が不要となる韓国独特の賃貸制度)の暴騰に耐えられなくなった人たちが住宅購入に動き始めたためだ。
住宅の売買が増えて不動産市場が活気を取り戻せば、景気回復の追い風になる。そうした意味で、住宅購入による個人負債の増加は肯定的なシグナルとも言える。だが、負債の増加はリスクも大きい。可処分所得に占める個人負債の割合は、2013年ベースで韓国は160.7%と、世界的な金融危機の震源地だった米国(115.0%)をはるかに上回る。ともすれば、元利金の返済負担で消費が冷え込み、景気回復がさらに難しくなりかねない。米国の利上げで内外の経済環境が悪化すれば、個人向け融資の焦げ付きが急増し、金融機関が大打撃を受ける可能性もある。個人負債は韓国経済の「時限爆弾」と言っても過言ではないのだ。
韓国政府は経済状況に合わせて政策の力点を変えていくべきだ。昨年は景気てこ入れに重点を置いていたとすれば、これからは個人負債の管理を強化する必要がある。個人負債をこのまま放置していてはいけない。