Updated: Tokyo  2015/03/03 00:34  |  New York  2015/03/02 10:34  |  London  2015/03/02 15:34
 

日本総研の翁氏:追加緩和は必要ない-国債買い増し副作用

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  (ブルームバーグ):日本総研の翁百合副理事長は日本銀行の金融政策について「追加緩和は基本的に必要ない」とした上で、景気下支えのために実施する場合でも国債の買い増しは副作用があるとして国債以外の債券などで対応すべきだとの考えを示した。

翁氏は2月26日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、2%の物価目標について、「2年間で実現するのはそう簡単ではない。時間のかかる話だ」とし、達成時期にこだわるべきではないと述べた。量的・質的緩和については「株高・円安が定着し、人々のマインドを変えた効果は評価するが、資金が当座預金に積み上がり、量的緩和による直接的な効果は出ていない」と指摘した。

黒田東彦日銀総裁は2015年度を中心とする期間に2%の物価目標を達成するとの姿勢を変えていない。日本総研は経済見通しで、消費者物価指数(除く生鮮食品、消費税)について15年10-12月期に1.1%と1%台に乗った後、17年1-3月期まで1.3%-1.5%程度で推移すると予想。15年度は0.9%にとどまるとの見方を示している。

翁氏は日銀による大規模な国債購入で低金利が続いていることから仮に追加緩和に踏み込む場合も「債券市場の機能が大幅に低下する副作用がある。国債のさらなる買い増しは難しい」とした上で、他の債券や有価証券の購入、貸し出しの促進措置で対応すべきだと語った。

日銀は昨年10月の追加緩和で、長期国債の買い入れを保有残高年間約50兆円から約80兆円に増額。年換算では最大144兆円程度となり、来年度の国債の市中発行額152兆6000億円の9割以上に及ぶ。国債の流動性は低下し、0.5%を下回る低水準で推移している。

原油安による追加緩和の可能性についても「原油安は日本経済にとってもメリット。円安効果で年度後半には少しづつ物価も上がり、いずれ2%に近付いていく」と述べ、「必要はない」と発言。追加緩和はさらなる円安を招き、原油安の効果を相殺するほか、家計や中小企業への悪影響が拡大する恐れがあることに配慮すべきだとの考えを示した。

その上で、「日銀のバランスシートを大規模にすれば出口戦略が難しくなる。今は追加緩和をさらにやるよりも、低金利下で成長戦略、規制改革や財政再建を思い切ってやるべきだ」と主張。投資家とのコミュニケーションを促すため、金融政策の先行きを明示する「フォワードガイダンス」を示す必要性もあらためて指摘した。

翁氏は政府の税制調査会、規制改革会議や財務省の財政制度審議会の委員を務める。翁氏は1984年に慶応大学大学院修士課程を終了後、日銀に入行。92年から日本総研に勤務。政府が今夏にとりまとめる財政健全化計画については20年度の基礎的財政収支(PB)黒字化の達成は困難としながらも、「黒字化のメドをつけることが重要だ。投資家はそこを見る。財政再建を着実に進める仕組みが大事だ」と語った。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 下土井京子 kshimodoi@bloomberg.net;東京 氏兼敬子 kujikane@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net 淡路毅, 上野英治郎

更新日時: 2015/03/02 15:58 JST

 
 
 
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