東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

福島望郷 寄り添う 吉永さん、原発被災者の詩朗読

福島第一原発事故被災者らの詩をレコーディングする吉永小百合さん(右)と藤原道山さん

写真

 忘れない、風化させない、なかったことにしないために−。原爆詩の朗読をライフワークとしている女優吉永小百合さんが、東京電力福島第一原発事故の被災者らの詩を朗読したCD「第二楽章 福島への思い」を制作した。東日本大震災から四年になる三月十一日に発売される。

 吉永さんは「今もふるさとに戻れない福島の方たちの思いを私たちみんなで受け止め、寄り添うことができたら」と福島に思いをはせる。

 戦争や原爆の悲劇を二度と繰り返さないためにと、一九八六年から原爆詩の朗読を続けてきた吉永さんが、福島の詩人和合(わごう)亮一さんの詩と出合ったのは震災の年の夏。その後も、和合さんが指導する「詩の寺子屋」の子どもたちや福島県富岡町から避難を余儀なくされた佐藤紫華子(しげこ)さんの詩と向き合ううちに、CD化への思いが募った。

 「佐藤さんの詩はやむにやまれぬ気持ちで書かれた詩で、静かに読んでも思いがすごく伝わってきます。つらい詩もありますが、希望が見えるような作品を選びました」。CDには二十三編の詩を収録した。

 吉永さんは昨年十二月、「行ってみないと、本当に悲しみが分からない」と、帰還困難区域がある福島県葛尾(かつらお)村を訪れた。「想像以上にショックを受けた。自分たちの村がまるまる帰れないところになっている。そういう悲しみは、私が朗読してもなかなか表現し足りないのですが」

 避難生活は続いているにもかかわらず、震災は風化しかけていると感じる。「経済最優先になっていて、政治家の方は福島の復興をどう思っているのか、ふるさとに戻すつもりがあるのか、私には見えない」。原発に対しても「これだけの小さな国で、地震がいっぱいある風土で、原発はやめてほしいと思う。安全に暮らしていくために、もっと私たちが工夫しなきゃいけない」と話す。

 「第二楽章」というタイトルは九七年の広島編のCDから使用している。「復興したけど(原爆を)忘れないように穏やかに語り続けようということで付けました。だから福島はまだ『第一楽章』かもしれません」。長崎、沖縄、福島と続き「次に出さなくてはいけないようなことは起こらないでほしい。第二楽章の四編で終わりにしたいですね」と語った。

 朗読には、尺八奏者の藤原道山さんに作曲と演奏を依頼して音楽をつけた。藤原さんは「音楽は言葉にできないところを表現する。朗読に寄り添う形で音楽をやれたことで被災者の方に何かできたのではと思います」。

 「第二楽章 福島への思い」(ビクター)は三千二十四円。印税は震災の被災者のために寄付される。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo