星空文庫

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奴隷ハーレムの作り方#5~獣人奴隷リーナ~

ようやく街にまで戻ってきた俺はコルトさんに少女の事を聞かれたが、怪我をしていて先に治療がしたいから後で説明すると告げて、宿屋の部屋で少女をベッドに寝かせた。
 やっと張り詰めていた糸が切れ、脱力して椅子に腰掛けた。

 一息ついたのはいいが、まだ治療が終わっていない。
 腕が完全に折れていて、大きく腫れ上がっている。
 このまま放っておけば命の危険だってあるかもしれない。

 俺の治癒魔法で治すつもりなのだが、多分魔力が足りないだろう。気絶するのは確実だな。
 アイテムボックスから魔力回復薬をあるだけ出して、少女の体に手を翳して治癒魔法を行使する。
 俺の手から魔力が流れて、白い光が少女の体を包み込んでいく。
 そうしているとすぐに魔力が無くなりそうになる。
 気を失いそうになるのを防ぐために魔力回復薬を1本飲み干して、意識が朦朧になりながらそれを繰り返していく。

 治療している間、俺は少女の顔をようやく間近で見る事となった。

――美少女キタコレ!

 思わず見惚れてしまうような整った顔をしている。昼間に見たあの黒髪エルフの少女といい勝負だ。
 血や泥で汚れているのにも関わらず絹糸のようなセミロングの金髪の上に、ふさっと飛び出た獣耳があった。
 腰のところに目をやると尻尾もある。なんかキツネっぽい感じだな。

 それにしても、さっきから少女の胸に目が行ってしまう。
 そう、大きいのだ。仰向けになっていても形が崩れない二つの山は、天井に向かってそびえ立っている。
 何ともふかふかしていて、寝心地が良さそうなけしからんおっぱいである。

 彼女が獣人巨乳美少女と分かった今、現金なもので俺は俄然やる気に満ちている。
 何としてもこの子の怪我を治さねばならない。
 ただ、どれだけやる気に満ちていてもやっぱり魔力量は変わらないわけで。
 最後の魔力回復薬を飲み干し、ギリギリまで治療を続けたおかげで少女の折れていた腕もその他の傷も綺麗に治っていた。
 俺は治ったのを確認して、限界に近かった落ちていく意識に身を委ねた。



「ん……」

 気が付くと、もう朝になっていて、窓からは朝の光が入り込んで部屋を明るく照らしていた。
 ぐっすり眠っていたからか、頭がスッキリしている。
 ベッドの淵にもたれて寝ていたから身体の節々は痛いが、魔力は回復しているようだ。

「あ、あの……」

 先に目覚めていたのか、キツネ耳の少女はこちらを困惑した表情で見つめていた。
 そんな表情も、ベッドの上でシーツを胸の上まで手繰り寄せている状態だと俺を誘っているのかと勘違いしそうになるのだが、そこは俺の鋼の自制心によって押さえ込む。

「気が付いた? 怪我の具合はどう?」

「はい……どこも痛くないです。あなたが治してくれたんですか?」

 良かった。あれだけやって完治してなかったら俺の魔力量の低さに一晩中嘆く所だった。

「まあ、そんなところかな」

 そう答えた俺に、少女は床に這い蹲って謝り始めた。

「ごめんなさい! あの、私奴隷で、その、お金持っていなくて、治療代を払う事ができません!」

 ああ、そういう事か。どうやら彼女は、俺を医者か何かと勘違いしているらしい。
 彼女の傍まで近寄ると、殴られると思ったのかビクッと身体を強張らせて、尻尾をピンと逆立てさせている。

 え、なにこれ可愛い。

「お金目当てでしたわけじゃないから、そんなに怖がらないでいいよ」

 安心させようと出した言葉だったが、彼女は変な受け取り方をしたらしい。
 じりじりと後退り、俺との距離を開けて警戒心丸出しで声を荒げた。

「……じゃあ、私のか、身体が目的だったんですか! 怪我を治して感謝させてから私のか、身体をも、弄ぼうと!」

「おいちょっと待てええええい! どうしてそうなった!」

「そんなやらしい顔でこっちを見ないで下さい」

「失礼な! 俺の顔は至って平常運転だ!」

「嘘です! 鼻の下伸ばして私の胸を凝視していた癖してどの口がほざいてますかっ!」

「い、いや、それはだな、男の性というか何と言うか……」

 確かに全く下心が無かったのかと言われるとそれは嘘になってしまうのだが、それにしたって突飛しすぎだ。
 それにしても俺そんなにいやらしい顔で見てたのかな。自重しよう。

「――それにそうじゃなかったら奴隷の私を助けてくれる人なんかいないじゃないですか……」

 そう言って、彼女は悔しさと哀しみが入り混じった何とも言えない表情で、言葉を吐き出した。
 ああ、彼女は無償の優しさに触れた事が無いのか。

「……そんなに自分の事を卑下するなよ。自分が自分を認めてあげなきゃ、誰かが見てくれている事にも気づけないぞ」

――人の事言えた義理じゃないが。

「で、でもっ!」

「とにかく俺が助けたかったから助けただけだから気にするな。はい、この話は終わりにしよう。ところで君、名前は?」

「……リーナです」

「俺はコーヤ・カネミだ。リーナ、君のご主人様はゴブリンの親玉に殺された」

「……そうですか」

 心なしかほっとした表情を見せたリーナに、俺は森での出来事から今に至るまでの経緯を順を追って話した。

「そうだったんですか。本当に何から何まで助けてくれてありがとうございます。あの、お礼を言うしかできなくてごめんなさい」

「いいっていいって。それより、リーナの主人が死んだ場合ってリーナはどうなるんだ?」

「遺書などがある場合は遺言に従った処遇になるんですけど、あの人は持ってなかったと思います。その場合は奴隷を拾った方に権利を譲渡されるので、コーヤ様がご主人様です」

「え?」

「え?」

 なんか知らぬ間に奴隷を獲得していたらしい。しかも超絶美少女である。
 いいの? いいんだよね?
その耳と尻尾を思う存分モフモフすることも、精一杯意識しないようにしていたたゆんたゆんのその二つの大きい膨らみも自由にできるって言うのか!

「あの……私がいらないというのでしたら奴隷商会に売り渡すこともできますが……」

「絶対にそんな事はしない! ……と俺は思っているんだけどリーナはそれでいいの?」

 やっぱり不安なので確認してみる。もちろん、リーナが商会に行きたいのならそれでもいい。
 かなり惜しいがここでリーナの意思を尊重しなければ、この世界の奴隷の扱いと一緒になってしまう。

「あの、私はコーヤ様が嫌でなければ一緒に居て欲しいと思っています。商会には戻りたくありません……」

「わかった。じゃあこれからよろしくな、リーナ」

「よろしくお願いします、コーヤ様」

 そんな訳で俺は華々しい奴隷ハーレムの1人目、リーナを手に入れた。

「じゃあとりあえず、朝食食べようか」

 昨日から何も口にしていないので空腹を満たす為に、宿屋の従業員に朝食を部屋に用意してもらった俺はテーブルに座った。
 頂きます、と手を合わせて朝食に手をつけようとしたのだが、リーナに目を向けると彼女は床に朝食を並べて座っていた。

「……何をしてんの?」

「コーヤ様のお許しが貰えるまで待っています」

「いや、それもあるんだけど早く床に座ってないでこっちおいで」

「……いいんですか?」

「一緒に食べないと美味しくないだろ? 俺はリーナにそんなところで食べて欲しくないな」

 奴隷の扱いってここまで徹底されてるのか。
 だが俺はそんな下衆な趣味は持ち合わせていない。
 むしろ、美少女と同じテーブルで朝食を共にするというシチュエーションの方が俺にとってはご褒美だ。

「コーヤ様、美味しいです」

「そうだろう、そうだろう。俺もリーナと一緒に食事ができていつもより美味しく感じるよ」

 俺は食後のコーヒーを飲みながら、腹を空かせていたのか美味しそうに食べるリーナを見て癒されていた。

「ひゃい……ヒック……おいふいです……」

 鼻を啜り涙を溢しながら食べ続けるリーナのくしゃくしゃになった顔を、くしゃくしゃになっても可愛いなとくすりと笑みを溢しながらナプキンで拭いてあげた。



 朝食を済まして湯浴みで汚れを落とした後、宿を出た俺達は、リーナの服や必要な者を買いに行く為に街に繰り出していた。
 ちなみに湯浴みでラッキースケベとかは無かった。非常に残念だ。

「コーヤ様、こんなに買って貰ってしまって良かったんですか……?」

「いいんだよ。これから必要になるんだから」

 リーナの服や、生活用品などを購入して、アイテムボックスに入れていく。
 アイテムボックスってチートなのかなって思ってたんだけど、この世界では少しでも魔法の素質があれば使えるらしい。
それでも魔力を持たないリーナにとっては珍しいものだったみたいで大喜びしていたから良しとしよう。
 女の子の笑顔は宝物だと本気で思ってしまった。

「それより、いいのか? 無理して冒険者にならなくてもいいんだぞ。身の回りの世話とかしてくれれば俺は問題ないし」

 奴隷のメイドっていうのも悪くないよね。

「もちろんコーヤ様の身の回りの世話もしますよ。それに私、冒険者になるのが夢だったんですよ。奴隷だから前のご主人様みたいにあんな風に盾にされるのは嫌だったんですけど……でもコーヤ様と一緒なら冒険者になって、力を合わせて頑張れるかなって思うんです」

「リーナ……」

「あっ、すみません! なんか生意気でしたよね」

 そう言って恐る恐る俺の顔を伺っているリーナは、俺の事を信頼してもいいのかどうかわからないんだろう。
 不安気に揺れる碧眼に吸い込まれるように、俺はリーナを守らなきゃな、と思いながら首を横に振った。

「いや、むしろそのぐらい砕けてくれた方がいい。これから背中を預け合うパートナーなんだからな」

「は、はい! 宜しくお願いします!」

 ぱあっと輝くような笑顔で元気良く返事を返したリーナは、もの凄く嬉しそうにスキップしながらこちらを振り向いた。

「早く行きましょう! コーヤ様っ!」

 ああ、これが本来の彼女の姿だったかもしれない。
 この世界での奴隷としては不適格かもしれない。

 だけど――。



――俺の奴隷としては、最高だ。