下鴨神社:世界遺産の隣は分譲マンション 境内に建設計画

毎日新聞 2015年03月02日 21時11分(最終更新 03月02日 22時41分)

南側の敷地内(手前)のマンション建設計画が発表された下鴨神社=京都市左京区で2015年3月2日午後5時3分、本社ヘリから加古信志撮影
南側の敷地内(手前)のマンション建設計画が発表された下鴨神社=京都市左京区で2015年3月2日午後5時3分、本社ヘリから加古信志撮影
マンション建設予定地
マンション建設予定地
境内に建設されるマンションの完成イメージ図(中央の色が鮮やかな部分がマンション)=下鴨神社提供
境内に建設されるマンションの完成イメージ図(中央の色が鮮やかな部分がマンション)=下鴨神社提供

 世界遺産に登録されている下鴨神社(京都市左京区)は2日、境内に分譲マンションを建設する計画を明らかにした。2017年春ごろ完成予定で、土地代として毎年約8000万円が神社の収入となり、土地の貸し出し期限となる50年後に更地で返却される。建設予定地は世界遺産や史跡の指定区域から外れているが、世界遺産の寺社が境内にマンション建設を認めるのは異例。背景には、文化財修理などにかかる多額の費用確保に苦労する事情がある。

 下鴨神社は今年、21年に1度社殿を新しくする「式年遷宮」の正遷宮に当たり、収益の一部は今回と次回の遷宮の費用に充てる予定という。

 境内に広がる「糺(ただす)の森」の整備計画の一環。予定地は世界遺産区域から「御蔭(みかげ)通」を挟んだ南側の約9650平方メートル。現在は参道を挟んで東側が研修道場、西側が有料駐車場になっている。

 マンションは、鉄筋コンクリート地上3階建て8棟(合計107戸)。京都市の景観や高さの規制に合致するよう、高さは10メートル以内で屋根は日本瓦とする。敷地内には糺の森の植生と同じニレ科の樹木を植える。

 市によると、現在は開発業者との間で事前協議中。用地は市の特別修景地域などに指定されており、今後は市の美観風致審議会に諮問して、許可手続きを進めるという。今年11月の着工を目指す。

 下鴨神社によると、予定地にはかつて神職の社宅があったが、戦後の財政難からゴルフ練習場を造って1980年代前半まで利用。その後は駐車場としていたが、近年は周辺に駐車場の整備が進み、利用が減少していた。今回の遷宮には約30億円かかる見込みで、国の補助金(約8億円)を除く分は大企業などから寄付を見込むが、思うように集まっていないという。

 新木直人宮司(77)は「さい銭やご祈とう料などは普段の維持管理費に充て、式年遷宮など特別の経費は寄付頼み。しかし、檜皮(ひわだ)のふき替えなど修理費用は年々上がり、寄付を収入の柱に考えるのは難しい。神社を次世代に残すため、この方法しかないと決断した」と話している。【花澤茂人】

 ◇下鴨神社

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