琵琶湖:ルーツ新説に「450万年前、東海地方の巨大湖」

毎日新聞 2015年03月02日 12時49分(最終更新 03月02日 13時32分)

上空から見た琵琶湖=本社機から大西岳彦撮影
上空から見た琵琶湖=本社機から大西岳彦撮影
約450万年前に分化したと推定されたゲンゴロウブナ=琵琶湖博物館提供
約450万年前に分化したと推定されたゲンゴロウブナ=琵琶湖博物館提供

 ◇滋賀県立琵琶湖博物館が検証に取り組む

 「琵琶湖は約450万年前、東海地方にあった巨大湖の一部だった」とする新しい仮説の検証に、滋賀県立琵琶湖博物館(草津市)が取り組んでいる。これまでは現在の三重県伊賀地方に約400万年前にできた小さな湖が、地殻変動で北上して琵琶湖になったというのが定説だった。しかし、琵琶湖固有の生物種の遺伝子解析などから、50万年程度さかのぼる可能性が出てきた。世界有数の古代湖、琵琶湖のルーツに迫ろうとする研究が注目を集めている。

 琵琶湖は、約400万年前に伊賀地方にできた「大山田湖」が、断層運動に伴って伸縮を繰り返しながら移動し、約40万年前に現在の姿になったとされる。琵琶湖の固有生物約60種の多くも、その後誕生したと考えられてきた。

 ところが近年、この定説を覆す研究結果が出された。京大や東大の研究によると、ゲンゴロウブナは約450万年前、イサザは約290万年前、ホンモロコは約170万年前に元の種から分化したと推定された。

 約450万〜200万年前ごろ、現在の濃尾平野と伊勢湾を含む一帯には、学術上「東海湖」と呼ばれる巨大な湖があったとされる。2012年には、津市の約400万年前の地層から琵琶湖固有種「スズキケイソウ」に似たケイ藻の化石が見つかった。発掘地点はこの東海湖の範囲で、直径が通常のケイ藻の約2倍あり、広い湖に適応して進化したとみられる。

 こうした遺伝子研究から、大山田湖は東海湖の一部だったとする説が浮上。スズキケイソウに似た化石も、東海湖と琵琶湖の変遷がつながっている可能性を示唆しているという。

 琵琶湖と東海地方は、鈴鹿山脈が約200万年前に隆起して隔てられた。この地域から東海湖の痕跡を示す堆積(たいせき)物が見つかれば有力な証拠になるが、まだ発見できていない。

 琵琶湖博物館は15年度までの5年計画で仮説の検証を進めている。高橋啓一副館長(古脊椎<せきつい>動物学)は「多くの研究者が琵琶湖の生い立ちには別の可能性があるのではないかと考えている。矛盾を突き詰めると、東海湖の一部だった説が浮かんでくる。決め手となる証拠を見つけたい」と話している。【石川勝義】

 ◇興味深い仮説、多面的な検証を

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