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<被災地のいま>(1)仮設住宅/寂しいけれど仕方ない

仮設住宅で1人で暮らす女性。周りは次々と退去が進み、孤独感が募る=岩沼市

 東日本大震災の発生から間もなく4年。津波や東京電力福島第1原発事故で打撃を受けた東北の被災地は、今も復興の途上にある。住宅再建や市街地再生にとどまらず、産業振興、風評克服など直面する課題はいずれも深刻だ。あえぎ、揺れ続ける各地の姿を追った。(8回続き)

 部屋は静まり返っていた。ベッド脇の食卓には、体調を管理する薬が大量に置かれている。
 「話す相手がいない。寂しいけれど仕方ないね」。岩沼市のプレハブ仮設住宅で、1人暮らしの女性(80)が窓の外に目をやる。
 仮設団地に住んでいた友人は集団移転で引っ越した。以来、遊びに来てくれることはなくなった。息子やヘルパー以外、最近は訪れる人も少ない。
 市沿岸部の自宅は津波で流失し、夫は帰らぬ人になった。同居していた息子家族は、勤務先が用意した市内のアパートに移った。
 女性は昨年部屋で転倒し、1カ月以上入院した。歩くのが困難になり、デイサービスの日以外は部屋に閉じこもる。
 いつ仮設を出られるのか、分からない。今後のことは息子に任せているが、自宅再建の余力は乏しい。家賃が気掛かりで、災害公営住宅への入居も決断できない。「1人でいると悪いことばかり考えてしまう」

 「復興のトップランナー」とも言われる岩沼市。海岸から約3キロ内陸に集団移転団地「玉浦西」が造成され、住宅建設が進む。5月には全ての災害公営住宅が入居可能になる見通しだ。
 市内に計384戸あるプレハブ仮設では既に130世帯以上が退去した。5月末には大半が空き室になる見込みだが、12世帯は自立のめどが立たない。「住む場所に迷っている」「家の建設資金が調わない」などが理由という。
 みなし仮設でも、約100世帯のうち21世帯の退去時期が定まらない。20世帯は市の調査に回答すらしていない。「今後の予定を聞こうと電話しただけで『早く出ていけって言うのか』と怒鳴られることもある」。市担当者は対応の難しさを明かす。

 仮設の入居期間について、宮城県は移住環境が整った自治体は原則5年までとする。岩沼の場合、2016年4月末にも期限を迎える。要件を満たせば世帯ごとに延長できるが、適用は限定的とみられる。
 家の建設が遅れている市内の男性(64)は「それぞれ事情があるし、財布の中身も違う。ついのすみかを決めるには時間がかかる」と訴える。
 空き室の増加は、被災者のコミュニティー喪失を意味する。市は残る世帯の早期自立を促しつつ、孤立防止に向けた見守りを続ける方針だ。(岩沼支局・成田浩二)


2015年03月02日月曜日

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