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ザ・なつやすみバンド、なぜ東京インディーを脱してメジャーへ?
インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:永峰拓也(2015/03/02)
現代の音楽にとって重要なのは、「どの弱さに立つのか?」ということなのかもしれない。人生においてすべての苦しみから解放される瞬間なんてなくて、どんなタームにおいても、そのときなりの苦しみがある。だからこそ、音楽は「エスケーピズム(=現実逃避)」と切り離して語ることはできないのだが、近年世代を問わず、それについて話す機会が増えたというのは、やはり現代が「困難多き時代」であることの表れなのだろう。そして、そんな時代において、ザ・なつやすみバンドはあくまで市井の人々の視点に立つ。「毎日がなつやすみだったらいいのになぁ」。そう言って笑い合いながら、季節のように移ろう喜怒哀楽と共に、日々を生きていこうじゃないかと。
2012年に発表したファーストアルバム『TNB!』が、自主制作ながら『CDショップ大賞』にノミネートされるという異例の評価を獲得したザ・なつやすみバンド。自身のバンド・片想いや、ceroのサポートなどで活躍するMC.sirafuが在籍するバンドとしても知られる4人組が、セカンドアルバム『パラード』でメジャーへと進出する。スティールパンやトランペット、バイオリンなどによる色鮮やかな音色と、プログレッシブに展開する組曲形式の楽曲が個性的だが、あくまで歌を中心とした普遍性のあるポップスとして着地していることが素晴らしく、文句なしの傑作だと言っていいと思う。結成当初からのメンバーである中川理沙とMC.sirafuに、バンドの根幹についての話を聞いた。
ザ・なつやすみバンド
中川理沙(ボーカル、ピアノ)、MC.sirafu(スティールパン、トランペット)、村野瑞希(ドラム)、高木潤(ベース)によって、2008年4月「毎日が夏休みであれ!」という信念の元、結成。結成後、メンバーチェンジを経てライブを重ねるうちに東京インディーズ界隈で話題となり、下北沢の街全体で開催されているサーキットイベント『下北沢インディーファンクラブ2011』では、リリース作品が1枚もない中での出演にも関わらず入場規制となった。2012年6月に満を持してファーストフルアルバム『TNB!』をリリース。自主制作ながら好セールスを記録し、第5回CDショップ大賞へも錚々たるメジャーアーティストと並んでノミネートされ、現在でもロングセールスを続けている。2013年、『サマーゾンビー』を短冊8cmシングルCDでリリース。2014年夏には4曲入りEP『S.S.W』の無料配信が話題となった。そして2015年3月、メジャー進出となる待望のセカンドアルバム『パラード』をスピードスターレコーズよりリリースする。
ザ・なつやすみバンド
ザ・なつやすみバンドは、メジャーの力を借りたときに、何倍にも何百倍にも膨らむようなポップスの力を、ちゃんと蓄えてるバンドだと思うんです。(MC.sirafu)
―ザ・なつやすみバンド(以下、なつやすみ)はインディーズで自分たちのペースを大事に活動しているバンドという印象があったので、メジャーデビューは驚きました。
MC.sirafu(Trumpet,Steelpan):そういうイメージを出しちゃってたかなとも思うんですけど、一生インディーズでやりたいわけではなかったんですよね。前作に関しては、「今の時代、こういうやり方もあるよね」と思って作ってたんですけど。
―中川さんはメジャーとインディーズについて、どうお考えでしたか?
中川(Vo,Pf):「メジャーがいいなあ」とは思ってたんですけど、ホントに出せるとは思ってませんでした。
―「メジャーがいい」と思っていたのは、何が理由ですか?
中川:多分、メジャーじゃないと届かないところってあるじゃないですか? インディーズだと、音楽を掘り下げていろいろ聴く人じゃないとなかなか届きづらいと思うんです。音楽が好きな人たちはもちろんだけど、子どもからお年寄りまで聴いてもらいたいと思ってたので、メジャーから出せたらなって。
sirafu:うくつしきひかり(中川とMC.sirafuのデュオ)はインディーレーベルから出してたり、片想いやceroとか個人的にいろんな活動をする中で、宣伝に関しては、自分たちでできる限界があるってすごく思ったんですよね。なつやすみに関しては、自分たちだけではできないことを、人の力を借りて手伝ってもらえればなと思って。その結果、SPEEDSTAR RECORDS(くるり、斎藤和義などが在籍する、ビクター内レーベル)から出させてもらえることになったんです。
―シラフさんがいろんなバンドで活動をされている中で、なぜなつやすみはメジャーがいいと思ったのでしょう?
sirafu:なつやすみが持つ「ポピュラリティー」ですよね。メジャーの力を借りたときに、何倍にも何百倍にも膨らむようなポップスの力を、ちゃんと蓄えてるバンドだと思うんです。
―シラフさんはバンドに途中から加入されていますが、中川さんは結成当初から「大衆性のあるポップス」っていうのを念頭に置いていたのでしょうか?
中川:最初は自分から出てきたものを作ってただけで……今もそうと言えばそうなんですけど(笑)。シラちゃん(MC.sirafu)が入って、「もっとちゃんとやりましょう」って話もしましたし、シラちゃんは私には作れない曲も作ってくるから、加入したことでだいぶ変わりましたね。
sirafu:僕は他のメンバーより一回りくらい世代が上なんですけど、僕の世代がポップミュージックをやろうとすると、ちょっと意地悪な感じで意図的に小出しにしたりとか、音楽的な感じでやろうとしちゃうんです。でも、なつやすみはそれが無意識にできてるなって思ったんですよね。パッと曲を作ると、恥ずかしげもなくポップな曲ができちゃう。そのバランスが絶妙だなと思って、そこに光というか、可能性を感じて。さらに、そこに僕が入ってもう少しかき回したら、音楽的にちょっと変で、押しつけがましくないポピュラリティーを持ったバンドになるんじゃないかって。