“越えられない壁”をつくるなーー「キャリアトレック」プロデューサーに学ぶ、ずば抜けた“上昇志向”

 
 キャリアを築いていくためのステージを、あなたはどのように選んでいるだろうか。働く環境を決める上での基準の一つに、「優秀な人材がどれだけ集まっているか」というものがある。しかし、たとえそのコミュニティに属することができたとしても、優秀な仲間達の後をついて回るだけでは意味がない。彼らを越えてやろうという強い向上心がなければ、キャリアを変えても自己成長には繋がらないのだ。

 そう語るのは、株式会社ビズリーチが運営している転職サイト「キャリアトレック」のプロデューサー、篠原孝明さん。Appleでそのキャリアをスタートさせた篠原さんは、フリーランスを経てグリーに、そして現在ビズリーチで新たなキャリアを築いている。今回は、 常にさらなる成長環境を求めてチャレンジしている彼に、自身の働き方について振り返ってもらった。


――これまで、自分の理想とする働き方を追い求めるため、幾度となくキャリアチェンジをしてきた篠原さん。まず、最初に就職したAppleから、一度フリーランスという道を選択した経緯についてお聞かせください。

 元々、私が中学生の時に兄が起業したことから影響を受け、自分もIT業界でキャリアを築いていきたいという思いがありました。そのためには「プレゼン力」と「ITスキル」が必要と考えていた私は、大学に通うよりも現場でスキルを磨き、評価されることで成功体験を積んでいく道を選びました。その第一歩として、Appleでキャリアをスタートさせることを決めました。 

 しかし、Apple社で働いていた頃に父親が病気にかかり、余命3ヶ月と宣告されたんです。自分で会社を経営していた父親の背中を見て育った私は、病気の父親を見て「自分の力で働けている姿を見せたい」と強く思うようになりました。そこでAppleを退職し、フリーランスの活動を始めました。ただ、いざフリーになってみると「自分一人でできることには限界がある」と気がついたんです。


――では、現在ビズリーチで働くことを決めるまでは、どのようなキャリアを歩んできたのでしょう?

 フリーランスを経て改めてキャリアについて考えた時、エンジニアとしてのスキルを極めるのではなく、組織に入り優秀な人達と一緒にサービスを作っていくことが、世の中に自分が作ったものを提供できる最短コースだと考えたんです。ちょうどその頃、グリーが大阪にスタジオを立ち上げるタイミングだったので、参画しました。そこで、念願だった「自分でプロダクト・サービスをつくり、提供する」ことができるようになりました。

 電車に乗ったときにたまたま隣に座っていた人が、私が携わったゲームをしていたり、様々なメディアで取り上げられたり、全国のユーザーから「面白い」「ありがとう」というコメントをもらったりと、多くの人に喜んでもらっていることを体感し、感動しましたね。しかし私は次第に、自分達が作ったプラットフォームの中で「面白さ」の先にある、ライフイベントに影響を与えるものを生み出していきたいと考えるようになりました。

 そこで、また様々な会社を見ていった中でビズリーチに入社して、今まさに「転職」という人生の岐路に関わるサービスを生み出しています。


――それぞれのキャリアを選ばれる際、篠原さんの中で企業選びの“軸”としていたものはありましたか?

 今の自分よりもずば抜けて優秀な人達がいる環境に身を置くことが、最短距離での成長に繋がると思っています。ですので企業を選ぶ時も、その会社でどんな人が働いているのかなど、環境を重視していました。

 あとは、自分でサービスを生み出すことができる会社かどうか。アイデアだけで終わらず、サービス存続ができるプロダクトを一つ世に生み出すことが「成長」だと捉えていたので、それが可能な会社かどうかをチェックしていましたね。


――仕事の内容や働く環境に満足することなく、これまで仕事に対して常に高いモチベーションを維持し続けていられた秘訣は何ですか?

 自分よりも視座が高い人達のコミュニティには、自分からどんどん参加するようにしていました。その中には、今までの自分では想像もしなかったようなことをやっている同世代の人もいます。大事なのは、そういう人達に会った時に「この人のようにはなれないな」と、自分の成長意欲に“蓋”をしないこと。「その人が実現できているんだから、自分も頑張ればできないことはない」という思考を持つように心がけています。

 仕事でも、組織の中で先輩や上司と一緒に働く際、その人のことを”越えられない壁”だと思わないようにしています。例えば、その職場で自分よりも5年長くキャリアを築いた先輩がいるならば、1年間でその人の5年分を上回るぐらいのペースで情報を吸収していけばいい。そんな心構えで仕事に向かえば、一年後にはその先輩と近いレベルの視座を持って働くことができるはずです。

 例えばOJTで先輩の営業に同行した時も、先輩の良いトークはもちろんのこと、「少しでも吸収したい」という思いで、話している内容に対する相手の表情などもよく観察していましたね。もし相手が少しでも疑問を感じているようなら、それをクリアすることが自分のレベルアップに繋がりますから。たとえ一緒に働く人が役員だったとしても、「あの人には敵わない」と自分の伸びしろに制限をかけるのではなく、「いつかその人を越えられるんだ」という意識を常に持つようにしています。(続く)


続き:転職はキャリアアップのタイミング――「キャリアトレック」プロデューサーが語るこれからの「転職観」
3月4日公開予定

篠原孝明(しのはら・たかあき)さん プロフィール

株式会社ビズリーチ キャリアトレック事業部 プロデューサー
2008年、Apple Inc.に入社し、その後フリーランスのWebデザイナーとして活動。2012年、グリー株式会社に入社し、大阪スタジオの立ち上げに参画。プロダクトマネージャーを務める。2014年、株式会社ビズリーチに入社し、20代向けのレコメンド型転職サイト「careertrek(キャリアトレック)」のプロデューサーを務める。

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ルールがないなら、独自の考えを――”体育会系”代表理事が語る、正しい仕事の「根性論」【後編】


 根性を持って仕事することは確かに大切。だが、「一生懸命続けてさえいれば、必ず成果は出る」と思い込んでいては危険――。チャリティーランニング大会を企画・運営する一般財団法人PARACUPの代表理事、森村ゆきさんは、仕事における「根性の使い方」についてこのように語っている。

 「バスケ一筋だった」学生時代で培ってきた根性を武器に、仕事を始めたばかりの頃はとにかく時間をかけ、一心不乱に仕事に取り組んできた森村さん。しかし、それでも成果が出ない時、彼女は一生懸命頑張ることが仕事の目的ではないことに気づいたと言う。自らの失敗経験から導き出した、仕事における根性の正しい使い方について彼女にうかがってみた。




――森村さん自身、やみくもにやり続けるだけの働き方ではダメだと気づいたきっかけは何だったのでしょうか?

 前職で営業を始めたばかりの頃は一生懸命だったけど、やり方については深く考えずにいたから、思うように結果が出なかった。そこで、上手くいっている先輩に秘訣を聞いてみたところ、その人はいつも上司に良いやり方を聞いていたんです。でも、私はそれを恥ずかしいことだと思ってしまった。スポーツでも、上手い人にやり方を聞くのをためらってしまうこと、ありますよね? これは、自分のプライドが邪魔をしているからなんです。

 何を聞いていいのかわからないし、そういう人の多くはそもそも「自分はできる」と思っていますから。だから、やってみてできなかったことに対して、「できないんだ」と認めるのもなかなか難しいでしょうね。でも、仕事における目的は「自分が一生懸命頑張ること」ではなく、「成果を出すこと」。そこをはき違えてはいけないんです。

 そんな私に先輩は、「それだけやって成果が出なければ、やり方が間違っているか、成果が出るまでもっとやり続けるしかない」と言ってくれました。その時に初めて、一生懸命やっても結果が出ないのは、努力が違う方向に向かっているからだと気づいたんです。軌道修正をしながら仕事をしていくために、まずは自分で立ち止まって考えて、上手くいっている人がどんなやり方をしているのかを聞くことが大切だと教えられました。

 社会人にとっては、仕事を通して自らが成長していくことが人生の楽しみでもあるはず。それに、お金をもらっているからには成果を出さなければいけない。そう考えれば、「自分のプライドが邪魔して聞きに行けない」なんて感情自体、ありえないと気づきますよね。


――では、森村さんが考える理想的な“根性”の使い方は?

 根性は、誰でも持っているはずなんです。だけど、以前の私もそうだったようにほとんどの人が「指示してくれさえすれば、100%どんな辛いことでもやりますよ」というスタンスで、「自分で考える」ということをしようとしない。特に、根性だけでやってこれちゃった体育会はね。社会に出ると、スポーツのようにルールなんてないし、やり方をコーチみたいに教えてくれる人もいないから、何をすればいいのかわからず困ってしまうんです。

 極端な話、スポーツと違ってビジネスでは、相手の準備が整っていない内にスタートを切るのもありだし、人数制限だってない。「正々堂々と戦うことが正しい」という考えを持ち、そこに100%力を注ぐのは間違った根性の使い方だと思っています。特に、ずっとスポーツをやってきて、根性もやる気も向上心もある人が社会に出ると伸びない理由の一つは、そこにあるんじゃないかと思ったことはあります。

 部活をやっていた人ならわかると思いますが、監督のことは盲目的に信じてしまいますよね。反抗なんてありえないし、それが常識だと決め付けてしまっている。でも、社会では言われたことだけをやればいいなんて、ほぼありえない。スポーツでも、一流の選手は監督から与えられたこととは別に、独自の考えを持っているもの。そういう風にしていかなきゃいけないですよね、スポーツでも、仕事でも。


――森村さん自身、これまでを振り返って「働くこと」に対する考え方はどのように変わっていきましたか?

 学生の頃は、「仕事は楽しいものだ」と思ってはいませんでした。会社の選び方も、どんな仕事をするのかもわからなかった。とにかく会社に入って、与えられた仕事をやっていけばお給料がもらえるものだと考えていましたね。自分が創意工夫をして作っていくものだとは思っていなかった。

 だけど、PARACUPの運営に携わり始め、色んな人達と出会う中で考え方が少しずつ変わっていったんです。そもそも、当時はランニング大会をつくること自体がすごくクリエイティブでした。一つ一つ自分で考えて決めていくこと、そしてそれがちゃんと形になることがすごく面白いと感じるようになりました。


――今後、PARACUPをどのようなイベントにしていきたいと考えていますか?

 もっと多くの人にランニングを楽しんでもらいたいですね。そして運営メンバーには、イベントを一から作り上げていくことの面白さを実感してもらいたい。このイベントを通して彼らには、私のように仕事の楽しさに気づいてもらい、将来の色んなことに活かしてもらえたらと思っています。

 また、PARACUPで集めたお金によって、世界の子どもたちに提供できる選択肢の幅を広げていきたい。彼らは生きるか死ぬか、学校に行けるか行けないかという選択肢の中で生きています。しかし、集めた寄付金によって教育が受けられるようになると、例えば今まではゴミ拾いしか仕事がなかった子どもも、勉強して字が読めるようになり、ファーストフード店で働くことができるんです。このように、子どもたちの人生の選択肢が増えていくきっかけを生み出していきたいと考えています。

森村ゆき(もりむら・ゆき)さん プロフィール

一般社団法人PARACUP 代表理事
2004年、人生初のマラソンとしてホノルルマラソンに出場。その後、「走る喜びを多
くの人と味わいたい!」という思いから、RUNとチャリティーを融合させた「PARACUP~世界の子どもたちに贈るRUN~」を友人達と立ち上げる。自身も走ることを楽しみ、多くの人に走る楽しみを伝えるとともに、「走ることで人生を変えよう!」を提唱している。

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「頑張ること」に満足していない?ーー”体育会系”代表理事が語る、正しい仕事の「根性論」【前編】


 「根性」が私の強みです――。長所について聞かれた時、こう答える人は多いのではないか。確かに、どんな状況でも頑張り続けることのできる根性は、ビジネスマンにも必要だろう。しかし、厳しい言い方をすれば、目標に向かって努力し続けることは当然の話。問題は、その努力が間違った方向に進んでしまっていた時、どのように対処するか。そのためには、根性に加えて何が求められるのだろうか?

 今回お話を伺った森村ゆきさんは、世界の子どもたちを支援するためのチャリティーランニング大会を企画・運営されている、一般社団法人PARACUPの代表理事。学生時代はバスケ漬けの生活を送り、そこで培われた根性を武器に仕事に励んでいた森村さんだが、ある時そのやり方に疑問を感じたと言う。これまでの自身の仕事を振り返りながら、持ち前の根性を最大限活かす働き方について語ってもらった。


――社会人になりたての頃とPARACUPを立ち上げた頃とでは、仕事に対する取り組み方が異なっていたそうですね。PARACUP立ち上げの経緯は、どのようなものだったのでしょうか?

 就職してから7年間ぐらいは、激務でも仕事を楽しんでいました。体育会系の人の多くは、目標があれば達成のために突き進もうとする思考を持っているはず。私の場合、その時は「仕事ができるようになること」が人生の成功だと思っていた。残業をしてでも、誰よりも早く成果を挙げたいと思ってやっていましたね。でも次第に、「必死に仕事をすることだけが成功なのか?」と疑問に感じるようになりました。

 ちょうどその頃、休日を利用してホノルルマラソンに出場したんです。元々身体を動かすことが好きだし、昔スポーツをしていて味わったことのある爽快感がマラソン大会にはありました。「マラソン大会がもっと日本でも広まったらいいのに」と思うようになったのはそこからですね。そして、元々所属していたチャリティー団体とコラボして、チャリティーランニング大会「PARACUP」が生まれました。


――長年の部活で鍛えられた根性をどのように活かして、これまでの仕事に取り組んできましたか?

 部活って、半強制的なものじゃないですか。入る、入らないは自分で決めるけれども、入ってしまったらなかなか辞められない。「今日は調子が悪いから行きません」と気軽に休むこともできないし、練習でも「今日はこれをやれ」と指示されたら、たとえ調子が悪かったとしても、やると決めたことは全速力でやる。この習慣が、仕事にもそのまま反映されていると思うんです。

 第一回PARACUPの時は、まだ前職での仕事と並行して大会の運営をしていたので、本当に忙しかったですね。PARACUPのために使える時間は夜の遅い時間か、あとは休日。徹夜で作業していたこともあったので、そういう時にこれまで培ってきた体力と、「やると決めたらやる」という根性が活きているな、とは思います。


――ですが、ただやみくもに頑張るだけの「根性論」では、仕事で成果を挙げることは難しい、というイメージがあります。備わっている根性を仕事で最大限発揮するためには、仕事に対してどのような考え方を持つべきなのでしょう?

 特に若手の頃は、例えば自分はA案だと思っても、先輩に「B案でやりなさい」と言われたら、自分の意志を殺してでもB案でやらなければいけない場合もある。でも、たとえ自分の意志ではなかったとしても、それをやり続けることで見えてくるものはあると思うんです。行動せずにああだこうだと言っていても、何も見えてこない。ならば、行き着くところまでは、それが根性論でもやり切った方がいいんじゃないかな。

 ただ、成果が出ない時は立ち止まるべきだと思う。やっているのに成果が出ないと、いつしか“頑張っていること”に満足してしまい、できない要因を人や環境のせいにしてしまいがち。自分を信じることはもちろん大切です。でも、「自分はやれば必ず成果が出る」と思い込んだまま仕事に取り組んでしまうと、成果が出ない時、やり方が間違っていることに気づくのが遅れてしまうと思います。

 スポーツも同じですが、頑張っても成果が出ないと感じたら、上手くいっている人の話を聞いたり、真似したりすることがすごく重要。仕事の量がその人と同じなら、質も高める必要があります。そのためには、上手くいっている人が何をしているのか、どうしてそうなれたのかを真似なきゃいけない。だから、根性をしっかり使いつつ、成果が出ない時は冷静に物事を見つめ直す視点を持つといいですね。(続く)



森村ゆき(もりむら・ゆき)さん プロフィール

一般社団法人PARACUP 代表理事
2004年、人生初のマラソンとしてホノルルマラソンに出場。その後、「走る喜びを多
くの人と味わいたい!」という思いから、RUNとチャリティーを融合させた「PARACUP~世界の子どもたちに贈るRUN~」を友人達と立ち上げる。自身も走ることを楽しみ、多くの人に走る楽しみを伝えるとともに、「走ることで人生を変えよう!」を提唱している。

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両立したいのなら、「信頼残高」を意識すること――好きなこと、仕事のために諦めなきゃダメ?【後編】

  
  仕事に加えてもう一つ何かに全力で打ち込むためには、他のものを犠牲にする覚悟が必要――。そう語るのは、エンジニアとして仕事に取り組みながら、2014年12月まで「謎解きアイドル『パズルガールズ』」というアイドルグループで活動していた堤沙也さん。

 「周囲の多くの人の支えがあったからこそ、仕事とアイドルを両立できた」と語る堤さんは現在、アイドルを卒業しwebエンジニアの仕事に専念している。”仕事も好きなことも全力で”という働き方を1年以上実践してきた彼女に、当時を振り返ってもらった。




――これまで仕事と両立しながら続けていたアイドル活動を卒業したのはなぜですか?

 私が卒業する数か月前から、アイドル活動がかなり本格的になっていて、外部からの出演オファーなども頂くようになりました。私が加入した当時は会社員と両立をしている先輩メンバーもいたのですが、組織というのは変化するもの。もはや両立が不可能なレベルにまで近づいてきていました。また、同じ時期に無茶な生活で身体にも限界が来て、体調を崩してしまったという理由もあります。

 そこで一度立ち止まって、客観的に自分を振り返ったんです。1年以上のアイドル活動のために、私には手放してきたものもたくさんあった。これからは今まで以上に、エンジニアという職業にコミットしていきたいと考えるようになりました。だからこのタイミングで、アイドルの卒業を決意しました。


――現在はアイドルを卒業され、エンジニアの仕事に専念している堤さん。二つの仕事にコミットする働き方を終えた今、この働き方について思うことはありますか?

 何か二つの物事を得たいのなら、どこかで人に頼らなければいけなくなる。環境に恵まれていて、周囲の人と信頼関係が築けていることが必要だと思います。つまり、その人の「信頼残高」によるところが大きいでしょうね。

 両立の働き方を実践する前に、まず「周りの人に対してどれだけの信頼残高があるのか」を意識する必要があります。もちろん、働き始めてからも信頼を失わざるを得ない状況はたくさん起こるので、その中でいかに双方に信頼を“預金”し続けていくかを常に意識しないと、本当に大切な何かを失うかもしれません。

 私も、信頼を失ったなあと思うことはたくさんありましたし、「健康」という最重要事項を顧みることもできていませんでした。この働き方にはリスクもあるし、嫌な思いをしたり傷つかないように働いたりすることは、ほぼ不可能に近いでしょう。ですが、それを覚悟してでもやりたいことがあるのなら、チャレンジした方がいいと思います。私はこの働き方に対して、「やらなければよかった」と思ったことは一度もありません。


――現在は一つの仕事に専念できる環境にありますが、アイドルとの両立をしていたことで、現在の働き方に何か変化はありましたか?

 時間の使い方が上手くなりましたね。アイドルと両立していた時期は、どうやっても時間が足りませんでした。「マルチタスク」を行うことはいいのですが、当時の私は「マルチフォーカス」してしまっていたんですね。どちらかの仕事にフォーカスを当てられていたら、二つのことをやっていてもタイムマネジメントできるはず。でもそれができていなかったから、かなり無理な時間の使い方をしていましたね。

 その経験があるから、一つのことに専念できるようになった今では、時間のありがたみがわかる。使い方にも、以前より気を配るようになりましたね。無駄な時間を省き、本当に必要なことにフォーカスして時間を使うようになりました。


――最後に、一つの仕事に専念できる環境になった今、堤さんが今後仕事に取り組む際の目標があれば教えてください。

 アイドルと両立していた時は、どんなに頑張ったつもりでも両方に100%コミットすることはできなかった。だから、二つのことをしていて失った分の時間や成果を、これから真摯に取り戻していきたいという思いはあります。時間の大切さがわかった今、まずは「的確なところに効率よく力を注ぐ」時間の使い方を目指し、最大の成果を挙げていきたいですね。

堤沙也(つつみ・さや)さん プロフィール

1990年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。都内のwebサービス全般を扱う企業で、webエンジニアとしてサービスの設計や開発に従事。主に扱う言語は、Ruby,Python,PHP。エンジニアとして働く傍ら、2014年12月まで「リアル脱出ゲーム」を制作・運営する株式会社SCRAPプロデュースの「謎解きアイドル『パズルガールズ』」のメンバーとして、イベントの運営出演、ライブ活動などを行っていた。

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