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<井川町長>曽祖父から直系4代首長

秋田県井川町長に就任した斎藤氏

 2月15日投開票の秋田県井川町長選で初当選した斎藤多聞氏(33)は、旧上井河村長だった曽祖父、祖父、前井川町長の父に続いて首長となった。総務省や全国町村会は「前例があるか不明」というが、直系の4代が連なる首長は全国的にも珍しいとみられる。(秋田総局・上田敬)

 「結果的にそういう形になっただけで、4代目を意識することはない」。36年間、父があるじだった町長室で、人口約5000の町のトップに就いた多聞氏が言う。
 父・正寧氏は36歳で県議から町長に転じ、連続9期務めた。10選を目指したが、病気で立候補を断念。ことし1月に72歳で急逝した。2月の町長選は一転、選挙戦となり、大学卒業後、東京で団体職員だった多聞氏に白羽の矢が立った。
 斎藤家はかつて広い田畑を持ち「一目置かれる親方衆」(関係者)という家柄で、地域のまとめ役的な存在だった。とはいえ、政治に関して家訓があるわけでもなく「帝王学」を授けられたわけでもないという。
 生まれた時から町長の息子だった多聞氏は「小中学校の入学式や卒業式に父が来賓で座っているぐらいで、特別に意識したことはなかった」と話す。
 選挙戦は圧勝だった。多聞氏2122票、会社役員遠藤清孝氏(62)985票、農業伊藤譲氏(59)397票。町議を辞して出馬した2人に大差をつけた。
 遠藤氏は選挙戦で「政治家の家系ではなく、しがらみがない」と訴えたものの、「親は選べないし、決めるのは町民だから」と明確な世襲批判はしなかったという。
 ダブルスコア以上の圧勝の背景に何があったのか。元町議会議長で多聞氏陣営の幹部を務めた斎藤紀男氏(74)は、弔い合戦という要素があったと認めつつ「人口減や高齢化で農村は崩壊の危機。世襲批判よりも、30代の若さと世代交代への期待が上回ったのではないか」と分析する。
 4代目の首長誕生については、コメ作りをなりわいとしてきた地域性に触れ、「対立を好まない穏やかな気風があるからでは」と推し量った。
 町内では「他の町では考えられない」「同じ家が代々首長というのはいびつだ」との声もある。しかし、多聞氏を支持した地元県議は「親子で医者や教師という家はよくある。親の真っすぐな背中を見て育った結果だ」と反論する。
 ある国会議員秘書は「政治家の家系でも、何代かの間には周囲が支持できないという人が出てくる。首長になり得る器の人材が続けて出るのは珍しい」と感心してみせた。

◎斎藤家の歴代首長と在任期間

曽祖父・多十郎氏(旧上井河村長、3期)
 1910年7月17日〜19年8月21日
祖父・正作氏(同、1期)
 51年4月23日〜55年1月31日
父・正寧氏(井川町長、9期)
 79年3月1日〜2015年1月5日
多聞氏(同、1期目)
 15年2月17日〜
※74年に町制移行


2015年03月02日月曜日

関連ページ: 秋田 政治・行政

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