六本木ヒルズに入居している企業のうち、自分たちでオフィスの掃除をしていたのは楽天だけだった。
戦後の日本を作った偉人たちは、「謙虚であり続ける」という意味を本質から理解していた人たちが多かったと聞きますが、IT革命を通じて、数年で億万長者になる人たちが増えたり、欧米式の経営システムが導入されていく中で、日本人が従来から持っていた「謙虚さ」が少しずつ失われているような気がします。
少し胡散臭いかもしれませんが、禅の教えでは、人が敬遠しがちな仕事を率先して行うことを、「陰徳を積む」と呼び、修行の一つとも見なしていますが、「トイレ掃除」を率先して行うことは、その人の運命を長期的に左右すると多くの成功者が述べています。
↑禅の教えではトイレ掃除は立派な修行の一つ。(Jeremy Brooks)
トイレ掃除をすることは、「欲を解き放つ」効力があると言われており、1961年以来、もう50年以上、トイレ掃除を続けているイエローハットの創業者、鍵山秀三郎さんは、トイレ掃除を始めた理由について、次のようの述べています。
「いろいろな理由がありますが、大きな理由としては、ちょうど高度成長期に差しかかった頃で、社員の心が荒れていたんですね。カネを稼げればいい、今さえよければいい、自分だけよければいい、という風潮に世の中全体が急速に変わっていった。こうした社員の心を穏やかにするためには、まず職場環境をきれいにすることが大事だと思いました。」
↑トイレ掃除は「欲を解き放つ」効力がある。(RelaxingMusic)
松下幸之助さんはかつて、「自分の身の回りを掃除できない者が、天下国家を掃除できるわけがない。」と述べていましたが、東証1部に上場している日本電産という会社の新入社員は一年間、トイレ掃除を素手でやるという決まりがあるそうです。
さらに、日本電産は赤字会社で業績不振な企業ばかりを買収し、数年で黒字化させており、トイレ掃除が直接関係あるのかは分かりませんが、経営との因果関係が全くないとはとても言いきれません。
↑「自分の身の回りを掃除できない者が、天下国家を掃除できるわけがない。」(Sheila Y)
六本木ヒルズに入居している企業は、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長しているイメージがありますが、楽天が入居していた当時、オフィスの掃除を社員がやっていたのは楽天だけだったそうで、スキルがある人は自分の得意分野だけに集中することが美徳とされる外資系の企業の人たちが、トイレ掃除をしている姿はあまり想像できません。
楽天の三木谷さんは、「1日1%のわずかな改善であっても、1年続ければ元の37倍になる。」と述べており、かつてCNNのインタビューで、「楽天はグローバル企業ですか?」という問いに対して、「私は日本発のグローバル企業です。」と答えていました。
↑私は日本発のグローバル企業。(priceminister)
ビートたけしさんや星野仙一元監督、そして和田アキ子さんなども、トイレ掃除の大切さについて語っており、トイレ掃除はとにかく持続的に毎日やることが大切で、ある特定の日にまとめて行うとその効率は半減してしまうそうです。
「自分が出演すれば、くだらない番組でも視聴率が上がる。小説を出せば売れる。趣味でも絵を描けば絶賛される。映画を撮れば賞をもらう。だが、自分は人より才能があるとは思えない。なぜなんだろう? たったひとつだけ思い当たるのは、自分は他人と違って、トイレ掃除が好きなこと」(ツキを呼ぶトイレ掃除 P15)
↑自分は他人より才能があると思えない。オレの取り柄と言えばトイレ掃除が好きなことぐらい。eLENA tUBARO
昔からトイレが汚れていると婦人病にかかるとか、トイレ掃除をすると安産になるなど言われてきましたが、何か論理的には説明がつかない不思議な力がトイレ掃除にはあるようです。
こうなると、なぜトイレ掃除のオバちゃんはいつまでたっても成功を掴めないのかという話になりますが、トイレ掃除はお金をもらったり、指示されてやってもほとんど意味がなく、他人から聞かれるまで周りにも言わない方がよいと、「トイレ掃除を続けなさい。」の著者、田村孝さんは述べています。
トイレ掃除をすれば成功をするという科学的根拠はありませんが、イチローのように、誰にでもできることを、誰にもできないくらい、続けていくことがどの分野においても、確実な成功の定義なのかもしれません。