女性の部下にセクハラ発言を繰り返した男性社員2人を出勤停止にした懲戒処分は重すぎるか。これが争われた訴訟で最高裁は「処分は妥当」との判断を下した。
言葉によるセクハラ被害を正面から認定し、企業が毅然とした対応をすることを後押しする判決だ。セクハラがまかり通るようでは「女性の活躍」も絵に描いた餅となる。セクハラを許さない職場にする指針としたい。
「結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで」「夜の仕事とかしたらええやん」。1年以上にわたったセクハラ発言の一部だ。より露骨な性的表現もあった。最高裁は「強い不快感や嫌悪感、屈辱感を与えるもので、極めて不適切」などと指弾した。
とりわけ、女性側から明白な拒否がなかったことを、男性側に有利な事情と認めなかったことは大きい。人間関係の悪化などを心配して、抗議や会社への申し出をためらう人が少なくないからだ。
二審は、拒否がなかったことに加え、会社が事前に男性に警告をしていなかったことを重視し、処分を「無効」としていた。だが、セクハラは密室で行われ、周囲が把握しにくいことも多い。二審を破棄した最高裁の判断は、被害の実態を踏まえた妥当なものだ。
セクハラは被害者を傷つけ、苦しめるだけではない。職場の雰囲気や企業イメージにも悪影響を及ぼす。セクハラをなくすことは、働き手がより力を発揮しやすい環境整備につながる。
企業の取り組みを真に実効性のあるものにするためには、一人ひとりが意識を変えることが欠かせない。ともすれば言葉によるセクハラは、「体を触る」などに比べ軽く受け止められがちだが、そんな甘えはもはや通用しない。
大事なのは、セクハラの何が問題なのかをきちんと考えることだ。本質を理解しないまま必要なコミュニケーションまで減らしたり、形式的なやりとりに終始したりすることがあってはならないのは、言うまでもない。