<今週のキーワード>

currency swap line/agreement(通貨スワップ協定)

<例文>

China has an interest in the stability of the ruble as both countries have sought to reduce reliance on U.S. dollars in international transactions. China and Russia signed a three-year, 150 billion yuan ($24.1 billion) currency swap line in October. A spokesman for the Foreign Ministry said last week that the currency-swap agreement had gone ahead normally despite the ruble’s fall, adding that the countries’ economies remained highly complementary. China’s growing economy is a huge market for Russian natural-resources exports, including oil. (12月23日)

 中国もルーブルの安定化を図りたい考えがある。両国とも国際取引でのドルへの依存軽減を狙っているからだ。中国とロシアは10月に期間3年の1500億元(約2兆9000億円)の通貨スワップ協定を締結した。中国外務省の報道官は先週、ルーブル安にかかわらず通貨スワップ協定は通常通り実施されたとし、両国経済の補完性は引き続き極めて高いと述べた。成長を続ける中国経済は、ロシアの原油を含む天然資源にとって巨大な市場となっている。

【キーワード解説】

 2年前に朴槿恵氏が韓国大統領に就任以来、悪化を続ける日韓関係。北朝鮮の核問題への対処やアジア地域で覇権行動を強める中国をけん制するためにも両国関係の改善が不可欠と考え心配する米国にとって、その懸念を新たに確認させたのが、両国が「currency swap line/agreement=通貨スワップ協定」を延長せず、2月下旬に終了したことだ。

ルーブル硬貨 Agence France-Presse/Getty Images

通貨スワップ協定」は各国の中央銀行が、自国の通貨が急落し、貿易の決済や為替介入のために必要な外貨が不足するなどの危機に陥った際、相手国の通貨や基軸通貨ドルの外貨準備を一時的に融通し合う協定だ。

 アジアでは1997、98年のアジア金融危機後、再発防止のために東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓3国で二国間通貨スワップ協定のネットワークを作る「チェンマイ・イニシアティブ」が発足したほか、2008、09年の世界金融危機の後には、米連邦準備制度理事会(FRB)と主要国中央銀行の間で同協定が結ばれている。

 日韓の協定はチェンマイ・イニシアティブの一環として2001年から始まった。今回の終了について、日韓両当局とも金融経済情勢の判断の結果と表明しているが、両国のメディアとも関係悪化が影響したとみている。

 中央銀行間の資金を融通し合うこの「通貨スワップ協定」と名前が似ているものの、全く異なる金融機関、企業が行う「通貨スワップ=currency swap」がある。これは異なる通貨建ての債務の元利返済を2者が交換する取引だ。

 たとえば、A社が1億ドルで利息が年5%の債務を持っているが、ドルの変動リスクを避けたいと思っているとする。そこに1億ドルに相当する約120億円の円建てで年6%の債務を持っているが毎年の利払いを少なくしたいB社が現れたとする。

 A、B社間でそれぞれの債務を交換すれば、A社は金利は高くなるものの為替の変動リスクを避けられ、B社は為替変動リスクを負うものの金利支払いを軽減できる。そのため両社で異なる通貨の債務を交換するのがこの「通貨スワップ」。「通貨スワップ」と似た取引で「金利スワップ=interest rate swap」がある。これは同じ通貨建てで、金利の異なる債務を交換する取引を意味する。

【表現のツボ】

 日本人が間違いがちな「both」の使い方の復習。日本語ではある2つのモノや人を話題にして、それを受けて「その両方が」とか「その両者が」という言い方が普通にされるため、英語にするとつい「the both~」と訳してしまう。

 しかし、例文の「as both countries have sought…』とあるように「the」はつけない。文法的にいうと、bothもtheも「determiner(限定詞)」とよばれ、あるものを特定する働きを持つ単語だからだ。

 例文の場合は中国とロシアが既に前段で話題になっているが、「その両国」を「the both」とすると、日本語では「そのその両国」と2度限定する響きとなってしまう。theを使って言い換えるとすると「as the two countries have…」と「two」を使う。

【その他の表現】

reliance on ~:~への依存

go ahead:進行する、実施される

complementary:補完的な、相補う

<この表現が使われている記事>

中国、ロシア支援の意向を表明

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竹内猛(たけうち・たけし) フリー・ジャーナリスト兼翻訳業

 1980年より共同通信社の日本語記者として主に経済ニュースを取材。日本のバブル崩壊時に日銀・大蔵省担当を長く担当。米国のジョンズ・ホプキンズ大学高等国際関係大学院(米外交・国際経済学修士取得)を経て、1997年よりダウ・ジョーンズ経済通信で英文記者。東京支局で日本政治・経済のコラムニストを務め、ワシントン支局で国際通貨基金(IMF)などを担当。2004年より東京支局のマクロ経済・政治総括担当副支局長。2010年の退社後、日本翻訳連盟の日本語から英語への1級翻訳士に2011年合格(金融・証券分野)し、2012年に同連盟の翻訳試験の出題・検定委員。ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、国際金融機関の定期出版物などの翻訳と、このコラムの前身である「金融英語」欄を2011年6月より担当。

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