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 殺害された川崎市の市立中学1年の上村(うえむら)遼太さん(13)は、1月の冬休み明けから学校に姿を見せなくなった。「殴られた」。友人に発したSOSは、学校や周りの大人には届かなかった。

 「(思い当たる節は)全くございません」

 2月27日、上村さんが通う中学校の校長は、取材にそう答えた。ただ、遊び仲間が在籍していた学校に連絡を取ったことは昨年12月にあったという。担任が電話や家庭訪問をしたが、本人に会うことはできず、支援に関わることはできなかった。「欠席が続いた時に、もっと手立てがなかったか。反省をしていく点はある」

 「いつも笑顔で、超人気者」「クラスで仲良くない子はいなかった」。上村さんの同級生らは口々にそう話す。

 同学年の女子生徒は、上村さんが昼食のパン代を節約して、遊び仲間とよく行っていたゲームセンター代にあてていたのを覚えている。上村さんと無料通信アプリ「LINE(ライン)」でやりとりしていた同級生は「変な顔文字を使い、明るく振る舞っていた。みんなに心配をかけたくないからそうしていたのかも」と話した。

 川崎市は2001年、全国で初めて「子どもの権利条例」を施行した。子どもが「安心して生きる権利」の保障に市が努めると定められている。福田紀彦市長は「被害者が友達には出したSOSを、大人が受け止めてこられなかったことをしっかり受け止めていく」。学校などでどう防げたのか、どんな対応をしたのか検証する会議を3日に立ち上げる。

 トラブルを抱えているのに、言い出せない子どももいる。

 上村さんの遺体が見つかった多摩川河川敷。1日に訪れた東京都葛飾区の中学3年の男子生徒(15)は、遊び仲間のグループを抜けた経験がある。先輩に万引きを強要されたり、川に突き落とされたりしたからだ。抜けるときには殴られ、蹴られたという。「毎日、学校で呼び出されたが、親には言わなかった。自分は抜けられたけど、頼れる人には頼った方がいいと思う」

■「大事にされた経験、立ち直る力に」

 少年に歩み寄り、手をさしのべる存在となるのが、スクールソーシャルワーカー(SSW)だ。福祉や医療と学校現場をつなぎ、子どもが直面する問題の解決を探る。

 「一緒に勉強しよう」