さて皆さん、こんにちは。Jリーグ開幕もいよいよ間近ですが、本日は、ちょっとした数字遊びネタでお送りします。内容的には、タイトルの通り、「サッカーにおける各国の1試合あたりの平均得点のお話」でありんす。
実は、ここ数日ほど、主要国の一試合あたりの平均得点を調べており、実際に調べてみたら、面白い事がわかったので、本日はそれをネタにしてエントリ立てた次第です。興味のある方はおつきあいください。本当は、ゼロックスカップのレビューでもしようかと思ってたんですけどね、ゼロックスの試合内容がなんとも書きにくい内容だったので、こっちに変えました。ルールダービーもレビュー対象としては、なかなか興味深い試合でしたが、ドルのレビューはこないだやったばっかですし。
もともとは「セリエAは本当にゴールが少ないリーグなのか?」ってのを調べていたんですが、それで主要リーグの数字を調べて散布図作ったので、その紹介になります。
さて、話の前に、ちょっと本の紹介になりますが、
- 作者: クリス・アンダーゼン,デイビッド・サリー,児島修
- 出版社/メーカー: 辰巳出版
- 発売日: 2014/06/30
- メディア: 単行本
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こちらの「サッカーデータ革命」の紹介をしときます。このエントリの元ネタはこっちの本でして、こちらの本の「攻撃のイノベーションと防御のテクノロジー」の項目に、プレミアリーグ、ブンデス、セリエA、リーガの一試合あたりのゴール数のデータが載ってます。それをちょっとキャプして載せておきますが、
こうなっています。しばしば、「世界のサッカーはこんなに違う」というのがネタにされますが、「一試合あたりのゴール数」という視点で眺めると、実は、プレミア、リーガ、ブンデス、セリエAには大きな違いはありません。どこのリーグも一試合あたりのゴール数は2.5以上、3.0未満で、ここ15年間推移している事がわかります。
このデータで面白いのはプレミアの得点数の推移です。1960年代後半に急激に一試合あたりの得点数が落ちてるんです。この時期に何があったのかはよくわかりません。ちなみにプレミアで勝利のポイントが2から3に変更されるのは1970年代ですから、それは関係してません。
J1における一試合あたりのゴール数の推移
さて、まずはJリーグの話から入りましょう。Jリーグといえば、創生期にトルシエに「日本には守備の文化がない」とか言われたり、ピクシーに「来たばかりの頃はゾーンとマンツーマンの違いが正しく認識されていなかった(うろ覚え)」みたいな事言われてたリーグだったります。
で、実際どうだったのよ?という話になるんですが、Jリーグ公式サイトから「一試合あたりの平均得点数」のデータ取ってきて散布図作ると、
こーなります。このデータで面白いのは、2007年の断絶です。2007年以降、J1では、一試合あたりの得点数が3.0を上回る事がなくなったんです。これはイングランドで起きた事と良く似ているんですけど、ある時期を境に一試合あたりの得点数が3.0を超えなくなってるんですね。
J1ってのは、創生期、かなり点がはいりやすいリーグでした。一試合あたりの得点数が3.0を上回るシーズンが立て続けにあり2000年あたりまでは、かなり「ザル」な部類にはいる得点数でした。ただ、2007年以降は、逆に「欧州主要リーグ並に点が入らない」状態でして、ゴールは貴重になり続けています。
これがJ1における攻撃の質の低下によるものとするか、守備の質の上昇によるものとするかは議論があるでしょう。ただ、はっきりと言えるのは、2007年以降、J1では攻撃と守備の進歩はほぼ拮抗しており、大きな変動がなくなってきているという事です。
一応、J1においては、計算すると1年で0.03ずつゴールが減り続けている訳なんですが、他の主要国のリーグを見る限り、2.5以下に落ちることはまずないので、J1もある意味では成熟してきたと言えるのかもしれません。
例外的にフランスのリーグアンは一試合あたりのゴール数が2.3となっており、調べた限りでは、フランスのリーグアンが最小のリーグです。
セリエAにおける一試合あたりのゴール数の推移
さて、次いきましょう。イタリアのセリエAに話をうつします。よく、「セリエAは守備的でゴールがなかなか入らないリーグだ」と言われます。アンチェロッティなんかは著書でモロにそう発言してます。ただ、実際に調べてみると、そうでもないという事がわかります。
wikipediaで数字調べて、それで散布図作ったので載せておきますが
こうなります。これ、自分で作って驚いたんですけどね。
イタリアは、戦術的な話をすると、1980年代後半のサッキのミランの登場前と登場後で、大きな断絶があります。サッキのミラン前は、カテナチオのマンツーマン、5バックが主流でしたが、サッキのミラン後4バックのゾーンに切り替わってます。
で、なんですが、サッキのミランの登場後、イタリアでは一試合あたりの得点数が伸び続けてるんです。プレミア、J1、ブンデス、リーガを調べましたが、1980~2014の期間で、一試合あたりの得点数が上昇トレンドを持っていたのはセリエAのみです。
一体、何でこんな事が起きたのか、それはよくわかりません。ただ、はっきりしているのは5バックのマンツーマン、カテナチオやってた頃のほうが、イタリアでは点が入らなかったって所です。4バックのゾーン始めた頃から、イタリアはずーっと点が入りやすくなり続けています。実に興味深い。
でもって、現在なんですが、イタリアに関して言えば、「セリエAは守備的でゴールがなかなか入らないリーグ」というのは神話と言って良いと思います。というのも、2014-15シーズンでも、セリエは一試合当たりのゴール数が2.6となっており、これはプレミアやリーガと変わりません。ブンデスは2.8、リーグアンが2.3、エールが3.0、J1が2.53となっているので、エールやブンデスよりはマシだが、リーグアンのほうが点は入りにくい。そんな所です。
ぶっちゃけ、2014シーズンで比較すると、J1とセリエAは、一試合あたりの得点数は、ほとんど同じです。差は無いと言っていいレベルです。
イタリア人監督のコラムとか読んでると、彼らってセリエAは点が入りにくいリーグだと本気で思ってるようなんですが、数字的には、セリエAは「極めて普通に点が入る」リーグです。彼らは、他のリーグと比較したことがないだけだと思います。
そして、ゴールが貴重なのは、どこのリーグも変わりません。エールは例外でそうでもないみたいですけがね、一試合平均3ゴールみられる珍しいリーグですから。
ブンデスリーガにおける一試合あたりのゴール数の推移
次はブンデス行きましょうか。ここもデータ的になかなか興味深いんです。特にセリエと比較すると興味深い。
散布図載せますが、
こうなってます。まず、1980年代のブンデスはとんでもないザルリーグでして、この頃のブンデスはマンツーマンが主流だったんですけど、とにかく一試合あたりのゴール数が多かったんです。年間の数値が3.5のシーズンが3つあり、これはかなり酷い数値です。マンツーマン時代のほうが点が入らなかったセリエAとは対照的です。
そして、ブンデスの戦術上の転換期は90年代に入ってからで、90年代あたりからブンデスでもゾーンが導入され始めるんですけど、ブンデスではゾーンの導入以降、一試合あたりのゴール数が減り続けてるんですね。イタリアとは、この点で正反対の傾向を示しています。
ちなみにブンデスなんですけど、ここ10年ほどは一試合あたりのゴール数は2.8前後で安定しており、欧州主要リーグの中では、「比較的ゴールが多い」リーグになってます。他のリーグが2.6前後くらいなんで、若干点が入りやすいリーグです。
リーガにおける一試合あたりのゴール数の推移
最後にリーガ・エスパニョーラに行きましょう。散布図を作ったんですが、
こうなりました。「何とも言えない」という推移を見せておりますが、リーガについては、1980年代後半は点が入りにくいリーグでしたが、他のシーズンは、ほぼ2.5前後で推移してまして、ひじょ~に一試合あたりのゴール数が安定しているリーグです。ここ20年ほど、ほとんど変化がありません。
ここで、何がわかったのか?
まとめに。
「サッカーデータ革命」でも言及されているが、J1、そしてプレミア、セリエA、リーガ、ブンデスでは、一試合あたりのゴール数は大差ない。どのリーグも最終的に2.5以上、3.0未満に落ち着く。
例外は、フランスのリーグアン(2.3前後で安定)とオランダのエール(3.0以上になることがある)。
プレミアは1960年代後半に急激に得点数が減少しており、それ以前は3.5前後だったが、それ以降は2.6前後になった。原因は不明。一試合あたりの得点数が減った事は、その後、勝利の勝ち点が2から3に変更される原因の一つになる。
セリエAは、カテナチオ時代(マンツーマン)のほうが点が入りにくかった。だがゾーン導入以降、点が入りやすくなった。昨今、セリエAから「ワールドクラスのFW」が消えて久しいが、それでも一試合あたり2.6~2.8点は入っている。FWの質は間違いなく低下しているのに、一試合あたりの得点数が変わらないというのは、やっぱり(以下自粛
ドイツはマンツーマン時代は点が入りやすかったが、ゾーンになってから点が入りにくくなった。セリエAとは逆のトレンドが現れている。
リーガはここ20年ほど、一試合当たりのゴール数が極めて安定している。
J1は年を経るごとに点が入りにくくなっている。それがJ1において反則外人が取りにくくなったせいなのか、守備戦術の向上によるものなのかはわからない。両方なんだろうと思う。多分ね。
番外編 浦和は勝負弱いのか?
ゼロックスで浦和さんが、また「試合後半での失点」で負けたので、番外編でやっときます。
Jリーグ時間帯別失点 | 総得点 | 1~15 | 16~30 | 31~終 | 46~60 | 61~75 | 76-終了 | 延長前半 | 延長後半 | 76~終了の失点率 | |
J1 | ベガルタ仙台 | 315 | 28 | 44 | 49(4) | 50 | 55 | 84 | 2(0) | 3(0) | 0.2666666667 |
J1 | モンテディオ山形 | 146 | 19 | 22 | 33(2) | 24 | 18 | 30 | 0(0) | 0(0) | 0.2054794521 |
J1 | 鹿島アントラーズ | 609 | 65 | 80 | 100(3) | 101 | 108 | 145 | 5(0) | 5(0) | 0.2380952381 |
J1 | 浦和レッズ | 615 | 90 | 91 | 76(6) | 91 | 98 | 154 | 10(0) | 5(0) | 0.2504065041 |
J1 | 大宮アルディージャ | 483 | 71 | 62 | 69(6) | 89 | 80 | 112 | 0(0) | 0(0) | 0.231884058 |
J1 | ジェフユナイテッド千葉 | 549 | 52 | 84 | 97(0) | 89 | 97 | 117 | 7(0) | 6(0) | 0.2131147541 |
J1 | 柏レイソル | 635 | 89 | 69 | 109(6) | 98 | 107 | 156 | 6(0) | 1(0) | 0.2456692913 |
J1 | FC東京 | 619 | 71 | 84 | 82(4) | 108 | 112 | 156 | 3(0) | 3(0) | 0.2520193861 |
J1 | 東京ヴェルディ | 413 | 56 | 50 | 60(0) | 57 | 72 | 106 | 6(0) | 6(0) | 0.2566585956 |
J1 | 川崎フロンターレ | 532 | 59 | 66 | 83(5) | 95 | 102 | 127 | 0(0) | 0(0) | 0.2387218045 |
J1 | 横浜F・マリノス | 573 | 67 | 76 | 103(1) | 92 | 86 | 140 | 7(0) | 2(0) | 0.2443280977 |
J1 | 横浜FC | 66 | 6 | 8 | 16(0) | 5 | 14 | 17 | 0(0) | 0(0) | 0.2575757576 |
J1 | 湘南ベルマーレ | 216 | 26 | 26 | 42(1) | 28 | 42 | 49 | 2(0) | 1(0) | 0.2268518519 |
J1 | ヴァンフォーレ甲府 | 264 | 31 | 45 | 37(4) | 47 | 45 | 59 | 0(0) | 0(0) | 0.2234848485 |
J1 | アルビレックス新潟 | 512 | 58 | 63 | 93(1) | 68 | 98 | 132 | 0(0) | 0(0) | 0.2578125 |
J1 | 清水エスパルス | 723 | 83 | 79 | 116(4) | 111 | 131 | 196 | 5(0) | 2(0) | 0.2710926694 |
J1 | ジュビロ磐田 | 676 | 77 | 91 | 80(3) | 123 | 122 | 175 | 5(0) | 3(0) | 0.2588757396 |
J1 | 名古屋グランパス | 698 | 76 | 87 | 121(7) | 106 | 127 | 170 | 7(0) | 4(0) | 0.2435530086 |
J1 | 京都サンガF.C. | 453 | 45 | 59 | 72(0) | 83 | 76 | 108 | 7(0) | 3(0) | 0.238410596 |
J1 | ガンバ大阪 | 690 | 86 | 86 | 102(6) | 103 | 121 | 180 | 9(0) | 3(0) | 0.2608695652 |
J1 | セレッソ大阪 | 612 | 70 | 86 | 87(2) | 91 | 123 | 150 | 2(0) | 3(0) | 0.2450980392 |
J1 | ヴィッセル神戸 | 699 | 78 | 91 | 123(7) | 106 | 128 | 157 | 8(0) | 8(0) | 0.2246065808 |
J1 | サンフレッチェ広島 | 632 | 54 | 72 | 93(6) | 105 | 139 | 155 | 9(0) | 5(0) | 0.2452531646 |
J1 | 徳島ヴォルティス | 74 | 10 | 10 | 16(1) | 11 | 11 | 16 | 0(0) | 0(0) | 0.2162162162 |
J1 | アビスパ福岡 | 294 | 32 | 37 | 52(3) | 46 | 55 | 61 | 7(0) | 4(0) | 0.2074829932 |
J1 | サガン鳥栖 | 135 | 8 | 21 | 16(4) | 20 | 27 | 43 | 0(0) | 0(0) | 0.3185185185 |
J1 | 大分トリニータ | 377 | 36 | 46 | 74(1) | 66 | 63 | 92 | 0(0) | 0(0) | 0.2440318302 |
これは公式サイトから数字ひっぱてきた奴です。オールタイムだと、浦和さんは別に「試合終了直前の失点が多いチーム」って訳じゃありやせん。試合終了直前の失点が多いチームってのは、実は鳥栖さんです。鳥栖さんが勝負弱いってイメージがないのは、鳥栖さんの場合、J1で先制点とった試合では大概勝ってるからです。
ちなみに、2014年だと、
J1 時間帯別(失点)(2014) | ||||||||
総失点 | 1-15分 | 16-30分 | 31-前終 | 46-60分 | 61-75分 | 76-終了 | 76~終了の失点率 | |
仙台 | 50 | 3 | 5 | 11(2) | 7 | 11 | 13 | 0.26 |
鹿島 | 39 | 2 | 6 | 7(1) | 8 | 9 | 7 | 0.1794871795 |
浦和 | 32 | 5 | 5 | 3(0) | 2 | 7 | 10 | 0.3125 |
大宮 | 60 | 7 | 13 | 5(0) | 14 | 8 | 13 | 0.2166666667 |
柏 | 40 | 3 | 9 | 7(2) | 6 | 9 | 6 | 0.15 |
F東京 | 33 | 3 | 3 | 5(1) | 8 | 6 | 8 | 0.2424242424 |
川崎 | 43 | 5 | 7 | 6(1) | 6 | 6 | 13 | 0.3023255814 |
横浜M | 29 | 2 | 2 | 9(0) | 5 | 3 | 8 | 0.275862069 |
甲府 | 31 | 5 | 8 | 3(1) | 8 | 4 | 3 | 0.0967741935 |
新潟 | 36 | 4 | 4 | 7(0) | 5 | 8 | 8 | 0.2222222222 |
清水 | 60 | 11 | 8 | 10(1) | 9 | 10 | 12 | 0.2 |
名古屋 | 48 | 7 | 7 | 3(0) | 7 | 10 | 14 | 0.2916666667 |
G大阪 | 31 | 6 | 2 | 4(1) | 2 | 7 | 10 | 0.3225806452 |
C大阪 | 48 | 6 | 5 | 6(1) | 6 | 10 | 15 | 0.3125 |
神戸 | 50 | 4 | 10 | 10(3) | 8 | 9 | 9 | 0.18 |
広島 | 37 | 6 | 6 | 4(1) | 5 | 7 | 9 | 0.2432432432 |
徳島 | 74 | 10 | 10 | 16(1) | 11 | 11 | 16 | 0.2162162162 |
鳥栖 | 33 | 1 | 3 | 4(1) | 6 | 7 | 12 | 0.3636363636 |
こーなります。2014に限っては、浦和さん、悪い数字ですね。終了間際の失点が30%を超しております。ただ、ガンバや鳥栖も超してますので、「勝負弱い」ってイメージは、ガンバと鳥栖が先制した試合の8割強勝ってるのに対して、浦和は6割強しか勝てなかったせいだと思います。
ミシャが就任してからの浦和さん、先制した場合の勝率は0.672、前半リード時は0.750となってます。通算データだと、浦和の先制した場合の勝率は0.748ですんで、悪いといえば悪いですが、この数字については、運次第な所もありますから何とも言えません。
去年はガンバに逆転優勝食らってますが、去年のガンバは先制した場合の勝率0.850、前半リード時0.909っていう頭おかしい数字なので、継続不可能な数字です。ガンバは通算では先制した場合の勝率0.716です。昨シーズンほどの数字は出せないと思いますよマジに。
なので、これは、そんな悲観する必要はありません。(と、開幕戦、湘南は浦和さんとやるんですが、ACLから中二日+長距離移動という状況なんで、ワンチャンあると思っている湘南サポは申しておりましたとさ。
ではでは