思わず投資したくなる有望な株を見つけるには、その企業がどのようなビジョンを描き、実行しているかを見るべきですし、それ以前に世の中がどう変わっているのかを把握しなければなりません。
2020年夏季オリンピックとパラリンピックの開催地区が東京に決定しました。国内株式市場にとって、中長期的に大きなプラス材料が出現したことは非常にポジティブであり、オリンピックが日本経済を復活させる後押しとなるでしょう。
オリンピック開催に向けて実施されるインフラ整備に加え、より多くの外国人観光客の誘致といった政策テーマは、広範囲にわたる経済波及効果を生み出す原動力となります。スポーツ祭典都市に生まれ変わる東京に数多くのビジネスチャンスが訪れると見込まれます。
開催までの7年の間に選手村・競技場の整備を中心とした建設需要の増加が期待されます。東京誘致委員会の開催計画書によると、選手村、水泳会場、バドミントン、バスケットボール会場など、臨海部を中心とした20カ所で関連施設が整備される計画。
新国立競技場に関しては、競技場本体の建設費は1400億円前後になる見通し。建設や不動産を中心とした企業にとって業績を拡大させる機会が到来します。
オリンピックに直接かかわる施設の建設以外でも、様々なインフラ整備や民間建設需要が生まれることでしょう。
また、外国人旅行者を呼び寄せるだけの観光コンテンツを日本は豊富に持っています。東京五輪の開催は、外国人旅行者の獲得に大きなフォローの風になります。
五輪オリンピックに向けて伸びる企業
大成建設(1801)
大手ゼネコンの一角。技術力の高さで定評のある企業。
全受注に占める首都圏の比率が約6割と同業他社と比較して高い大成建設は注目できます。
同社の山内社長は東京オリンピックの開催を「建設業界にとっては技術革新に挑む好機」と指摘。
TOA(6809)
TOAは、防犯カメラや非常用放送設備などの防犯・防災システム、公共空間や空港、大型商業施設向けの放送システムを扱っています。同社の防犯・防災システムなどは北京オリンピックや長野オリンピックでの採用実績があり、2020年の東京オリンピックでの採用が期待されます。
一休(2450)
2013年以降、高価格帯の高級ホテルの開業が相次ぐ見通しとなっています。一休は、高級ホテルやレストランの予約サイトを運営する企業で、主要事業である宿泊予約は、会員数の順調な伸びを背景に取扱い室数が増加しています。ホテル・旅館の高級志向が強まっており、宿泊の平均単価が上昇していることは同社業績にポジティブな影響をもたらしています。
関電工(1942)
国都交通省は2020年開催の東京オリンピック開催までに、電柱をなくすことを検討しています。電線を地中化し、渋谷区、港区など19区で国道や都道の無電柱化率を現状の80%から100%に引き上げる計画。海外に比べ遅れている無電柱化を進め、防災の強化や景観の改善を図る。関連工事の受注が期待されます。
東鉄工業(1835)
建設関連工事に強み。売り上げの8割がJR東日本向け。JR東日本は2012年からの5年間で総額3000億円の耐震補強工事を計画しており、首都圏に2300億円を割り当てる。東鉄工業は首都圏のシェアが約5割と高く、大型の受注獲得が期待されます。
ショートボンドホールディングス(1414)
橋梁・道路・トンネルなどのコンクリート構造物補修工事の最大手。社会インフラの老朽化に従い、補修工事や耐震補強工事の需要は、中長期的な拡大が見込まれます。
ピーエス三菱(1871)
プレストコンクリート橋梁工事で業界トップクラス。橋梁の維持補修工事を得意としています。津波対策として、柱や梁にPCを活用した津波避難タワーを開発。従来の鉄鋼製と比べて維持費用が抑えられるのが特徴。
エイチ・アイ・エス(9603)
格安航空券のパイオニア。タイに続きインドネシアに大型旗艦店を拡張オープンし、現地客の旅行手配を強化。また2013年にチャーター便の運航を開始し、東南アジアと世界各国を結ぶチャーター路線を運航。財団法人航空機化開発協会の「航空輸送の推移と現状」によると、世界の航空旅客数は増加傾向をたどっています。
オリエンタルランド(4661)
国内最大のテーマパークである「東京ディズニーリゾート」を運営。訪日外国人旅行者の増加は、アジアからの観光客を中心に海外ゲストの獲得につながると見られます。パーク内の外国語の表記を充実させるだけではなく、文化面を理解した受け入れ態勢を整えていくとしています。
ここまで10の会社を紹介してきましたが、これらの会社が数年後も輝き続ける会社であることは仮説のもとに導いた結論です。仮説なので、それが成立しえないこともあります。予想とは常に外れる可能性があるもので、為替も株価も外部要因によっていくらでも変動します。
ところが絶対に外れようのない予測もあります。万が一東京オリンピックの開催が中止になったとしても、これだけは100%当たると言えることがあります。
それは、ますます少子高齢化が進むということです。
人の容姿をしたロボットが人の介護を一手に引き受ける世界が訪れるまでには、もう少し時を経る必要があるかもしれませんが、2020には様々なタイプのロボット介護機器が介護の現場で広く活用されているでしょう。すでに日本の産業用のロボット技術は世界最高水準であり、介護を含めたサービスロボット開発の素地を備えています。そこに高齢化による介護需要の急拡大と政策面での支援が加わることで、介護ロボットの開発・普及は今後急速に進むことが予想されます。
2020年には2.9兆円、2035年には9.7兆円にまで拡大する見通しであり、なかでも介護を含めたサービス分野の伸びが期待されています。
介護ロボット市場が拡大すれば、ロボット製造自体を手がける機械メーカーを筆頭に、電子部品や半導体、ソフトウェアを開発する企業、素材メーカーなど幅広い分野への恩恵が期待されます。
超高齢社会で伸びる企業
安川電機(6506)
世界有数の産業用ロボットメーカー。中期経営計画で、産業用ロボットを中核としながら、より人に近い分野で人と共存するロボット市場を創造する方針を発表。整形疾患や脳疾患などのリハビリや介護支援で使用される機器などの市場をターゲットにしています。
住友理工(5191)
自動車部品として使われる防振ゴムなどの製造・販売を行うメーカー。産業用ロボットとは異なり、人が触れても痛くないことが求められる介護ロボットの分野では、柔らかい感触が得られる素材の開発が不可欠。同社が独自開発したオールゴムの触覚センサーを活用して、様々な介護機器・ロボットを開発しています。
大和ハウス工業(1925)
1989年にシルバーエイジ研究所を開設して以来、多くの高齢者施設を建設。2011年にはセラピー用アザラシ型ロボット「パロ」、2012年9月には自動排泄処理ロボット「マインレット爽」の取り扱いを開始するなど、介護ロボット事業を積極的に展開しています。
突然20代の若者が増えるはずもなく、2035年までに人口の3割が65歳以上の高齢者になるという予測は、間違いなく当たります。そもそも現時点で、人口の4人に1人が高齢者です。
高齢化が進み、また一方で少子化が進むということは労働力人口が減るということです。
また、一人暮らしも増えていきます。
一人暮らしの多い高齢化社会での需要が膨らみそうな企業は伸びます。すぐに思い浮かぶのは介護・医療系ですが、それ以外にも有望な企業はあります。
また、人手が減っても今の仕事量をカバーできる省力化に貢献する企業も伸びます。一方で、どれだけ効率を改善しても大量の労働力を必要とする企業は、存続のために相当な努力が必要です。もちろん、そういった状況にあっても人材を確保し続けられる企業は伸びていきます。
コシダカホールディングス(2157)
「カラオケ本舗まねきねこ」を中心に展開するカラオケ事業、女性専用のフィットネスクラブを展開するカーブス事業、日帰り温浴施設を展開する温浴事業が事業の柱。フィットネスクラブのカーブスは、会員の8割以上を50代以上が占めており、アクティブシニアの取り込みに成功しています。他のカラオケ事業、温浴事業もシニア層が重要なターゲット顧客であり、高齢化の進展によるマーケットの拡大による恩恵が期待されます。
リゾートトラスト(4681)
会員制リゾートホテル首位。育成中のメディカル・シニアライフ事業では、高齢・富裕層の多い既存のリゾート会員からの需要を取り込んでいます。介護付きシニア向け住宅の運営にも乗り出すなど、リゾートホテル事業を軸に据えながら、高齢化や健康志向の高まりという利用者の変化に対応して周辺領域に事業を拡大。
医療分野では、2012年の山中伸弥教授のノーベル賞受賞により脚光を浴びた再生医療、さらには遺伝子治療の技術進展により拡大しているオーダーメイド医療など、画一的な医療行為とは別に、遺伝子解析の結果をもとに治療を行うことで、付加価値の高いビジネスとなる可能性があります。
2020年に向けて市場拡大が期待でき、株式市場にもプラス材料が想定される企業を紹介していきます。
ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(7774)
自家培養の表皮、軟骨、角膜上皮などの再生医療製品の開発、製造販売を手がける。2007年、時価培養表皮「ジェイス」の製造販売承認を取得。2009年にはジェイスが再生医療製品で初の保険収載の適用となりました。加えて自家培養軟骨「ジャック」の製造販売承認を2012年に取得。今後は自家培養上皮の製造承認に向けて研究開発を進める方針。
テルモ(4543)
医療機器と医薬品の総合メーカー。優れた体温計の国産化を目的に設立された会社です。現在では、グローバルで二桁成長を続けるカテーテルなど、心臓や血管領域の商品で高い世界シェアを持っています。高齢化が進めば、ニーズはさらに大きくなることが予測されます。
中外製薬(4519)
グローバル製薬メーカーのロシュ・グループの傘下にある大手製薬メーカー。ガン、腎、骨、関節などの分野に注力しています。特にガン領域は国内売上高の5割を占める主力事業です。同社のガン領域における新薬候補のうち、大半がオーダーメイド医療を目指しており、今後の製品化が期待されます。
テラ(2191)
東京大学医科学研究所発のバイオベンチャー。免疫細胞療法のひとつである「樹状細胞ワクチン療法」の技術を基盤に設立された。同社は優れた抗原になる「WT1ペプチド」という世界で認められたワクチン特許を有するなどの強みを持っています。
ユーグレナ(2913)
社名の由来ともなったユーグレナ(ミドリムシ)の大量培養技術が強み。ユーグレナを活用した食品や化粧品の生産販売が事業の柱。バイオジェット燃料の開発に注力しており、沖縄県石垣島に実証プラントと研究所を設立。JXホールディングスや日立プラントテクノロジーと共同で2020年の実用化を目指しています。
日本の企業は競争力を失い、国としての力も弱くなったと言われています。確かに半導体や家電業界では、韓国・中国勢に押され、2010年には中国の国内総生産が日本のそれを超え、世界第二位の経済大国の座を中国に明け渡しました。しかし、言うまでもなく日本の全ての企業が中国に負けたわけではありませんし、国全体が不景気であっても、成長する会社もあります。では、どういった企業が成長するかというと、時代の変化に適応できる企業なのです。
生き残るのは、最も強い種ではない。最も賢い種でもない。変化に最も敏感に反応できる種である。
チャールズ・ロバート・ダーウィン
※株式投資はくれぐれも投資家ご自身の判断と責任に基づいて行ってください。
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