安全保障法制をめぐる与党協議のテーマが拡散している。

 主だった論点でも、集団的自衛権と存立事態▼周辺事態法の抜本改正▼他国軍への後方支援をめぐる恒久法の是非▼武力攻撃に至らないグレーゾーン事態▼武器使用基準の見直し▼国連決議の有無や国会の関与▼邦人救出のための自衛隊派遣――など多岐にわたる。

 ずいぶんと風呂敷を広げたものだ。議論の焦点が定まらないまま、政府・自民党は次々に、自衛隊の活動の歯止めを弱める提案を繰り出している。

 日本の安全保障のあり方と、自衛隊員の命にかかわる重要な議論である。与党協議は3月末までの結論を目指しているが、自衛隊のしばりを解こうとする自民党と、歯止めをかけたい公明党には溝がある。

 合意を急いでも、つじつま合わせになりかねない。拙速は避けなければならない。

 たとえば周辺事態法。公明党はこの法律を残して、地理的な歯止めをかけようとした。そのほかの事態にあたっては、かつてのテロ特措法やイラク特措法のように、その都度、時限立法で対処する考え方だ。

 これに対し、事態が発生する前にあらかじめ自衛隊の活動を定めておくのが恒久法である。政府は周辺事態法から「周辺」という概念をなくし、地理的な制約をはずそうとしているが、そうなると恒久法との違いが不鮮明になってくる。

 そもそも、恒久法はどんな事態を想定してつくるのか。過去にも、いくたびか必要論が浮かんだが、議論が深まるにつれて慎重論が強まり、法制化を見送ってきた経緯がある。

 積極派はすばやく自衛隊を派遣できる利点を強調する。しかしハードルが下がれば、時の政府の判断次第でどこへでも派遣されかねない。人員や装備、予算が拡大し、本土防衛への影響が出ることを危ぶむ声もある。

 後方支援の中身も、これまでに比べ、格段に危険になっている。「非戦闘地域」に限っていたのを、昨年7月の閣議決定で「現に戦闘の行われていない地域」に広げたためだ。そのとき戦闘がなければ派遣が可能となるが、状況が変われば、現場の部隊の判断で活動の休止・中断を決めなければならない。

 戦後70年、平和憲法のもとで国際紛争と一定の距離を保ってきた安全保障政策には意味がある。一気に安全弁を取り払い、紛争への関与を深めることが正しい道なのか。与野党、そして幅広い国民の合意なしに進められることではない。