【ベルリン=赤川省吾、ブリュッセル=御調昌邦】ドイツの連邦議会(下院)は27日、ギリシャへの金融支援を4カ月延長する案を賛成多数で承認した。ドイツ以外の国の手続きも受け、ユーロ圏は同日、支援延長を正式に決定した。ギリシャ問題を巡る同国と欧州連合(EU)の攻防はひとまず収束するが、4月末に向けて再び激しい攻防が繰り広げられる可能性がある。
ドイツやエストニアなど一部の国ではギリシャ支援の延長について国会承認が必要となっていた。EUでは24日にユーロ圏の財務相らが電話協議を実施し、延長で合意している。
最大の焦点だったドイツ連邦議会では542票の賛成票に対し、反対が32票、棄権が13票だった。メルケル政権を支える二大政党のほか、欧州統合に積極的な緑の党など大半の野党議員も賛成に回った。
ショイブレ独財務相は採決に先だって議会で演説し、「欧州が結束できるように、あらゆる手段を講じるべきだ」と主張した。「欧州は運命共同体」とも語り、ギリシャを失えば欧州の未来が揺らぐと訴えた。
すんなりとギリシャの支援延長が決まったかのように見えるが、ドイツ政界に不満はくすぶる。特にメルケル首相が率いる保守系のキリスト教民主同盟(CDU)で批判が強い。改革に後ろ向きなギリシャのチプラス政権を支えるのはドイツの納税者に説明がつかないという理屈からだ。
ショイブレ財務相も、そこは意識している。「ギリシャの信頼はかなり失われた」とも話し、EUに公約した改革案を順守するようにクギを刺した。
ドイツなどの議会承認を受け、EUのギリシャ支援の主体で、ユーロ圏19カ国で構成する「欧州金融安定基金(EFSF)」は27日午後、ギリシャ向け金融支援の4カ月延長を正式に決定した。EFSFの責任者であるレグリング氏は声明で「今回の決定は重要な中間的なステップだ」と指摘した。
火種は残る。EUとギリシャは4月末までに同国の財政構造改革案の詳細について合意することになっている。ギリシャはEUに改革の1次案を提出し、了承を受けているが、中身が非常に曖昧であることは否めない。
EUと共にギリシャを支援している国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は書簡で同改革案について「概して明確ではない」と指摘した。年金、付加価値税(消費税に相当)、行政改革など多くの分野について具体化が必要との認識を示した。EUも4月末に向け、必要な法的措置や財政面の影響を含む具体的な内容を要求するとみられる。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は25日、2月上旬に停止した信用力の低いギリシャ国債を担保とした資金供給の特例を復活させる可能性に言及した。ギリシャの改革姿勢などを見極める方針も強調した。
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