私は春樹さんの作品の読書会に参加して4年と数カ月になります。長編、短編、紀行文、翻訳ものなど、ほぼすべての作品を網羅したと思います。未だに飽きることなく発見があるのは、これはいったい何なのでしょう??
昨秋の事、初期の短編『中国行きのスロウ・ボート』(中公文庫)と、最後のページ記載の初出発表誌「海」80年4月号を図書館で借り、読み比べました。かなりの違いを発見し、一同大満足でした。これに味をしめ「午後の最後の芝生」もやってみよう! とメンバーの一人が前述文庫本最後に記載の「宝島」82年8月号を取り寄せ、ページを繰れども繰れども……ない!
そこから私たちの「宝島をめぐる冒険」が始まりました。
悪戦苦闘をした上で、思い出したのが加藤典洋氏の『村上春樹の短編を英語で読む』に掲載の全作品のリスト。なんと9月号ではありませんか!すぐに近隣の図書館に問合せましたが、所蔵無しの返事。すがる思いで国会図書館に問合せやっと手に入れたのでした。ところが大きな違いはなく、表紙のポップなイラストに時代を感じた「宝島をめぐる冒険」は一件落着しました。
そこで、質問です。その後文庫本の誤った記載は訂正されたのでしょうか?
私が持っているものは改版21刷発行です。この誤りを発見したのが私たちが最初だったらうれしいな、と思っています。
(ハルキガールズ No.001、女性、64歳、主婦)
それはどうもすみませんでした。数字を間違えてはいけないと、担当編集者に伝えておきますね。ご迷惑をおかけしました。しかし「午後の最後の芝生」って、どの短編集に入ってましたっけね? 思い出せないな。そうか、あれは「宝島」に書いたんだ。すっかり忘れていました。あの頃の「宝島」はなかなか素敵な雑誌でした。あの話は僕が店をやめて、習志野に住んでいたときに書いたものです。走り始めたころです。まだ三十代の初めでした。うちの前庭に芝生が生えていて、それをよくはさみで刈っていました。芝生を刈りながら、「そうだ、芝生を刈る話を書こう」と思いついたんです。あのアル中気味のおばさんにもモデルがいます。
雑誌に載せたヴァージョンと、単行本に入れたヴァージョンは少し違っています。単行本に入れたヴァージョンと、全集に入れたヴァージョンも少し違っていると思います。初期のものにはあとから少しずつ手を入れていますので。
村上春樹拝
【中公文庫編集部より】
中公文庫をご愛読下さりありがとうございます。「午後の最後の芝生」の初出掲載号について、〈「宝島」82年8月〉とあるのは正しくは9月号でした。編集部の確認ミスによる誤記です。申し訳ありません。ご指摘をどうもありがとうございました。重版の際に訂正いたします。
【新潮社出版部より】
中公文庫同様に、単行本の短編アンソロジー『象の消滅』(新潮社・2005年3月刊)の初出表記も誤記となっております。原本を訂正し、重版に反映いたします。ご指摘に感謝いたします。