130兆円の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の改革に不透明感が強まってきた。
政府は独立行政法人を特殊法人に改組し、理事長に権限が集中する現在の組織を、専門家の合議によって運用方針を決める形態へと変える意向だ。しかし、組織の具体的なあり方などに関する意見のとりまとめが遅れているため、今国会への関連法案の提出は見送られる方向だという。
信頼できる組織の構築は、公的な年金制度を維持していくうえで欠かせない前提となる。政府は組織改正に向けた意見集約などの作業を急いでほしい。
GPIF改革のもとになっているのは、大学教授などで構成する有識者会議が2013年11月に発表した提言だ。大きな柱は国債中心の運用内容の見直しと、受託者責任を果たすために政治からの独立性が高い組織をつくることだ。
運用の見直しは昨年10月に実施し、国内債券の運用比率の目安を60%から35%に引き下げた一方、国内株式は12%から25%へと引き上げた。
GPIFの積立金の原資は、国民が納める保険料だ。運用収益が上がる可能性もあるが損失リスクも高い資産での運用を増やすなら、それに適した組織づくりも並行して進めなければならない。
現状では金融関係者などから成る委員会が理事長に運用を提案しているが、決定の権限は理事長に集中する。しかし、資産運用のリスクは景気や国際情勢など多岐にわたる。受託者責任を果たすには、運用の知見を持つ人材を幅広く募り、合議制で運用の戦略などを決めるほうが国民の安心感は高いと考えられる。
GPIFは資金量の大きさから株式市場でクジラにたとえられ、運用内容の変更が株価に大きな影響を与えるようになっている。それだけに、組織の運営や運用方針の策定にあたっては、国民への説明責任や透明性の高さが最も重視されるべきである。