「店がどうなってもいいのか!」
バイトに過剰な責任を転嫁する困った大人たち
ブラックバイトユニオンに寄せられた相談を見てみると、個人商店や中小企業だけでなく、れっきとした大企業が関わっているケースも少なくない。たとえば、滋賀県某所にあるセブン-イレブンのフランチャイズ店の学生バイトからは、「季節商品の販売ノルマを課され、達成できないと買い取りを強要される」という相談がきた。
たとえばおでん。この学生は、パックに入った配達用のおでんを100個販売しろと言われ、達成できなかった。「お前、どうすればいいか分かってるだろうな」。店長からこう迫られて自腹で購入。しばらく毎日、おでんばかりを食べる日々を送ったという。
おでんだけではない。クリスマスケーキやおせち料理、お歳暮、恵方巻き、ひなまつりやこどもの日の関連商品など、季節商品は販売期間が限られており、ノルマを課されやすい。「特にきつかったのはおせち料理。値段が高いからクリスマスケーキより辛かった」。
前述の学習塾のように、書類で学生を縛るケースもあれば、パワハラ的な暴言で心を縛るケースもある。辞めようとすると「店がどうなってもいいのか」「社会人として失格だ」など、罪悪感を植え付ける発言をするのだ。
こうした発言の背景には「正社員が削減され、代わりに学生バイトに過度に依存して経営を成り立たせている企業が増えている」(坂倉氏)ことが挙げられる。ひと昔前のバイトと言えば、レジ打ちや接客、書類整理などの簡単な作業が多かったが、今や状況は様変わりだ。
たとえば、小売店の生命線とも言える商品発注。どの商品を何個発注するかは、過去の販売データや季節イベント、消費トレンドなどに鑑みて決定しなければならない難易度の高い業務だが、これを学生バイトに押し付けたあげく、売れ残ると「ちゃんと考えて発注しろ」と怒鳴るコンビニオーナーがいる。ほかにも、金庫のカネの管理やバイトのシフト管理、顧客からのクレーム対応など、正社員がすべき仕事を学生バイトにやらせているのだ。
学生バイトに大きな責任を負わせていれば、辞められて困るのは当然のこと。かくして、学生バイトに過度に依存し、辞めさせまいとあの手この手で引き止める、ブラックバイトの現場が生まれるのだ。