会議にさらに重みを加えたのが国連の関与である。北朝鮮の日本人拉致を含む大規模な人権弾圧を調査し、「人道に対する罪」だと総括した「国連北朝鮮人権調査委員会」(COI)のマイケル・カービー委員長、同次席のマルズキ・ダルスマン氏、同委員のソンジャ・ビセルコ氏の3人が会議に参加して、それぞれ演説し、質疑応答にも加わったのである。この3人には米韓両国から感謝状が贈られた。
COIは2014年3月に北朝鮮の人権弾圧に関する詳細かつ長大な報告書を発表した。日本人拉致についても、横田めぐみさんや田口八重子さんの具体例を挙げて、北朝鮮の犯行を非難したのだった。報告書は、北朝鮮の金正恩第一書記の責任までを問い、日本人被害者たちの早期の全員解放を求めていた。だからその報告書発表からほぼ1年経って、国連のカービー氏らが出てくる会議が開かれたことは、日本にとって重大な意味が存在するのである。
しかもこの会議に出席した米国と韓国側の出席者たちも特別な面々だった。登壇して発言した人たちはちょうど30人である。
米国側からは、オバマ政権代表としてロバート・キング米国務省北朝鮮人権特使、カート・キャンベル元国務省東アジア太平洋担当次官補らが出てきて演説をした。また、ブッシュ前政権の国家安全保障会議でそれぞれ朝鮮半島と日本を担当したビクター・チャ氏、マイケル・グリーン氏もCSIS代表をも兼ねて参加し、活発に意見を述べた。さらに、米国の民間の「北朝鮮人権委員会」や「ハドソン研究所」「ブルッキングス研究所」の代表も討論者として壇上に並び、発言した。
一方、韓国側からは、朴政権の代表の形で李政勲政府人権大使、金文洙セヌリ党保守革新委員長らが出席した。延世大学の学者や月刊朝鮮の編集長だった保守の論客の趙甲済氏もパネリストとして登壇した。さらに北朝鮮の内部を知る脱北者の代表たちも参加して、政治犯収容所での虐待や北朝鮮から中国に逃れた難民女性たちへの迫害の実態を生々しく証言した。
影も形もなかった日本の主張
前述したように会議の主要テーマは、金正恩政権による北朝鮮国民への非人道的な弾圧である。そのなかで日本人拉致の問題も再三提起された。
特に国連調査委員会のメンバーだったカービー、ダルスマン、ビセルコの3氏はそれぞれ「北朝鮮は拉致した日本人多数をいますぐ解放する責務がある」と強く主張した。米韓両国の参加者のなかからも、北朝鮮による外国人拉致、特に日本人の男女の拉致の残虐性を指摘する発言が出た。
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