2015年2月26日10時27分
●地下水放出、交渉に影響
福島第一原発で原子炉建屋近くの水に含まれる放射性物質濃度が雨のたびに高まり、港湾外に流れ出ていると知りながら、東京電力が10カ月間も公表してこなかった問題。地元漁業者は25日、東電の「背信行為」に怒りをあらわにした。両者の信頼関係が損なわれたことは、汚染水対策の受け入れをめぐる交渉に影を落としそうだ。
「裏切られた感じだ」
25日午前。いわき市内であった県漁業協同組合連合会の組合長会議に駆けつけた矢吹正一・いわき市漁協組合長の目は血走っていた。前夜初めてデータ非公表の問題を知り、怒りで一睡も出来なかったという。
25日は本来、第一原発構内でくみ上げた放射性物質を含む水を浄化して海に流す「サブドレン計画」について話し合う予定だった。だが会議は、2号機の原子炉建屋そばの「K排水路」を汚染水が流れていた事実と、「トラブル隠し」とも取られかねない東電の対応を巡って紛糾した。
新妻常正・福島復興本社副代表ら東電幹部との質疑で、相馬双葉漁協の佐藤弘行組合長は「汚染水対策を行う上で一番重要な信頼関係が崩れた」。市漁協の江川章・久之浜支所長も「(東電と漁業者が)ざっくばらんに話さない限り、関係は築けない」と切り捨てた。
県漁連の野崎哲会長は新妻氏に対し、一連の経緯を検証して説明するよう要求。会議後、記者団に「(経緯について)各漁協に理解をいただく作業が必要だ。(それまでサブドレン計画の)容認はできない」との考えを明かした。
この日は、県幹部の会議でも東電への批判が続出した。県議会会派からも「最前線で取り組むべき東電が復興の足かせになっていることは断じて許されない」(自民)、「情報を隠し続け、流出を防ぐ措置を講じなかったことは県民を愚弄(ぐ・ろう)するもの」(共産)と抗議の申し入れが相次いだ。
復興本社の石崎芳行代表は同日夕の記者会見で、自らが詳細な事実関係を把握したのは24日だと説明。それまでK排水路の清掃しか公表してこなかったことを「情報公開のあり方に不備があった。改善したい」と陳謝し、「どんなデータでも分かりやすく示すのが我々の責任だ」と話した。
●「漁民甘く見るな」怒りの声 東電重く受け止めよ
福島第一原発構内の汚染水をめぐる東京電力の対応は、「廃炉」に向けてともに歩もうとする漁業者の信頼を踏みにじった。
県内の約1500人の沿岸漁業者は、原発事故の影響で本格的な漁を自粛中だ。「加害者」である東電への不信感は今もくすぶる。国や東電が言うようにサブドレン計画などの汚染水が厳しい基準で運用されるとしても、「原発の水は海に流さないでほしい」のが全員の本音だ。
それでも漁協幹部の多くは、「福島の漁業再興には、信用低下の原因である汚染水漏れの防止と廃炉が欠かせない」とする東電に一定の理解を示してきた。だからこそ、組合員との板挟みになることがあっても「考えることをやめないで」と組合員の意見集約に努めてきたのだ。
その努力を東電は裏切った。「全ての情報を出す」はずだった東電との信頼回復には時間がかかる。その分、汚染水対策は遅れる。「漁民を甘く見るな」という漁協幹部の声を、東電は重く受け止めてほしい
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