視覚障害者の歩行に欠かせぬ白杖(はくじょう)を「凶器その他危険物」扱いする。傍聴中の白杖の携帯を禁じる愛知県議会の対応は、当事者にとって、身体の自由を奪われるに等しい人権侵害ではないか。
白杖の扱いに疑問の声が上がったのは、昨年の県議会十二月定例会。「視覚障害者の社会参加」などを取り上げる一般質問を聞くため、白杖を使う十三人が本会議の傍聴に訪れた際のことである。
議場の係員から、着席後は白杖を預けるか、折り畳み式であるならばかばんにしまうように指示された、というのである。
一般向けの本会議の傍聴案内には「酒気を帯びている方」などと並んで「凶器その他危険物を持っている方」は、傍聴席に入れないと明記されている。
議会事務局は、視覚障害者の白杖も足が不自由な人が持つ杖(つえ)も、その「凶器その他危険物」に相当するため、着席後には預かることにしてきた、と説明する。
障害者本人の目的外使用は考えにくいとしても、「第三者が議場に投げ入れる可能性がある」というのである。
もちろん、愛知県議会は、障害者の傍聴を支援する取り組みを重ねてきている。補聴器を補助する放送設備である磁気誘導ループシステムを設置し、五日前までに申し込めば手話通訳も付く。
にもかかわらず、当事者が「自分の身体の一部」と頼る白杖が、なぜ、自由に使えないのだろう。
白杖の扱いをめぐる同じようなトラブルは昨年十一月、鹿児島県議会でも起きている。
議会事務局によると、傍聴規則に基づき、傍聴席に着いた全盲男性から白杖を預かろうとしたが、周囲の傍聴者から抗議の声が上がったため見合わせたという。
他の自治体の議会では、当然に必要なものとして白杖の携帯を制限していないところが多い。あるいは、杖を制限していた旧来の規則や運用を見直している。
不測の事態も想定する必要はあるが、愛知県や鹿児島県の議会は旧来の規則を杓子(しゃくし)定規に運用し、障害者への配慮を後回しにしていたと言わざるを得ない。
来年、障害者差別解消法が施行される。国や自治体には障害者への配慮が義務付けられる。配慮を欠けば、差別と見なされる。
身体の自由を妨げるに等しい白杖の制限は、無理解というだけでは済まされないだろう。
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