福島汚染水流出:重要な廃炉工程、停滞は確実

毎日新聞 2015年02月25日 21時26分

 今回、汚染された雨水が外洋に流出した東京電力福島第1原発の排水路では昨年1月にも放射性物質の放出限度超えが見つかり、原子力規制委員会が対策を指示していた。しかし東電はこの間、排水路の付け替えなどの対策を取らず、放射性物質濃度の情報も公開していなかった。規制委の田中俊一委員長は25日の定例記者会見で「環境に影響するようなことがあれば速やかに発表されるべきだ」と批判した。

 今回の公表遅れで、原子炉建屋周辺の井戸(サブドレン)から地下水をくみ上げて浄化し海へ放出する計画が、実施を目前にして窮地に追い込まれた。当面の廃炉工程の中でも重要な汚染水低減が停滞するのは確実だ。

 原発の地下には1日約350トンの地下水が流入して溶けた燃料に触れ汚染水になっているが、サブドレンを使うと地下水を最大約200トン減らせる。東電は昨年8月に地元漁協などに計画を説明して試験的にくみ上げを開始。今年1月には規制委が海洋放出の計画を認可し、残るは地元漁協の同意だけだった。

 東電は別の汚染水対策として、1〜4号機の周囲の地下に氷の壁を造り、地下水の流入を食い止める凍土遮水壁も計画する。しかし世界初の工事で難航も予想される。サブドレンに比べて地下水の管理が難しく、建屋からさらに汚染水が漏れ出す危険性もあり、実現性を危ぶむ声もある。【酒造唯】

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