IT業界のイメージが悪化し、就職希望者が減少
一昔前まで、時代の最先端の職種として多くの理系学生の憧れでもあったIT業界。しかし、ここ数年、IT業界への就職希望者が減少し、新卒採用で苦戦を強いられる企業が増えています。その原因の一つとして「業界イメージの悪化」があるようです。
深夜まで続く残業、会社への泊まり込みも日常茶飯事、さらに不当に安い賃金など、悪名高き「ブラック企業」と聞いて連想する業種の一つに、IT業界が挙げられます。
元請けと下請けの関係により悪循環に陥る
ではなぜ、ブラック化するIT企業が多いのでしょうか。その理由の一つに、大手の元請けが下請け企業を支配し、下請けに仕事を丸投げすることで、末端の作業員は単なる作業要員として扱われるといったIT業界の産業構造があります。構造が似た建築土木業界と重ね合わせ、「デジタル土方」などと揶揄されたりもします。
このITカースト制度の末端になればなるほど、納期も厳しくなり、報酬も安くなります。厳しい納期に間に合わせるためには、深夜まで残業せざるを得なくなり、また、下請けの企業自体も従業員の残業時間に見合った残業代を支払う余裕がないため、低賃金で働かせたり、サービス残業を強要したりといった悪循環に陥ります。
IT技術者の人材不足が深刻化
IT業界はもはや成長産業ではなくなったと言われることもありますが、スマートフォンの普及に伴い、スマホ用のアプリ市場などは今も急速な成長を続けています。一方、上記で述べたような業界イメージの悪化により、IT技術者の人材不足が深刻化しており、膨張するアプリ市場に対し、人材確保が追いついていません。その結果として、今いる人材に仕事が集中し、さらなる長時間労働を引き起こしているようです。
この人材不足についてはさらに、マイナンバー制度の導入に伴うシステム開発の発注により、システムエンジニアが極端に不足する「2015年問題」なども懸念されています。さらに、「2015年問題」後は、その反動でIT受託の仕事が急減するとも言われています。
悪癖の連鎖を断ち切る覚悟が求められる
この2015年の特需で、現在のような法令を無視した働かせ方を続けるIT企業が、大量の若者に低賃金、長時間労働を強いることで利益を稼ぎ、それらが幅を利かせるようになったらどうなるでしょう。
IT業界のイメージはさらに低下し、優秀なIT技術者の業界離れがさらに進むでしょう。そうなれば、日本のIT業界の質は低下し、現在「第4次産業革命」として世界中で注目されているIoT(Internet of Things)の分野においても、世界の中で遅れを取ることが考えられます。大きな問題に直面している今だからこそ、悪癖の連鎖を断ち切る覚悟が、多くのIT企業に求められているのではないでしょうか。
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