18世紀の黒魔術書 "グラン・グリモワール"
18世紀イタリアで作られた「グラン・グリモワール(日本語名:大奥義書)」は変わった本です。
多くのグリモワール(魔術書、魔導書)は悪魔を召喚する方法のみが書かれていますが、この本は悪魔を召喚し、大金を稼ぐ方法が事細かに書かれた「ハウツー本」だからです。
グラン・グリモワールによると、悪魔の宰相ルキフゲ・ロフォカレは富と財宝を支配しており、うまく交渉するとリキフゲから大金をせしめることができるのだそう。
いろいろ突っ込みどころは多いですけど、人間の欲望の粋のようなテーマなので、準備するものや悪魔との交渉の仕方まで抜粋してみます。
その1. 準備をしよう
1-1. 断固たる決意を固めよう
悪魔を召喚するのは並大抵の気持ちではできません。
「絶対にオレは悪魔を召喚してやるのだ」
「絶対に負けない、折れない、やり抜いてみせる」
いくら止める人がいても、注意を促す人がいても、全く聞き入れないだけの確固たる意志を持ちましょう。
1-2. 身を清めよう
悪魔の召喚を行う前の1週間は、身を清める。性交を断つ。
食事は1日に2回。主への感謝を忘れずに。
1-3. 必要なものを揃えよう
召喚に必要なものは以下の通り。
- ブラッドストーン
- 樟脳
- 処女が作った2本の新しいロウソク
- 新品の火桶
- ブランデー
- 石炭
- 金貨を包んだ紙
- 子山羊を殺してはぎ取った皮で作ったひも
- 子どもの死体を収めた棺から抜き取った4本の釘
- 一度も果実がなったことのないハシバミの木の枝を、太陽が地平線から昇る瞬間に新品の小刀で19インチ半に切り取って作った魔法杖
…なんかこの時点で無理ゲーな気もしますが我々は先に進まねばならぬ。
1-4. 廃墟を見つけよう
召喚は廃墟や廃城のような、人気のいない静かで寂しい場所が必要。
あらかじめ探しておきましょう。
その2. 召喚してみよう
2-1. 魔法円を描く
このような魔法円を描きましょう。
火桶に石炭を入れ、ブランデー、樟脳をかけて点火してください。
2-2. 悪魔を呼び出そう
ハシバミの枝で作った魔法杖、呪文と要求を書き込んだ紙を持って立つ。
もし助手がいる場合、助手は一切喋ってはいけない。
まず主に感謝の祈りを捧げ、続いて悪魔を呼び出すことを悪魔皇帝ルシファーに祈願する。
「偉大なるルシファー皇帝よ、主の恩名によりて命ずる。悪魔大臣ルキフゲを派遣すべし」
これで現れたらいいが、そうでない場合が多い。
そんな時は"ソロモン王の鍵の大呪文" を唱えよう。
「霊よ!われは偉大なる力の以下の名においてお前に命ずる。速やかに現れよ。アドナイの名において、エロイム・アリエル・ジョホヴァム・アクラ・タグラ・マトン・オアリオス・アルモ・アジン・アリオス・メムブロト・ヴァリオス・ピトナ・マジョドス・サルフェ・ガボツ・サラマンドレ・タボツ・ギングア・ジャンナ・エテゥツナムス・ザリアトナトミクスの名において」
これを現れるまで最初から繰り返す。これを唱えられたら、悪魔は出てこざるを得なくなる。
ちなみに召喚されるルキフゲ・ロフォカレはこんな姿をしている。
その3. 悪魔と交渉しよう
3-1. 先手必勝!ルキフゲを威嚇しよう
ルキフゲが現れたらまずは舐められないように威嚇しておこう。
「要求に応えなければ呪文によって、貴様は永久に責めさいなむ」
するとルキフゲは
「では要求は何か」
と聞いてくる。
3-2. 悪魔に要望を言おう
「私が望むのは、あなたができるだけ速やかに私に富をくださるという契約を結ぶことです」
するとルキフゲは悪魔らしくこう言ってくる。
「20年後にお前の魂と肉体を私に引き渡すというのでなければ、そういった契約はできない」
3-3. 悪魔を恐喝しよう
そこで絶対に首を縦に振ってはいけない。こう強い口調で言いくるめよう。
「命令に従わなければ、お前とお前の仲間を永遠に責めさいなむぞ」
そうして魔法杖を振りかざして"ソロモン王の鍵の大呪文"を繰り返そう。
すると、しぶしぶルキフゲは宝物のある場所へと案内してくれる。
3-4. 宝物を受け取りにいこう
術者だけが魔法陣の「左上のルート(縦の長方形)」から外に出てルキフゲに着いていく。
途中ルキフゲは猛犬のように見えるが、恐れずに魔法杖を振りかざそう。
宝物の場所に来たら、可能な限りの宝物を両手に抱え、その場に契約書を置いて魔法陣の元まで帰ろう。
3-5. 悪魔にお帰り願おう
魔法陣の中に戻ったらこう言ってルキフゲに別れのあいさつを言ってお帰り願おう。
「偉大なルキフゲよ、私は満足です。もうあなたとはお別れです。好きな所に立ち去ってください」
まとめ
ヤクザまがいの恐喝ですね。
無理矢理呼び出された挙げ句、カネを搾り取られるルキフゲがかわいそうだよ。
しかしこれだけでカネが手に入るならばめちゃくちゃ簡単な方法だし、 実際にやった人も数多くいるのでしょうね。
"ソロモンの鍵の呪文"を大真面目にそらんじる大人の姿はさぞ滑稽だろうなあ。
参考文献:図説 悪魔学 草野巧 新紀元社