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あれから25年。渋谷系とは、フリッパーズ・ギターとは何だったのか

2015年2月24日 10時50分

ライター情報:大山くまお

「月刊MdN 2015年 3月号」/エムディエヌコーポレーション

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デザインとグラフィックの総合誌『MdN』の3月号で「渋谷系ビジュアル・レトロスペクティブ」という特集が組まれている。サブタイトルが「フリッパーズ・ギター『CAMELA TALK』から25年」。に、にじゅうごねんも経ってしまったのね……。

一応、渋谷系という言葉について説明しておくと、90年代初頭、渋谷宇田川町界隈にあった中古レコードショップや、同じく渋谷に大型店舗を構えていた外資系レコードショップから育まれた「恐ろしく高い音楽的リテラシーを前提としたムーブメント」(本特集まえがきより)。代表的なアーティストとして、ピチカート・ファイヴ、オリジナル・ラヴ、コーネリアスなどがいる。その嚆矢だったのが、小山田圭吾と小沢健二が結成したフリッパーズ・ギターだ。

ちなみに、渋谷系という言葉の命名者と噂されていたHMV渋谷のマーチャンダイザー・太田浩は当時、「ベレー帽をかぶったおしゃれな女の子が洋服を買うような感じで楽しめる音」と説明していたという(若杉実『渋谷系』シンコーミュージック)。うん、こっちのほうがずっとわかりやすい。

渋谷系のなんだかおしゃれなサウンドをパッケージしていたのが、これまたおしゃれなCDジャケットデザインだった。その概要をまとめようとしてのるが本特集ということになる。渋谷系という言葉が生まれたのは1993年のことだが、ここでは1990年にリリースされたフリッパーズのセカンドアルバム『カメラ・トーク』のジャケットに「渋谷系ビジュアル」のルーツを求めており、カラーグラビアではジャケットデザインの変遷や、当時の色校、パリで撮影されたアーティスト写真の未使用カットなどが掲載されている。

ほかにも、ピチカート・ファイヴの代名詞ともなった特殊仕様パッケージの変遷とリーダー・小西康陽のエッセイ、コーネリアスのアートワークについての解説、小山田が率いたトラットリア・レーベルのジャケット群に、小沢健二やスチャダラパーのPVのディレクター、タケイ・グッドマンへのインタビューなどがラインナップされている。

「渋谷系ビジュアル」の軸となる人物が、アートディレクターの信藤三雄だ。当時、渋谷系の音楽に触れていた人なら、誰もが知っている名前だと思う。なにせ、件の『カメラ・トーク』をはじめとするフリッパーズのアルバムすべて(3枚のみだけど)をはじめとして、ピチカート・ファイヴもオリジナル・ラヴも、コーネリアスも、すべてこの人の手によるデザインだったからだ。

ライター情報

大山くまお

1972年生まれ。フリーライター・編集。著書に、『名言力 人生を変えるためのすごい言葉』(ソフトバンク新書)、『平成の名言200 勇気がもらえるあの人の言葉』(宝島SUGOI文庫)、共著に『アニメーション監督 出崎統の世界』、『バンド臨終図巻』(いずれも河出書房新社)など。『スター☆ドラフト会議』に出演していた名言ハンターとは僕のことです。

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