イラクやシリアなどで「イスラム国」と自称する組織の呼び方について、朝日新聞は2月24日付朝刊から、本文で2度目から使うときは「イスラム国」ではなく「ＩＳ」と表記する運用を始めた。見出しではカッコつきの「イスラム国」を用い、本文で最初に呼ぶ場合も「過激派組織『イスラム国』（ＩＳ＝Islamic State）」と表記しているが、「イスラム国」と連呼するのをなるべく避けるためとみられる。同様の表記は、中日新聞（東京新聞）も今月20日付朝刊から始めた（既報あり＝【GoHooトピックス】NHK ｢イスラム国｣の呼称を｢IS＝イスラミックステート｣に変更）。

毎日新聞は1月28日から本文の再出時に「ＩＳ」表記を始めており、見出しで「ＩＳ」を用いる例も増えている。2月6日開催した紙面審査委員会では「イスラム国」表記問題を議論。先日ニュースサイト上で公開された議事録によれば、1月28日に「ＩＳ」の使用を始めたところ、読者から問い合わせがいくつかあったため、29日付朝刊より本文の初出では「イスラム過激派組織「イスラム国」（ＩＳ＝Islamic State）」と記すことにしたという。同紙の外信部長は、日本政府が「ISIL（アイシル）」を使っているのは米政府に倣っているためで、現在はその組織の自称と異なることから疑問視。欧米メディアでは「Islamic State＝ＩＳ」「Islamic State Group」「ＩＳＩＳ」などとバラバラになっていると指摘している（詳しくは＝毎日新聞【紙面審ダイジェスト】「後藤さん殺害」 写真の扱いは？）。

他方、読売新聞、産経新聞、日本経済新聞や、ブロック紙の北海道新聞、西日本新聞は、24日現在、従来どおり「イスラム国」を繰り返し表記している。テレビでは、NHKが2月13日から「ＩＳ」（1回目は「過激派組織ＩＳ＝イスラミックステート」）に切り替えたが、全国の地方波民放テレビ局（NNN、TBS、FNN、ANN）は「イスラム国」を使い続けている。

今回の表記変更について、東京新聞読者応答室は、中日新聞全体で20日付朝刊から統一したとした上で、変更の理由は「より正確性を期すための表記です」とコメント。朝日新聞広報部も、24日付朝刊から変更したことを認め、次のようにコメントしている。

朝日新聞社広報部のコメント
「イスラム国」はこの組織が名乗る名称（Islamic State）の日本語訳で、正式な国家ではなく過激派組織であることを示すため、カギ括弧付きで表記しています。記事の中で「イスラム国」の表現が繰り返されることにより、一般のイスラム教徒と関係があるかのような印象がもたれることをなるべく避けるため、記事の初出のみ過激派組織「イスラム国」（ＩＳ）と表記、2度目以降から「ＩＳ」の略称を用いることにしました。

• （初稿：2015年2月24日 19:35）