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岐阜で230世帯が同じ住所 郵便誤配、救急に遅れも発生

 「岐阜市鷺山1769の2」。この住所に住む人が400人以上いる。市が戦後、河川敷の跡地に一戸建て住宅を整備し分譲した際、住所表記に手を付けなかったからだ。郵便物の誤配だけでなく、救急車の到着遅れという深刻な問題も発生。住民は分かりやすい住所表示を求めるが、市は土地の境界を画定させる作業を優先しており、実現のめどはたっていない。

 「救急車が目的の家を見つけられず、前の道路を4回も行ったり来たりした。慌てて外に出て道案内したんだ」。ここに父親の代から住む吉田一郎さん(67)は苦笑いする。岐阜北郵便局は独自に作った地図を使うが、それでも住民から「誤配で再配達を依頼したら、同じ郵便物がまた届いた」との苦情も。担当者は「迷う必要のない住所にしてもらいたい」と注文する。

 この地番は岐阜市北部にあり、南北60メートル、東西500メートル。1935(昭和10)年ごろまで流れていた川の河川敷だったが、戦後の住宅難解消のため市が47年に国から買い、一戸建ての市営住宅を建てて分譲した。その際に「建設を急ぎすぎて番地変更に手が回らず、広大なままの地番が残ったのでは」(市住宅課)という。

 地元の鷺山自治会連合会によると、ここには230世帯ほどが暮らし、自治会は「若水町」「緑ケ丘」など8つもある。今では地域の3人に1人は65歳以上。10年ほど前に「救急車や消防車がすぐに来ないかもしれない」と不安の声が上がり、市に地番の整備を要望した。

 市では住居表示法に基づいた表示変更を検討する。土地登記の地番とは別に、道路や川などで町、丁目を区切り、建物に番号を振る方法で、住所は「岐阜市鷺山○町△丁目×番◇号」などとなる予定だ。

 ただ、市住宅課の担当者は「現時点では実施は難しい」と話す。市は市有地と面する個人所有地との境界をはっきりさせてから、住居表示を実施する方針のためだ。総務省の担当者は「土地の境界を画定させなくても住居表示は可能」と話すが、岐阜市は「地番と住居表示が大きく食い違うと、所有者に不利益になる」との立場だ。

 しかし所有者と連絡が取れなかったり相続人が見つからなかったりで、作業開始から10年たった今もまだ全体の1割も完了していない。市担当者は「人員に限りがあり、1、2年では終わらないだろう」と話す。

 市は今年に入り住居表示法に基づかない仮の住所を作ることを住民側に提案。全国的には大規模団地などで例があるという。連合会長の乾尚美さん(67)は「仮の住所であっても生活や緊急時に支障のないようにしてほしい」と求めている。

(中日新聞岐阜報道部・安部伸吾)

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