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【インドヨーロッパ(印欧)語族の起源に決着か?】2月13日・ScienceNews:異なった手法で独立に行われた最近の2つの研究結果を合わせると、印欧語族の起源は5,000–6,000年前の黒海・カスピ海北方(現在のウクライナ)とするクルガン仮説(上図)が有力になってきたようだ。これまで有力だった8000–9500年前のアナトリア(現在のトルコ)を起源とするアナトリア仮説(下図)より数千年遅れたことになる。
すでに17世紀半ばにはその語彙の類似性から同一起源と信じられていた印欧語族だが、ここ20年あまり、その起源を8000–9500年前のアナトリア(現在のトルコ)とするアナトリア仮説(下図)と、5,000–6,000年前の黒海・カスピ海北方(現在のウクライナ)とするクルガン仮説(冒頭図)の間で論争が繰り広げられて来た。今回異なる方法でアプローチした2つの研究が独立にクルガン仮説を支持する根拠を報告した。
80年代まで学会を席巻していたクルガン仮説だったが、ケンブリッジ大学の考古学者Colin Renfrewが1987年に印欧語族が中東起源で農耕の発展と共に広がったとするアナトリア仮説を提唱した際は、8000年も昔を起源とするには現在の印欧語族は互いに似過ぎていると彼を批判した。しかし多くの考古学者は、これを考古学的に妥当な仮説だと支持した。
続いて2003年、ニュージーランドの進化生物学者Russell GrayとQuentin Atkinsonは、各言語間にどれほど類似した単語があるかを元にそれが偶然の一致なのかどうかを数学的なもっともらしさとして計算し、言語間の系統樹を作った。この報告はアナトリア説を支持していたがその後批判を受け、2012年に新しい方法で再計算したところ、再度アナトリア仮説を支持する結果となった(上図、アナトリア仮説)。
今回の2つの論文の内、米ハーバード大学医学部のDavid ReichとIosif Lazaridisは、5600年前に黒海の北に住んでいたヤムナ文化人とその700年後の中央ヨーロッパで栄えた縄目文土器文化人のDNAを比較解析した結果、縄目文土器文化人の4人に3人の先祖がヤムナ文化人であることを示し、当時黒海から中央ヨーロッパへヒトの大移動があり、それとともに印欧語族が広がったというクルガン仮説を支持した(今月末に出版予定)。ただしこれがアナトリア仮説にある中東からの大移動の後に起こった2次的な移動かどうかは考慮する余地があるという意見もある。
米カリフォルニア大学バークレー校の言語学者Andrew GarrettとWill Changらによるもう一方の論文では、Grayらとほぼ同じアプローチだが各言語を独立にではなく、明らかに同一起源と考えられる言語グループにあらかじめ分け、その中でより正確に共通単語の類似性を解析することで、異なる結果を導いた(プレプリント)。それによると、共通祖先は6000年前となりクルガン仮説を支持した。
今回の2つの根拠はやや間接的な傍証に過ぎない気もするが、果たしてこれで決着がつくのか否か。まだまだ目が離せない。news.sciencemag.org/archaeology/20…
posted at 06:16:38
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