. 本記事では、国土交通省東京国道事務所が設置した「国道6号(水戸街道)自転車レーン」について、その整備実態を現場調査を元に検証します。
(※前置きなどの文章は飛ばし、以降の現地写真から眺めてもらって構いません。)



1. 「国道6号自転車レーン」の概要

 今回検証の「国道6号自転車レーン」とは、平成26年12月24日に整備計画がプレス発表され、平成27年2月17日に供用開始(試行)されたものです。
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国道6号向島~東向島において、自転車通行空間を整備します
自動車の速度が高い道路において、自転車専用通行帯(自転車レーン)等を試行します
国土交通省東京国道事務所・警視庁 平成26年12月24日(htmlpdf)

国道6号向島~東向島において、2月17日(火)、自転車通行空間が完成します
~自動車の速度が高い道路において、自転車専用通行帯(自転車レーン)等を試行します~

国土交通省東京国道事務所・警視庁 平成27年02月13日(htmlpdf)

 同日に公表され、本ブログでも検証済みの「国道246号バス専用レーンへの「自転車ナビライン」設置」が主体的に報じられたこともあり、公表当初はこちらほど注目度は高くなかった。
 しかし都内幹線道路での整備ということで、試行開始時には報道もされています。

墨田区の国道6号 自転車専用レーンを設置(TOKYO MX)

 整備概要は以下のように記されています。
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出典: プレス平成26年12月24日(htmlpdf)

 自動車交通量約45,584台/24Hという一ケタ国道の幹線道路で、歩行者は少ないものの自転車はそれなりに多い。
 この環境下で、「自転車の逆走防止」「自転車とバイク・原付の交錯防止」「歩道上での自転車と歩行者の交錯防止」「路上駐車を避ける自転車と自動車の交錯防止」を目的とし、「自転車レーン」と「自転車ナビライン」を整備したもの。

 自転車レーンの整備事例は全国で多数ありますが、本区間の最大の特徴は「60km/hの幹線道路」に設置するものだということ。

 全国基準「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」(htmlpdf)では、50km/hを超える道路では「構造分離の自転車道」を標準形態としている。
 しかし「当該区間ではそれに必要な道路幅員が確保できないため」という理由で、「視覚的な分離である自転車専用通行帯(自転車レーン)等の整備を試行」する、ということです。

 この概要を踏まえた上で、現地調査を行ってきました。



2.自転車レーン整備実態の現地調査


2-0.現場位置図
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出典: プレス平成26年12月24日(htmlpdf)
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Googleマップ(html)

 今回整備区間を、南から北に観察していきます。観察時間は平日の昼頃です。


2-1.「自転車ナビライン」区間
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 位置図から分かるように、東京スカイツリーからほど近い箇所での整備です。
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 整備区間の直前。車道に自転車スペースは無く、歩道も狭く、自転車走路は確保されていません。
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 ここから走路が生じていき、
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 南側区間では「自転車ナビライン」が始まります。
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 「自転車ナビライン」に、警視庁が実施してきた「自転車ナビマーク」を挟む形態。すぐ小交差点に差し掛かり、
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 「札の辻」「千石一丁目」で行われてきた「交差点の自転車ナビライン」が四方に設置されています。
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 「千石一丁目」で行われた「停止線の前出し」はここでは行われず。実施箇所は後に出てきます。

 ここを超えると、早くも「不可避の問題」が目に入ってきました。
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 説明不要の「路上駐停車」問題。

 これについて一括りに「違法駐車」と呼ばれることが多いのですが、実際は短時間の「停車」も多数占めている。荷降ろしやコンビニでの買い物など、ドライバーがすぐ戻れる状態のものも多く、駐車監視員による「確認」措置にも至らない。
 そして本箇所の法規制を伴わない「ナビライン」はもちろん、後述の「自転車レーン」の両者とも、「停車」を禁止する効力は持ちません。

 この「駐停車」は本区間の象徴であり、以下で乱発される「国道6号自転車レーンにおける戦慄の実態」を生みだしているものです

 ここでナビライン区間は一旦飛ばし、次の「自転車レーン」に進みます。



2-2.「自転車レーン」区間
(※一度右側に渡った関係で、多少写真が前後します)
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 ある交差点を超えると、「自転車レーン(自転車専用通行帯)」の設置区間になります。
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 自転車レーン開始区間を右側に渡ったところなので、「自転車レーンここまで」の表示がされている。ここでは停止線の申し訳程度の前出しがされていました。
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 60km/hの幹線道路で、日中でも自動車交通量は多い。狭い歩道の中を従来通り通行する自転車が多いものの、
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 自転車レーン上を走行する自転車が、思っていたより多い。
 細街路から出てきた自転車が誘導されて自転車レーンに流れる様子など、開通数日後の現時点では一定の誘導効果があるようです。

 しかし車道に誘導する効果と、自転車の安全性についてはまったくの別問題。促されるまま車道に出たとしても、待ち受けるのは冒頭説明のこれらの状況。
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 路上駐停車の多発。
 整備前の状況は分からないため、これでも事前より減っているのかもしれない。しかし整備数日後ですらこのような状態。
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 中にはアイマスクを装着して車内睡眠に及んでいる者も。試行実施数日後ですらこの状況であり、「自転車レーン」という名の規制の効果は容易に察される。

 そしてこれらの路上駐停車が引き起こすのが、本区間の整備を象徴する「戦慄の実態」です。
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 走行自動車の至近を通過する、ママチャリによる路上駐停車の回避行動。

 重交通である本区間は、信号待ちを待たない限りは絶えず自動車が通過していくため、回避時はほぼ確実に自動車の並走や後方からの追走を迫られる。
 そして写真では分かりませんが、これら自動車はみな50km/h以上で走行していることを忘れてはならない。その中の回避を余儀なくされるということです。

 あまりの光景が整備区間内で延々と広がり、賂外のこちらが身の毛もよだつ思いで観察していると、ついに恐れていた「ニアミス」が生じてしまった。
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 後方の自動車を確認せず回避行動を起こした自転車に対し、自動車がクラクションを使用。自動車はあまり速度を落とすことも無く、ギリギリで自転車の側方を追い抜いて行きました。

 今回は南から北まで片道観察しただけですが、それでも駐停車はこれだけ観測。概ね100mに一度、つまり15km/hのママチャリであっても約30秒に一度は回避行動を強いられるという凄惨な状況。

 自転車レーン整備による車道走行の安全性の向上、この言葉の意味は現地観察で自ずと見えてくるものです。


2-3.交差点処理

 「路上駐停車」とそれに伴う「回避行動」が、ギリギリとも呼べる本区間整備の象徴となっているのが実態ですが、もう一つ重大な「致命的欠陥」が存在しています。

 国道6号線は北に進み都道明治通りと交差するのですが、今回整備はその手前で終了しています。
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 明治通りとの交差点の手前。自転車レーンが終了してしまい、
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 バス停部にも何の走路表示も無く、
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 交差点手前の直左レーン上にも何の表示も無く、
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 交差点内も一切走路表示なく、自転車は交差点に放り出される。

 ここまで車道で誘導しておきながら、通行者が多いと思われる「国道6号」と「明治通り」の交差点で一切の走路誘導を行わない。法定外のナビラインやナビマーク設置すらも行わない。

 自転車の安全確保への姿勢を疑うものですが、これはまだ「あくまで試行区間であるので、整備の都合上交差点の手前で打ち切った」という逃げが何とか成立しうる。


 しかし以下の実態は、絶対に許されるものではない。
 2-1においてナビライン区間最後を一度飛ばしましたが、ここで当該区間に戻り観察してみます。
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 車道走行を誘導するはずのナビラインが、ある所で急に途切れている?
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 バス停部にも一切表示が存在せず、
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 中規模の交差点に差し掛かるも、ナビラインなどの表示は復活せず。

 これは一体どういうことだ?開通後とはいえペイント作業が終わらなかったのか?
 そこでプレス資料を再確認してみると、きちんと「実態」が記されていました。
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出典: プレス平成26年12月24日(htmlpdf)

 このプレス図において、緑色が「自転車ナビライン」、青色が「自転車レーン」。
 そして図をしっかり読むと、ナビラインと自転車レーンが「本所交差点」「向島交番前」で分断されている。この箇所は当初計画から整備する気が無かったのです。

 ではなぜ、この区間で整備を分断しているのか?それは前述の明治通り交点からも容易に想像がつきましたが、
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 左直レーンの存在です。今回整備区間(前後含む)において、右左折レーンで3車線となっているのはこの分断区間交差点と、明治通り交差点の2箇所。

 そしてその両者とも、一切のマーキング整備が為されていない。
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 この自転車の待機状況を見れば分かるように、左折自動車が存在すると走路が重複する。この状況になる二つの交差点では、整備が行われなかったということです。

 ・・・

どうして交差点処理から逃げた?

最も事故リスクが高く、対策が必要なのは交差点処理では無いのか?
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何故あなたはこんな設計案に決裁印を押したのか?

 東京国道事務所交通対策課長の蓜島洋伸も、警視庁交通部交通規制課の椎名康雄も、検討WGの屋井鉄雄も、事業に関わった点ではみな同じ。
 なぜ貴方等は、最も事故対策を行わなければならない箇所の設計を放棄したのか?



3.繰り返される「自転車の安全軽視」の杜撰な整備


3-1.「札の辻」「千石一丁目」でのナビライン整備実績の存在

 今回整備は試行であり、大交差点はその対象としなかった等という言い訳は通じない。東京国道事務所・警視庁・屋井鉄雄自身が「交差点自転車ナビライン」設置を行ってきている。
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出典:以下記事より

 この3者が行った大交差点における整備は、「自転車の歩道走行の促進」、そして「事故減少」にも効果があったと主張している。

 実態としては以下の記事で検証したように、下り側は歩道通行のほうが圧倒的に多く、事故件数も変わっていないという不都合な情報を隠蔽したものですが、この3者が「効果あり」と主張している事実に変わりはない。
千石一丁目の現地調査:「自転車ナビライン」効果検証の実態(ver.あしプラ)
千石一丁目「自転車ナビライン」整備後における発生事故件数の検証

 同じ都内で効果があったものを何故行わないのか?
 まさか「ここで行うと危険だから」などとは言わせない。安全性に確証が持てたのではないのか?



3-2.宇都宮国道事務所:「国道4号ナビライン」の整備実績の存在

 釈明があるとすれば、上記「札の辻」「千石一丁目」は、交差点前から「自転車レーン」を整備しナビラインに接続させたもの。
 今回国道6号の交差点は左直レーンの影響で自転車走路が確保できず、確かに都内での検証は行われていない。

 しかし同様の形態の検証は、同じ関東地方整備局管内の国道4号で行われている。未検証などという言い訳は通じない。
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※出典:以下記事より

 宇都宮国道事務所によって行われた、一日交通量2万台以上の幹線道路におけるナビライン設置。路面表示から分かるように、交差点内にも設置されたものです。

 これについても「車道走行への誘導」「安全性向上」の観点両面において、以下の記事で検証したように非常に疑わしいものですが、国道事務所がその効果を認めているという事実に変わりはない。
自転車レーン・自転車走行空間の整備効果検証(歩道通行から車道通行への転換効果)
古倉宗治「実践する自転車まちづくり:役立つ具体策」の検証(2)「千石一丁目ナビライン」と「宇都宮」への言及

 重交通の幹線道路における、交差点ナビラインの安全性に確証が持てたと主張するなら、なぜ今回の国道6号の交差点処理で実施しなかった?何のための知見の蓄積だ?


 内容の正当性に疑義を抱える行為に散々及んでおきながら、いざ整備の段になると及び腰になり目を背ける。不正だろうが何だろうが、自らの主張を押し通す意地すらも無いのか?



3-3.国道事務所が繰り返す「交差点設計の放棄」

 そして今回国道6号で行われた「交差点設計の放棄」は、先日これもまた国道事務所によって行われたばかりの愚行を繰り返すもの。

 岡山国道事務所が行ったのも、国道2号(山陽道)という重交通幹線道路に自転車レーンを設置する事業。しかしプレス資料の時点で、交差点手前で自転車を歩道に上げるという「設計放棄」を明記している。

 今回の国道6号では、プレス資料に通行方法は一切記されておらず、現地の道路上に誘導の看板が設置されているわけでもない。
 都内で散々東京都建設局による「自転車歩行者道の整備」がやり玉に挙げられている中で、歩道通行の誘導が出来るわけがない。結果として交差点での通行方法をどこにも記載していない。

 自転車レーンを打ち切られた自転車は、交差点のどこを走行すればいいのか?全ての自転車利用者が道路交通法における自転車の交通ルールを、車両通行帯の概念から何から分かっていると思うのか?
 交差点手前での分断レーンの先における通行方法は、管理人が道路利用者から直接尋ねられた経験があるもの。整備を放棄したばかりか、自転車利用者の適切な誘導すら放棄するものになっています。



3-4.軽視され続ける「自転車の安全確保」、そして「自転車利用推進」」

 そもそも、今回国道6号の60km/h規制はおろか、50km/hあるいは交通量の多い40km/h路線で、自転車レーンの整備を標準としている国はもはや日本以外に存在しません。

※参考:自転車走行空間の整備形態の選定基準(全3回シリーズ)
第1回:「自転車走行空間の整備形態」を選定する国外基準:東京の幹線道路に自転車レーンを整備してはならない
第2回:「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」の欠陥(1)-1:自転車レーンの危険性を軽視する歪んだ研究
第3回:「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」の欠陥(1)-2:整備形態選定の根拠を隠蔽する国土交通省

 車道上の自転車レーンは、これまで世界各国各都市が取り組んできたものの、自転車の安全確保と利用促進に相応しいものではなかった。
 そのため「構造分離の自転車専用走行スペース」の確保が各都市の主要施策の一つとなっている。

 つまり、日本における自転車レーン整備は、世界から見て「ガラパゴス施策」でしかないということです。


 特にロンドンは、オリンピックに向けた拙速な自転車レーン整備を進めたものの、死亡事故多発という最悪の結果により方針転換の促進を余儀なくされた。
 日本及び東京がその後追いをする必要はなく、世界で蓄積された知見から学習しなければならない。


 にも関わらず、日本は「自転車の車道走行」を主張する一部集団の狂気的な活動もあり、日本の行政もそれに引きずられる形で、世界的時代遅れの「自転車レーン整備」が標準化されているという危機的な状況です。

 情報隠蔽・データ操作・データ捏造、自転車論者及び行政が繰り返したあらゆる不正行為に根拠づけされ、日本全てが同じ方向を向いてしまっている。

・・・

 本当に自転車の安全確保を目指した事業なのか?それでも整備を続けるのか?何が生じ得るか想像もしないのか?

 ならばもう、言い放つしかありません。

自転車の死亡事故が多発するまで分からないというのなら、自転車レーンを引き続ければいい。

・・

 今回各所に用いた過去記事リンクを含め、主要記事まとめに主要情報をまとめておりますので、そちらも合わせてご覧ください。

 今回は以上です。