安保関連法案:「周辺」の概念削除…与党協議、歯止め焦点
毎日新聞 2015年02月20日 23時35分(最終更新 02月21日 07時56分)
政府は20日、今国会に提出する安全保障関連法案の与党協議会に、米軍への後方支援などで自衛隊を海外に派遣する3法案について大枠の考え方を示した。日本周辺の有事を想定した周辺事態法は名称を変更して「周辺」の概念を削除するとともに、支援対象を米軍以外の他国軍にも広げる内容。公明党内には「周辺概念が地理的な歯止めになってきた」との認識も強く、日本の防衛と極東の平和を目的とした日米安全保障条約の枠内に活動をとどめる形で同法の骨格を維持するよう要求。ほかの2法案も含め、歯止めの掛け方が与党協議の焦点になる。
昨年7月の閣議決定では、集団的自衛権の限定行使とは別に、武力行使を前提としない自衛隊の海外派遣についても法整備を進めることをうたっている。政府の考え方では、(1)日本の平和と安全を確保するための周辺事態法改正(2)国際的な平和と安定のための恒久法制定(3)国連決議に基づいて紛争後の復興支援などを行う国連平和維持活動(PKO)協力法改正−−の3法案の提出を目指す。
周辺事態法は、日米両政府が1997年に日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定で合意したことを受け、99年に制定された。朝鮮半島有事や台湾海峡有事などを想定。「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と規定し、日本への武力攻撃に至っていない状況でも自衛隊が米軍に輸送や補給などの後方支援を行う根拠法となっている。
周辺事態について政府は「事態の性質に着目したもので、地理的概念ではない」としてきたが、一方で「中東やインド洋で起こることは想定されない」などとも説明。これまで周辺事態と認定して自衛隊が派遣された事例はなく、政府・自民党内には事実上の地理的制約になっているとの不満があった。今回の安保法制整備に当たって政府は当初、周辺事態法を恒久法に吸収することも検討。歯止めを残したい公明党に配慮し存続する方向となったが、政府側は周辺概念をなくすことにこだわった。